1 診   療   科

第二外科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 当科の特色は循環器、 呼吸器、 消化器、 内分泌、 一般外科疾患患者の外科治療を同一の病棟で行っている点があげられる。 そして、 このことは専門家以外からの広範な意見と検討がえられるという利点がある。 近年の高齢化に伴って、 ハイリスクな心疾患や呼吸器疾患を合併した患者の手術が増加している。 これらの診療に当たっては常に患者の全身を管理できる体制が重要となる。 当科は、 どのような患者に対しても24時間、 全身管理が可能な体制で診療できる。 この体制は all round な外科医師養成という点からも優れていると思われる。 また、 循環器および呼吸器外科における緊急手術依頼の頻度が高く、 宮崎県の地域医療の中核的位置を占めている。
 現在の医療の発達の恩恵を患者が受けるという意味から、 循環器疾患、 呼吸器疾患、 消化器疾患などに低侵襲手術をいち早く積極的に取り入れていることも特色のひとつである。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 外来日は原則として月曜、 水曜、 金曜であるが、 他の曜日でも患者の都合で受診された場合は必ず診察を行っている。 初診の患者については診察者 (鬼塚、 松崎、 中村、 関屋) が、 それぞれ外科全般について診療を行い、 再診の患者については月曜日 (消化器、 内分泌、 一般外科)、 水曜日 (心臓血管外科)、 金曜日 (呼吸器、 食道、 乳腺外科) と各診療グループの専門外来でグループ診療を行ってきた。 過去5年間の外来患者の延人数、 1日平均人数は以下に示す如くであるが、 僅かではあるが増加傾向にある。
年度
平成7年度
平成8年度
平成9年度
平成10年度
平成11年度
 延人数 (人) 
7,238
6,735
6,963
7,241
7,730
 1日平均人数 (人) 
29.4
27.5
28.4
29.6
31.7
(2) 入院患者診療
 手術を必要とする可能性のある循環器、 呼吸器、 消化器、 内分泌、 一般外科疾患の患者に手術の必要性、 妥当性、 全身状態を評価し、 術前管理を行い、 安全で質の高い QOL の向上をめざした手術を行っている。 術前検査としては外科全般にわたる検査が可能であり、 心エコー検査、 心臓カテーテル検査、 気管支鏡検査、 腹部エコー検査、 消化管の内視鏡検査を常に行える体制である。 術後は循環器や呼吸器患者は集中治療室において1〜3日の後に病棟で、 消化器や一般外科は直接、 準 ICU や病棟にて術後の診療を行っている。 過去5年間の入院患者の延人数、 1日平均人数を示す。
年度
平成7年度
平成8年度
平成9年度
平成10年度
平成11年度
 延人数 (人) 
17,671
16,930
16,880
16,156
16,470
 1日平均人数 (人) 
48.3
46.4
46.0
44.3
45.0
 また、 手術症例数は過去5年間で2191例であり、 内訳は心臓血管外科手術828例、 呼吸器および食道、 乳腺外科手術610例、 消化器内分泌および一般外科手術753例であった。
3. 高度医療
 循環器疾患では僧帽弁置換術に対する後尖・弁下組織を温存した機能温存手術および僧帽弁閉鎖不全に対する弁形成術は心機能を良好に改善することが明らかになった。 また、 虚血性心疾患に対するバイパス手術は全例に動脈グラフトを使用し、 開存率は極めて良好であった。 最近、 人工心肺を使用しない拍動下冠動脈バイパス手術や小切開による侵襲の少ない心臓手術および開胸を必要とせず、 かつ人工心肺を用いない新しい治療法としての大動脈瘤に対する血管内治療 (ステント治療) に着手した。 さらに、 感染症防止と輸血の節約をめざした無輸血手術は術前に患者の血液を貯血し、 同種血を使用せずに心臓・大血管手術時に施行されている。 呼吸器疾患では近年開発された胸腔鏡手術を一早く導入し、 大きく開胸することなく小孔を介してモニターテレビを見ながら従来の手術と遜色のない手術を施行している。 この術式は手術侵襲、 呼吸機能および美容の点から患者に対する恩恵が大で、 合併症がなく優れた手術であることが確認された。 一方、 癌性胸膜炎は有効な治療手段がなく予後が極めて不良であるが、 この疾患に対し、 当科で開発した胸腔内温熱療法は有意な延命効果と臨床効果を認めている。 気道腫瘍や肺気腫に対するレーザー治療や気道狭窄、 食道狭窄に対するインターベンション (ステント治療) も積極的に行い、 患者の QOL 改善に寄与している。 消化器・内分泌 (甲状腺) では良性あるいは悪性腫瘍で適応がある症例においては従来の大きな切開を行うことなく、 内視鏡を用いた小切開法による鏡視下 (内視鏡下) 手術を導入している。 この方法は美容的に非常に優れ、 手術成績でも従来の手術と遜色がない。 正確な診断に基づいた胃癌、 大腸癌に対する神経を温存した機能温存手術、 肝臓癌に対するマイクロ波凝固による縮小手術および胆道をふくむ消化管の狭窄に対するステント治療なども積極的に行っている。

