1 診   療   科

麻 酔 科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
(1) 手術室の麻酔
 麻酔科のもっとも重要な業務である。 手術部で行われる全手術の75〜80%の麻酔管理を受け持っている。 ほかの病院の60〜70%に比べて、 この比率はきわめて高い。
 全麻酔件数のおよそ55%を全身麻酔で、 残りの45%を局所麻酔または局所麻酔と全身麻酔との併用で行っている。 局所麻酔、 またはこれにオピオイド鎮痛薬を積極的に併用するのは、 術後鎮痛を良好に施行するためである。
 大学病院の多くが、 外科系各科からのローテイト医師に麻酔を指導しながら業務を行っているが、 当科では、 麻酔の安全を維持するため、 ローテイト医師を一切受け入れていない。 麻酔科に籍を置く麻酔指導医、 麻酔科標榜医、 およびこれらを目指す研修医で業務を行っている。 ただし、 平成11年度から、 研修医のローテイトが始まったので、 ローテイト研修医に限り受け入れることとしている。
(2) 痛み外来および入院
 痛みで苦しむ患者に対して、 神経ブロック療法、 薬物療法、 レーザー治療などを行って、 痛みの緩解、 消失を目指している。 入院診療ベッドは6ベッドである。 各種治療法の中で、 難治性疼痛疾患に対する硬膜外脊髄刺激療法は、 これまでの症例数の多さから、 日本の指導的立場にある。 九州地区の拠点病院でもある。
2. 診療体制
(1) 手術室の患者診療
 手術室で麻酔科医が管理した麻酔件数は、 2,300件前後で推移してきたが、 平成11年度は2,503件に増加している (図1)。 保険請求上の麻酔時間の総計も、 9,000時間から、 平成11年度は10,053時間に増加している。
(2) 外来および入院患者診療
 痛み外来の新患診療を月、 水、 金曜日に、 再来診療を火、 木曜日に行っている。 受診患者は年々増え、 5年間でほぼ2倍に増加している (図2)。 疾患別にみると、 躯幹・四肢の疾患がもっとも多く、 次に全身疾患、 頭部・顔面疾患が多い。 入院診療を受ける患者は、 年間40人程度で、 大きな変動はない。
3. 高度医療
 全手術患者の45%に硬膜外麻酔を施行し、 術後痛に対する先制鎮痛効果を利用している。 硬膜外麻酔を用いて手術中の侵害刺激を遮断することによって、 術後早期に回復することを期待している。 また、 患者が術後も痛みから開放されるように、 この硬膜外カテーテルを数日間利用して鎮痛をはかっている。
 難治性の慢性疼痛疾患に対する硬膜外脊髄刺激療法に関しては、 当科は日本トップレベルにある。 本療法は、 現在では保険診療が認められているが、 認められる以前から高度先進医療として実施してきた。 最近では、 完全植込み型脊髄刺激装置の治験にも参加した。 現在はこの装置の保険請求が認められているので、 年間7、 8人の患者に本療法を施行している。

4. 地域医療への貢献
 宮崎県内では、 県立宮崎病院、 県立日南病院、 国立都城病院、 都城市郡医師会病院、 済生会日向病院の各麻酔科へ医師を派遣し、 これらの病院と協力体制が完成している。 当科は県内にとどまらず、 県外にも積極的にネットワークを拡張している。 現在、 県外に3か所の関連病院、 国立函館病院 (北海道)、 市立川西病院 (兵庫県)、 天草中央総合病院 (熊本県) を有する。
 宮崎県医師会ならびに宮崎県歯科医師会から毎年研修登録医を1、 2人受け入れている。 また、 県内に麻酔科医が不足していることから、 当科の診療業務ならびに講座の教育研究業務に支障のない範囲で、 県内主要病院の医師に麻酔の指導を行っている。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 診療科として、 安全な麻酔の提供に取り組んでいるが、 目的は達成されている。 外科系各科からのローテイト医師を受け入れないことに批判はあるが、 安全で確実な麻酔の遂行のためにはやむを得ないと考える。 病院として、 研修医のローテイトを始めたので、 当科もローテイト研修医を引き受けて指導しているが、 指導医が補充されていないため、 麻酔レベル、 医療レベルの低下は防げない。
 麻酔業務に関してみると、 全手術件数に対する麻酔管理件数の比率が高い。 患者ならびに病院管理者には朗報であろうが、 地域医療や今後の手術件数の増加を考えると問題が残る。
 外来および入院業務に関してみると、 外来患者数は順調に増え、 業務が多忙になり、 宣伝を控えるほどである。 現在、 帯状疱疹後神経痛の発症防止や難治性疼痛疾患に対する硬膜外脊髄刺激療法を研究テーマにしているが、 希望する対象疾患患者を有効に集める手段を考えなければならない。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 手術部における麻酔業務も、 痛み外来および入院診療業務も、 順調に増加している。 手術部における麻酔業務、 特に夜間業務が増加すれば、 教員も交代制勤務を考慮しなければ、 安全な医療の提供は困難になる。 一方の外来診療業務が、 この勢いで増えれば、 診療日を増やすなどの対応が必要になるかもしれない。
 このような状況を踏まえて、 今後は、 これらに対応するポジションと人材の確保が問題になる。 ローテイト研修医の配属によって、 麻酔の安全性は低下する。 低下させずに維持、 または向上させるためには、 研修医指導体制の整備が必要である。 現在、 この問題は放置されている。 医療従事者のリスクスネジメントに対する心構えと同時に、 管理者の考え方ならびに指揮指導力が問われるであろう。

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