1 診   療   科

第一外科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 第一外科では、 食道、 胃、 小腸、 大腸、 肛門などの管腔臓器や、 肝臓、 胆道、 膵臓を含めた消化器外科、 乳腺、 甲状腺などの内分泌外科、 小児外科、 ヘルニアなどの一般外科の診断と治療を行ってきた。 患者さん一人一人につき綿密にその病態を検討し、 それぞれの病状に合わせた治療を standard method にこまかな修正をして行ってきた。
 肝臓外科の症例が近年増えつつあり、 この2年間は肝切除術が年間40例を超えている。 また、 肝細胞癌に対して、 抗癌剤封入 W/O/W emulsion を用いた動注療法を行い好成績を得ている。
 胆石症の治療法として、 体外衝撃波による結石破砕療法を積極的に行っている。 高い結石の消失率が得られ、 大きな合併症も認めていない。
 患者の側に立った医療を行い、 情報を詳しく説明して、 informed consent もしっかりとっている。 患者および家族からの claim は少なく、 この10年間に訴訟になった例は一例もない。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 外来診療は月曜日から金曜日の毎日で、 原則として新患日は月、 火、 木曜日、 再来日は月、 火、 水、 木、 金曜日としている。 また、 火曜日は消化管透視、 木曜日は内視鏡の検査日に当てている。 年間の初診患者は700名前後、 再診患者は6、000名前後で推移している。 初診患者のうち院外からの紹介患者が全体の約1/3、 院内他科からの紹介患者が約1/3、 紹介なしおよび夜間救急外来部から紹介されてきた患者が約1/3を占めている。 再診日の受診患者数は一日平均25名である。 院外からの紹介患者のほとんどは手術目的で入院する患者が多いが、 院内他科からの紹介患者においては約半数は消化管検査依頼である。
 初診患者の疾患別内訳で多いのは、 悪性疾患では胃癌、 結腸・直腸癌、 肝臓癌そして膵臓癌である。 肝臓癌の抗癌剤封入 W/O/W emulsion による治療適応の検討の依頼が増加しつつある。 また、 胆管炎を伴う腸閉塞性黄疸や消化管出血など緊急入院を要する患者の紹介が多いのも特徴である。 良性疾患では胆石症の紹介患者が最も多い。 また、 肛門疾患患者が胆石症についで多いが、 これらの中には直腸癌を合併している患者も時々みられる。 内視鏡検査は上部消化管が一日平均5から8例、 下部消化管が3例程度あるが、 内視鏡的ポリペクトミー、 胃または大腸の内視鏡的粘膜病変切除術の適応となる患者が多い。
(2) 入院患者診療
 一外科病棟は Intensive Care Unit (ICU) に準じた部屋を nurse station (NS) の隣に5床設置して、 重症患者をみている。 うち1床は個室になっている。 平成11年これらの部屋の改装 (面責の拡張、 monitoring system の拡充、 無影燈の設置など) が行われ、 広く美しい快適な部屋となり、 患者管理がより充実したものとなった。 このほか、 NS にやや近い重症患者個室を1室もっており、 全体で6床の Intensive care ができる装備をしていることになる。 そのほか、 適宜 ICU を利用している。
3. 高度医療
 肝細胞癌に対して、 宮崎県工業試験場との共同研究で開発した抗癌剤封入 W/O/W emulsion を用いた動注療法の臨床応用を進めてきた。 手術不能例を含めた進行肝細胞癌患者における5年生存率は50%に達している。 この産学官の共同プロジェクトに対しては、 通産省および科学技術振興事業団からの援助も得られており、 本治療法確立に対する期待は大きい。
 胆石症の治療法として、 体外衝撃波による結石破砕療法に取り組んでいる。 脂質代謝において胆嚢機能は重要であり、 可能な限り胆嚢を温存すべきであるという認識に基づいており、 これまで約60例に施行し、 石灰化の有無にかかわらず95%の3 mm 以下までの結石破砕率および1年で60%以上の結石消失率という結果が得られている。 重篤な副作用は認めず安全な治療手段であり、 胆石症の一治療法として確立されるべきものと考えている。 この結石破砕療法は胆嚢結石だけでなく、 総胆管結石、 肝内結石、 膵石にも応用されている。

4. 地域医療への貢献
 都農町で腹部超音波検診、 清武町で腹部超音波検診と乳癌検診をそれぞれの30才以上の住民に対して行った。 これらの検診は都農町では昭和58年から、 清武町では昭和61年から毎年行っている。 都農町で約500名、 清武町で超音波検診に約700名、 乳癌検診に約400名が毎年受診している。 必要のある例には精密検査をおこなっている。
 また、 次のような施設に医師派遣を行い地域医療に貢献している。
 県立宮崎病院 (医長2名、 レジデント1名)、 宮崎市郡医師会病院 (医長2名、 スタッフ3名)、 都城市郡医師会病院 (医長1名、 副医長1名、 スタッフ3名)、 鹿児島市立病院 (スタッフ1名)、 鹿児島市医師会病院 (スタッフ1名、 レジデント2名)、 国立療養所宮崎病院 (医長1名、 レジデント1名)、 国立都城病院 (レジデント1名)、 都農町国保病院 (院長1名、 スタッフ1名)、 黒木病院 (スタッフ2名)、 和田病院 (スタッフ2名)、 増田病院 (スタッフ1名)、 南部病院 (スタッフ2名)、 園田病院 (スタッフ1名)、 宮永病院 (スタッフ1名)、 藤元病院 (スタッフ2名)、 野崎東病院 (スタッフ1名)、 竹内病院 (スタッフ1名)、 鶴田病院 (スタッフ1名)、 小玉共立外科 (スタッフ1名)

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 外来患者数はほぼ横ばいである。 今後はもう少し増やすべきではあると考えているが、 地理的要因、 紹介医との関係から難しい面がある。 患者さんの立場で考えれば、 同じ検査、 同じ治療投薬ができるのであれば近くの病院の方が良いであろう。 また、 紹介医の立場から考えると、 当院での治療がすめば特別な事由がないかぎりは患者を自分の所に戻してほしいであろう。 このようなことから、 外来患者数を無理に増やすことは難しいと思われる。
 入院患者診療はほぼ充実した治療が成されていると考えられる。 肝細胞癌に関しては症例数も増加してきており、 また治療成績も向上しつつある。 結石破砕療法については治療成績は良好であるが、 症例数をもう少し増やしたい。 地域医療には十分貢献できていると考えているが、 医局員の数が増えればもっと貢献できる。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 外来では、 診療の効率を改善し待ち時間を少なくするなど遠隔地からの来院が苦にならないような方策が必要と思われる。 外来、 病棟とも大学として特色のある診療を行うことにより患者はおのずと集まってくる。 このことから、 肝臓外科や結石破砕療法は今後さらに押し進めるべきと考える。 結石破砕療法は、 その有用性をもっと多くの人々に知らしめる必要がある。
 地域医療にさらに貢献するには、 当講座 (大学) の魅力をもっと学生に知ってもらい入局者を増やすことが必要と思われる。

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