1 診   療   科

第二内科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 肝疾患、 消化管疾患、 血液疾患、 膠原病、 感染症、 呼吸器疾患を主に診療している。 肝疾患では、 慢性 C 型肝炎を中心とする慢性肝炎に対するインターフェロン療法は5年間で141例を数え、 関連病院も含め慢性肝炎に対する効果や肝癌の予防効果を経過観察している数は465名にのぼる。 原発性肝癌に対しては平成7年度から平成11年度の途中まで経皮的エタノール注入療法 (PEIT) を毎年約200例に施行し良好な治療成績をあげた。 平成10年度末より新たに導入したラジオ波熱焼灼療法 (RFA) は、 約1年で57症例と国内有数の症例数を誇り治療成績も成果があがっている。 肝硬変患者に合併する食道静脈瘤について、 超音波内視鏡を用いて静脈瘤壁の厚さを測定することで出血の危険性の予知を可能にした。 消化管内視鏡検査は平成11年度施行数は上部が583例、 下部149例で、 平成7年度に比べ、 それぞれ50%、 200%伸びている。
 また、 平成8年度より始めた超音波内視鏡検査は平成11年度には133例と増加した。 また内視鏡的静脈瘤治療も年間60から90例実施している。 外来、 入院患者の腹部超音波検査数は平成7年度は1,852例であったが平成11年度は2,190例と18%検査数が伸びている。 炎症性腸疾患では、 平成11年度より厚生省研究班の一員となり、 患者数も増加した。 ペンタサ注腸療法、 白血球除去療法など先進的な治療を行い成果をあげている。 最近増加している逆流性食道炎の診断のため、 24時間食道 pH モニター器機を購入し、 内視鏡的な変化のない胃食道逆流の診断が可能になった。 血液疾患では、 平成7年度より末梢血幹細胞移植 (PBSCT) を開始した。 症例数は平成11年度末で17例となり、 血液悪性腫瘍以外の固形腫瘍にも適応を広げている。 感染症では一般病院では診断のつきにくい、 稀少で難治性の感染症が多い。 また、 結核などの院内感染対策にも力をいれ、 指針の作成に携った。 膠原病では、 診断困難例、 難治例の紹介が増え、 外来で経過観察中の患者も300名にのぼる。 呼吸器疾患では、 気管支鏡検査が平成7年より独自に実施できるようになり、 症例数も年々増加している。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 外来患者数は平成11年度は延べ13,079名で、 平成7年に比べ約20%増加している。 外来患者のうち、 全身性エリテマトーデス、 強皮症、 皮膚筋炎/多発筋炎などの膠原病、 原発性胆汁性肝硬変などの肝臓病、 間質性肺炎、 サルコイドーシスなどの呼吸器疾患、 特発性血小板減少性紫斑病、 再生不良性貧血などの血液疾患、 炎症性腸疾患など、 一般病院では治療の難しい難病は実数で約200名、 延べ数で年間3,000名にのぼり、 第二内科の外来診療の特徴である。 肝疾患では慢性肝炎のインターフェロン療法、 肝癌の RFA 治療依頼の紹介が多い。 血液疾患は関連病院や院内紹介の白血病、 悪性リンパ腫の症例が多く、 外来での化学療法も数多く行っている。 患者に対するサービスとして、 肝臓病、 膠原病を中心に検査結果を郵便で通知することを開始し好評であった。 さらに、 平成11年度からは、 肝臓病を中心に外来中に肝機能検査の結果を知らせることができる体制を整えた。 膠原病のうち、 患者数の多い全身性エリテマトーデスについては、 独自の療養手帳を作成し、 検査結果や治療経過が一目でわかると好評である。
(2) 入院患者診療
 入院患者総数は毎年300から340名で推移している。 内訳は平成7年度では、 肝疾患57%、 血液疾患20%、 膠原病8%、 呼吸器疾患4%、 消化管疾患3%などとなっていたが、 平成11年は肝疾患46%、 血液疾患17%、 膠原病13%、 呼吸器疾患11%、 消化管疾患10%と、 呼吸器、 消化管疾患の割合が増加している。 各疾患のうち、 肝癌、 白血病、 悪性リンパ腫、 肺癌などの悪性疾患、 劇症肝炎、 重症の膠原病、 間質性肺炎など治療が難しい症例が全体の半数近くを占めているのが特徴である。 したがって死亡例も5年間で125例と多く、 うち剖検例は54例、 剖検率は43.2%であった。 病棟主治医に担当疾患を専門とする指導医がつき、 直接助言指導を行うとともに、 各専門グループが週1回、 回診、 カンファレンスを行い、 検査や治療方針を決定するなど、 的確で、 きめ細かな診療を心がけている。
3. 高度医療
 前述した原発性肝癌に対する RFA 療法、 潰瘍性大腸炎に対する白血球除去療法を平成11年より実施している。 RFA 療法は3cm以下の肝癌を1回で治療できるもので導入以来成果をあげており、 RFA 目的での紹介も多く、 日本でも有数の治療実績を誇っている。 また、 1回の治療で済むため入院期間も短縮でき、 病床稼動率や在院日数の短縮にも寄与している。 潰瘍性大腸炎に対する白血球除去療法は副作用が少なく、 治療効果も確実で症例数も増え、 外来でも施行している。

