1 診   療   科

歯科口腔外科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
(1) 口腔癌に対する動注化学療法と放射線治療を組み合わせた neo-adjuvant 療法:術前補助療法としてシスプラチンまたはパラプラチンを中心とした neo-adjuvant 療法を1987年に取り入れて以来、 それまでの術前照射や術前無処置で根治手術を行った症例に比較して、 治癒率を高めることができた。

(2) 唇裂口蓋裂児の出生より成人までの一貫治療:口蓋床を用いた新生児の哺乳補助と顎形態矯正、 口唇形成手術、 口蓋裂手術、 発音指導、 歯列矯正、 顎形態修正手術、 カウンセリングなどの一貫した治療を行ってきた。

(3) 顎変形症の歯科矯正治療と手術:県内の指定歯科矯正医とタイアップして顎変形症患者の顎矯正手術を行っている。 春休みおよび夏休み時期は手術希望者が集中するので、 入院期間の短縮に努めている。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 平成9年までは新規外来患者数は年間ほぼ1,300人余りであまり変動はなかったが、 平成10年以降1,200人前後に減少した。 疾患別では顎関節症、 外傷、 歯性感染症の症例が減少し、 悪性腫瘍と顎変形症は微増した (表1)。 一方、 患者の紹介率は県内の歯科医師や医師の協力を得て、 常時50%以上を保って来た。 更に、 平成11年度以降は60%以上を保つことができた。

表1 年次外来患者病名内訳
病   名 平成7年 平成8年 平成9年 平成10年 平成11年
良性腫瘍
悪性腫瘍
外  傷
炎症・感染症
口腔粘膜疾患
襄 胞
唇裂口蓋裂
その他の先天異常
顎変形症
顎関節症
唾液腺疾患
末梢神経疾患
埋伏歯
その他
36
25
77
161
49
67
20
16
17
208
24
13
203
116
35
29
88
69
57
86
24
12
50
237
27
9
259
127
41
32
94
96
48
80
15
33
39
244
16
25
247
122
34
23
82
92
63
60
12
19
57
159
20
16
213
87
30
31
76
78
47
60
18
9
62
132
12
12
254
115
小  計 1,032 1,109 1,132 937 936
歯・歯周疾患
歯列不正
227
25
258
10
234
16
233
14
246
7
小  計 252 268 250 247 253
総  計 1,284 1,377 1,382 1,184 1,189
(2) 入院患者診療
a. 病床稼働率
 当科の病床定数は10床である。 病床の稼働率は年平均86.2%〜108.3%で、 近年やや低下傾向にある。 過去5年間の月別平均病床稼働率では、 7月 (96%)、 8月 (102.8%)、 11月 (98.5%)、 3月 (102.4%) が集中して高く、 9月 (86.5%) と1月 (86.5%) が低い傾向にあった。

b. 入院患者手術件数の年度別変遷
 手術内容では顎変形症の手術が年を追って増加しているのに対し、 骨折手術はやや減少傾向が見られた。 年間を通じての総手術件数は226〜238件とほとんど年度による差がなかった。

c. 入院患者在院日数
 当科の各年度における患者1人当たりの平均在院日数は12.9〜17.7日で、 それと同じ時期の病院全体が31.6〜36.6日であったのに比べて著しく短かった。 これは当科の患者が比較的軽症なものが多いことにもよるが、 少ない専有病床数で多くの患者の手術希望を充たすために、 早期離床に努めるとともに、 術後に関連病院への転院もかなり行ったためである。
3. 高度医療
  「顎変形症に対する骨延長術」 を申請すべく基礎データおよび臨床データを集積中であるが、 現在は特に行っていない。

4. 地域医療への貢献
(1) 県内各医療施設への歯科医師派遣:県立延岡病院、 県立宮崎病院、 西米良村立病院、 椎葉村立病院、 国立療養所宮崎東病院、 県立こども療育センター、 市民の森病院、 藤元病院、 野崎病院、 川南病院の各歯科口腔外科
(2) 宮崎県8020運動推進協議会
委 員:芝 良祐  実施委員:迫田隅男
(3) 宮崎県歯科医警察協力会
 顧 問:芝 良祐
(4) 宮崎市保健所の 「ひむかの子いきいき子育てライフ教室―こどもの家庭看護教室」 芝 良祐と佐藤耕一が口蓋裂の病気と治療について指導と助言を行った。
(5) 宮崎県歯科医師会による巡回僻地診療に毎年協力して歯科医師を派遣。


【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
(1) 外来:外来患者数は平成10年度以降やや減少傾向を示した。 これは県立宮崎病院がリニューアルされ、 同病院の歯科口腔外科のスタッフも充実されたため、 宮崎市内の患者は交通の便の良い同病院に流れたのではないかと考えられる。 今後、 外来患者を増やすためには、 組織力を必要をする治療に力点を置いたり、 当科独自の治療法の開発が必要となろう。

(2) 入院:病床稼働率はほとんど変動がみられなかったが、 外来患者が減少傾向を示したことから、 稼働率の低下が少し遅れて起こる可能がある。 これを回避し、 さらに稼働率を高めるためには、 1) 現在季節によって稼働率に偏りがあるのをもう少しならすこと、 2) 院内の他科と相談して互いに病床を弾力的に使うことなどにより、 ある程度改善できると考える。 しかし、 外来患者増加が最も重要なことはいうまでもない。 そのためには、 麻酔科や院内各科に協力を依頼して心身障害者の歯科治療にも積極的に取り組むことを考えねばならない。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 種々の顎変形症に対する骨延長術をより安全で確実な方法に改善して完成させ、 高度先進医療として申請できるようにする。 そのことが外来患者増につながり、 病床稼働率向上にも資すると思われる。

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