4. 地域医療への貢献
 地域医療の向上と福祉に貢献するために地域基幹病院への医師派遣、 各医師会が主催する生涯教育講座あるいは各種の研修会への講師の派遣さらに、 地域医師会に開かれた大学病院での研究会を開催している。 また、 その他の研究会にも積極的に参加している。 地域病院の救急体制の応援、 血液センター、 各種体育大会への医師派遣も行っている。 一方、 高度な技術を要する手術症例の受け入れを積極的に行い、 宮崎県における地域拠点病院として機能している。 現在の医師派遣は県北地区7カ所、 県南地区2カ所、 県央地区6カ所であり、 町立病院 (国保病院) は3カ所である。 各種の研修会への講師派遣は平成7年度10回、 平成8年度10回、 平成9年度19回、 平成10年度5回、 平成11年度7回であった。 研究会は毎年、 宮崎循環器疾患研究会、 血液と血管を考える会、 宮崎胸部疾患検討会、 宮崎気管支内視鏡懇話会、 宮崎県肺癌研究会、 宮崎呼吸器懇話会、 宮崎甲状腺疾患研究会、 宮崎胃と腸懇話会等を開催もしくは参加している。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 循環器疾患ではほぼすべての疾患に手術が可能であり、 手術成績も向上した。 最近、 先進的な手術 (拍動下バイパス術、 低侵襲手術、 ステント、 弁形成術) を開始したが、 十分な症例数の増加にはつながっていない。 大動脈瘤に対するステント治療は低侵襲で21世紀に向けて期待される QOL を考えた術式である。
 呼吸器疾患では肺癌の外科治療を他の診療科および医療機関との協力で積極的に行っている。 独自に開発した胸腔内温熱療法は評価を得ている。 低侵襲の胸腔鏡手術やインターベンションなどの治療法に積極的に取り組んでいる。
 消化器・内分泌疾患においては悪性疾患の進行度を考慮した手術やリスクの高い症例に対する手術にも取り組んできた。 特に鏡視下手術などの縮小手術が増加してきている。 術後合併症をなくすのが今後の課題である。
 全体としては外来患者数、 入院患者数、 手術症例数を増やす努力をしてきた。 即ち県内の地域医療機関とさらに連携をとり、 他の医療施設からの紹介を増やすこと、 外来患者の待ち時間を減らすことなどである。 外来患者数はやや増加傾向にある。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 循環器疾患では先進的な手術 (拍動下バイパス術、 低侵襲手術、 大動脈瘤のステント治療、 弁形成術) の効果を各種の学会、 研究会において発表し、 手術症例を積極的に増加させ、 確実な成績をあげなければならない。
 呼吸器外科領域では、 胸腔鏡手術等の高度医療を肺癌、 良性肺疾患に積極的に進め、 新しい治療法等は地域医療へ普及すべく講演会、 研究会等を介してさらに貢献していきたい。
 消化器・内分泌外科領域では適応を考えたうえで鏡視下手術症例およびハイリスク症例の手術をさらに増加させ、 QOL の改善を目指したステント治療も行っていきたい。
 全体としては外来患者数を増加させるためにはさらに地域医療機関との連携を密にすることや救急患者の受け入れ体制を良くすることなどが必要である。 在院日数を減少させるには術前検査を短期間で行い、 低侵襲手術を増加させ、 術後合併症を可及的に減少させることが必要である。

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