4. 地域医療への貢献
 住民検診:昭和50年代より実施している年2回の県南部地域での一般住民検診を引き続き実施し、 成人病などの早期発見、 住民に対する健康教育に成果をあげている。 また、 平成5年より開始した C 型肝炎ウィルス高浸淫地域における腹部超音波検診は肝癌の早期発見に成果をあげている。
 一般市民、 患者への医学教育:一般市民に対する医学教育の目的で平成11年より肝臓病に関する市民公開講座を保健所などと協力して行っている。 また、 難病相談会に講師として毎年数回医師を派遣している。
 地域医療施設への貢献:地域の中核病院として、 各地の国公立病院、 国民健康保険病院など21施設に常勤医として勤務し、 地域医療に貢献すべく努力している。
 地域医療関係者の教育:地域医療の向上のため、 研修登録医を積極的に受け入れると同時に、 月1回の消化器病カンファレンスを実施している。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 地方でも中央と同じレベルの診療を受けられる体制をつくることを目標に診療レベルの向上をはかった。 肝癌に対する RFA 療法、 慢性肝炎のインターフェロン療法、 炎症性腸疾患の治療、 食道静脈瘤の診断と治療、 末梢血幹細胞移植、 超音波診断技術などは中央にひけをとらないレベルにこの5年間で到達したと考える。 診療レベルの向上とともに、 治療を希望して外来を訪れる患者数は着実に増加してきている。 しかし、 病床数の制限があるため、 入院までの待ち時間が長くなっており、 その対策が急がれる。 一方、 県内各地の中核病院に派遣している当科の医師は毎年増加しており、 地域医療の高度化に対しての貢献度は年々上昇していると考える。 また、 一般市民あるいは患者を対象とした活動も年々充実させており、 この点においても地域保健医療に貢献している。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 大学の診療レベルは確実に向上し、 中央と同じレベルの医療がなされているが、 今後は宮崎近郊以外の地域の中核病院において大学と同じレベルの診療ができる体制をつくる必要がある。 また、 関連病院との協力関係をさらに充実させ、 ある程度病状の落ち着いた患者を、 各地域の病院で引き続き療養させる体制をつくっていきたい。 これは、 大学の病床稼動率の改善にもつながる。 第二内科では悪性疾患が多く、 近年病名を告知するケースが急激に増えている。 しかし、 告知された患者や家族へのサポート体制はほとんど整備されていない。 第二内科も含め、 チャプレンなど患者および家族の精神的なケアをする体制づくりを積極的に進めていく必要があろう。 当科ではその体制づくりのため実際の取り組みを開始するつもりである。 また、 さらなる外来患者数増加のため、 外来待ち時間の短縮や、 外来診療の充実をはかりたい。

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