1 診   療   科

放射線科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 放射線医学は、 単純および造影X線検査、 コンピューター断層撮影から MRI,超音波検査など、 様々な方法を用いた全身に渡る画像診断および悪性腫瘍の放射線治療を専門領域としており、 卒前および卒後教育もかなり広い領域にわたる。 そこで当講座では放射線医学の領域を放射線治療、 放射性同位元素、 神経放射線、 胸部・消化管放射線、 腹部放射線の5グループに分け診療、 教育および研究を行っている。
 放射線治療グループ:放射線治療部門では、 従来の外照射 (直線加速器を用いた放射線治療) を、 年間新規患者532例、 述べ照射回数6995件こなしている。 この他、 本県では当院でしか実施できない密封小線源192Ir を用いた舌癌の組織内照射、 ライナック治療装置を用いて深部頭蓋内病変を一期的に治療する定位放射線照射および、 子宮癌に対する60Co を用いた RALS をそれぞれ10〜50件、 さらに温熱療法を30〜50例行っている。
 放射線同位元素グループ:腫瘍、 脳、 心臓といった領域を中心に、 年間約3000件の核医学検査を行っている。 腫瘍では、 ガリウムに加え、 タリウムや MIBI を用いて悪性度の推定に応用している。 脳では、 脳血流 SPECT の判定に客観的な評価法である SPM を導入し診断に利用している。 心臓では、 心電図同期心筋 SPECT の解析を PC 上で動く pFAST を使用し、 血流と機能の同時診断に応用している。 その他、 脳血管障害、 肺塞栓症、 消化管出血等に対して緊急検査も行っている。 特色としては、 県内では数少ない放射性ヨードを用いた内服治療のできる放射線治療病室を設置し、 年間約25例甲状腺癌の治療を行い、 地域の医療レベルの向上に貢献している。
 胸部・消化管放射線グループ:胸部領域では大学病院全体の肺・縦隔疾患、 乳腺疾患、 四肢関節疾患、 軟部組織腫瘍のCT、 MRI検査を受持っている。
 また特殊検査として、 気管支内視鏡検査CTガイド下肺生検、 肺腫瘍手術前の marker 針留置術、 気管支内視鏡検査用生検鉗子を用いた胸膜生検術を行っている。
 消化器領域では従来からの消化管造影検査および上部・下部消化管内視鏡検査、 超音波内視鏡検査、 拡大内視鏡検査、 内視鏡的粘膜切除術などの内視鏡を用いた診断・治療を主に診療を行い、 他科からの精密検査の依頼も受けている. 特に食道・胃・大腸の癌の早期発見、 精密診断、 内視鏡的治療に力をいれている. 特に食道癌は放射線化学療法により治癒が目指せる成績がでてきておりその普及にも努めている。
腹部放射線グループ:腹部・骨盤部の血管関連の CT・MRI検査および US を担当している。
 血管造影に関しては頭頚部・脳および心臓以外の全ての領域を行っており、 血管造影手技を利用した IVR (Interventional Radiology). 非血管系の IVR として、 消化管 (食道、 胃・十二指腸、 直腸、 結腸)、 気管・気管支、 胆道系に対するステント留置を積極的に行い、 他科の協力のもと、 症例数も徐々に増加しつつある.
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 外来日は新患再来ともに月曜、 水曜および金曜日であるが必要に応じてその他の日でも外来診療に応じている。
外来患者数:平成10年度−初診502再診1,623延2,125名、 平成11年度−初診476再診1,527延2,003名
(2) 入院患者診療
入院患者数:平成10年度247名、 平成11年度235名
(3) 放射線科は放射線治療並びに放射線部における全ての RI 検査、 CT 検査、 MRI 検査、 超音波検査、 血管造影検査および IVR の施行と読影・報告書作製を受持っている。 また、 消化管造影検査も分担している。 これらの詳細については次表のとおりである。
検査・放射線治療件数 (過去5年間推移)
95 96 97 98 99
CT 6,636 7,363 7,483 7,900 8,557
CTA・CTAP 86 240 177 289 333
MRI 2,134 2,180 3,525 3,895 4,660
超音波 1,331 1,267 1,317 1,131 907
消化管造影 267 288 289 240 149
内視鏡 366 406 356 428 402
血管造影頭部 129 120 119 115 88
頭部動注療法・他 57 44 39 37 23
 腹部 482 516 544 542 533
 肝癌Chemoembolization 81 56 51 28 24
 肝癌OST 139 156 153 155 155
 腹部・他 13 26 48 47 58
 核医学検査 3,091 3,296 2,945 2,938 2,697
放射線治療          
 外照射 337 273 485 442 367
 腔内照射 8 4 5 6 10
 組織内照射 3 7 9 6 2
 温熱治療 8 13 25 11 17
3. 高度医療
・ 肝動注療法 (リザーバー留置を含む)
・ 動脈閉塞症の治療:血栓融解術やバルーン PTA のみならず、 アテレクトミー、 ステント留置なども行い、 必要があれば血管内視鏡や血管内超音波で確認する.
・ 大動脈瘤に対するステントグラフト留置 (血管外科と共同して)
・ 静脈系に対する IVR として SVC 閉塞などへのステント留置、 IVC filter 留置など.
・ 消化管 (食道、 胃・十二指腸、 直腸、 結腸)、 気管・気管支、 胆道閉塞に対するステント留置
・ 上部・下部消化管腫瘍に対する、 超音波内視鏡検査、 拡大内視鏡検査、 内視鏡的粘膜切除術などの内視鏡を用いた診断・治療
・ ライナック治療装置を用いた深部頭蓋内腫瘍の定位放射線照射
・ HRCT およびCTガイド下肺生検を用いた微小肺癌の診断

4. 地域医療への貢献
・ 宮崎県健康づくり協会、 宮崎および都城市郡医師会等と共同で、 肺癌や消化管の集団検診を行っている。
・ 宮崎、 日南および延岡の各県立病院、 宮崎、 日南および東の各国立療養所宮崎市郡医師会病院、 宮崎社会保健病院等多数の病院に医師を派遣している。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 放射線医学は近年最も進歩の著しい分野であり、 我々は研究・学会活動等を通じて最先端のテクノロジーを導入し、 臨床に応用することにより地域医療の向上に寄与してきた。 しかし、 これらの最先端のテクノロジーを用いた診療機器はいずれもきわめて高額であり、 予算面の制約などにより簡単には導入できないものも多い。 また、 限られた医師数で外来、 入院診療を行い、 かつ放射線部での、 年々増加しつつある各種検査の施行および読影業務を行っているため、 特に外来患者数の増加に向けてマンパワーを振り向けがたい現状である。
 放射線科の入院患者には末期の悪性腫瘍の患者もある。 これら終末期特有の大きな問題を抱えた患者に対して医療上の問題のみならず精神的問題や社会的問題に踏み込んだ対応が必要と思われるが、 現状では不十分という他はない。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 院内の情報システムを利用し、 診療体系を効率化することにより、 マンパワーの不足を補い、 画像およびレポートのリアルタイムでの院内配信を目指したい。
 また、 地域医療への貢献の一つとして、 遠隔地画像診断システムの構築があるが、 今後は、 医療情報部と連携して県内の特に山間部の診療所などの遠隔地画像診断を手がける必要がある。
放射線入院には悪性腫瘍の患者も多く、 再発症例などについては終末期医療、 緩和医療への一層の取り組みを要する。

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