1 診   療   科

脳神経外科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 外来の年間患者は初診約600〜650人 (月平均約50〜55人)、 再診患者は約3,600人 (月平均約300人)、 合計約4,000〜4,300人 (月平均約350人) であり、 過去5年間の中では大きな変動はない (表)。 大学附属病院では救急疾患が少なく、 脳血管障害のほとんどが慢性期あるいは無症候性のものであり、 頭部外傷の中でも軽症頭部打撲や慢性硬膜下血腫がその多くを占めた。 当科の特徴として脊椎症、 椎間板ヘルニアなどの脊椎・脊髄疾患、 片側顔面痙攣、 三叉神経痛、 てんかんなどの機能的疾患も多い。 頭痛患者の大半も緊張性頭痛や血管性頭痛など頭蓋外の原因のものである。
 入院患者は意識障害患者、 麻痺患者、 病状が急変する可能性のある患者が多く、 重症、 要注意、 要担送患者の占める割合が多いが、 月平均の病床稼働率は毎年ほぼ90%に達している (表)。 年間入院患者数は最近やや減少傾向を示すが、 年間手術数はほぼ170例前後を保っている。 大学病院の特徴として脳腫瘍の摘出手術が手術の大きな割合を占めているが、 一方脳腫瘍の動注化学療法や Radiosurgery にも力をいれており、 入院患者の中でも脳腫瘍が占める割合が多い。 最近ややこの補助療法の患者が減少している。 脳血管障害や頭部外傷などの救急患者は関連救急施設で処理されることが多く、 大学病院では比較的少ないが、 脳ドックで発見された未破裂脳動脈瘤をはじめとする無症候性の症例が増えている。 当科の特徴である脊椎・脊髄疾患や神経血管減圧術を行う機能的疾患 (片側顔面痙攣や三叉神経痛) が第3、 4位を占めている。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 外来日は月曜日と水曜日であるが急患はこの限りでない。 外来医長 (脳神経外科専門医) が予診を担当し、 新患は教授、 助教授、 講師をはじめとするスタッフが対応する。 原則として医員や研修医は外来を担当しない。
(2) 入院患者診療
 眼科との混合病棟で脳神経外科の定床数は25床と少ないが病床稼働率は高い。 病棟看護婦は双方の診療科に対応している。 病棟医長 (脳神経外科専門医) をはじめとするスタッフの指導の下に、 主として医員や研修医が主治医として患者の管理、 検査を行う。 手術の術者は病棟医長と相談の上に科長 (教授) が指名し、 原則として主治医が第一助手となる。 新患紹介、 検査結果、 治療方針、 手術計画、 術後状態、 退院予定などは全て症例カンファレンスに懸け全教室員のチェックを受ける。
3. 高度医療
 LINAC 装置を用いてガンマナイフに匹敵する治療効果を挙げるいわゆるXナイフ療法 (LINAC による定位的放射線療法) は、 我が国においても当教室が他に先駆けて開発に取り組んでおり、 その最初の報告は宮原郷士講師らにより1985年に発表された。 以後放射線科との協力により、 脳動静脈奇形や転移性脳腫瘍、 髄膜腫、 神経鞘腫などを中心として症例を選んで施行している。 この共同研究に対しては平成10年度宮崎日々新聞賞 「科学賞」 が授与された。

4. 地域医療への貢献
 従来より常勤医師を派遣している施設は、 県立宮崎病院 (宮崎市)、 県立日南病院 (日南市)、 都城市郡医師会病院 (都城市)、 西都市・西児湯医師会立西都救急病院 (西都市)、 宮崎社会保険病院 (宮崎市)、 潤和会記念病院 (宮崎市)、 誠和会和田病院 (日向市)、 同心会古賀総合病院 (宮崎市)、 青雲会青雲病院 (鹿児島県姶良町)、 秋津会徳田脳神経外科病院 (鹿児島県鹿屋市) があったが、 平成9年度より新たに三和会池田病院 (小林市) を加え計11施設となった。 しかし教室の人的事情により平成11年9月より徳田脳神経外科への常勤医師派遣を中止した。 これらの他非常勤医師を派遣している施設は、 宮崎温泉病院 (宮崎市)、 同仁会谷口病院 (日南市)、 芳徳会京町共立病院 (えびの市)、 秋津会徳田脳神経外科病院 (鹿児島県鹿屋市) がある。 以上により宮崎県内の全ての医療圏に脳神経外科医を派遣していることになる。
 さらに地域医師会からの研修登録医1名を受け入れている。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 病院の地理的条件や疾患の特殊性もあって当科の外来患者は比較的少なく、 過去5年間もほぼ横這い状態である。 しかし当科の特徴である脳腫瘍、 未破裂脳動脈瘤、 脊髄・脊椎疾患、 機能的疾患に対しては県内外からの紹介が多い。 入院患者に対しては、 病棟看護婦が脳外科と眼科の双方に対応していることや、 手術場の脳外科に割り当てられた手術台数の枠が限られていることもあり、 現在の延べ入院患者数が精一杯であろう。 過去に無理をして増やしたこともあったが病棟内外に軋轢を生じてしまった。 入院患者数が最近減少傾向を示すのは、 遷延性意識障害患者など長期臥床患者が増えて病床を占有し、 在院日数が延びているためかも知れない (表)。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 外来患者を増やす方策として、 現在月曜と水曜に限られている脳神経外科の外来日を増やし、 金曜日にも新患を受け付けることは医師側としては何とか可能と思われる。 教室員が増えれば手術日にでも外来を開くことは可能と思われる。 しかし看護婦は従来でも眼科外来に多く取られており、 新しく増えた脳外科の外来日に対応は困難と思われ、 この面での解決が強く望まれる。 入院患者に関しても、 脳神経外科に割り当てられた病床定数や手術場の手術台枠、 さらに眼科との混合病棟の問題などは、 現在進行中の病院再開発プランの中で解決されるよう期待したい。

表 脳神経外科患者数 (過去5年間年次推移:病院運営審議会資料より抜粋)
  外  来  患  者 入  院  患  者 (定床25)
初 診 再 診 合 計 新入院 退 院 延 数 稼働率 平均在院日数
年間合計患者数
平成7年度
平成8年度
平成9年度
平成10年度
平成11年度

647
656
547
626
605

3,644
3,663
3,518
3,562
3,573

4,291
4,319
4,065
4,188
4,178

233
229
217
194
192

235
231
209
199
176

8,769
8,352
8,118
8,164
8,639
   
月 平 均
平成7年度
平成8年度
平成9年度
平成10年度
平成11年度

54
55
46
52
50

304
305
293
297
298

358
360
339
349
348

19
19
18
16
16

20
19
17
17
15

731
696
677
680
720

95.9
91.6
89.2
89.6
94.4

39.9
36.6
39.8
42.1
49.1

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