1 診   療   科

耳鼻咽喉科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 宮崎医科大学耳鼻咽喉科は宮崎県の地域診療の中核として、 県下各診療所はもとより各県立病院などの拠点病院からの紹介患者の受け入れを行なっている。 中でも耳科学診療への取り組みを積極的に行なっており、 特に鼓室形成手術症例においては他の大学病院に類を見ない症例数を誇り、 その他聴神経腫瘍摘出術などの神経耳科手術も増加してきている。 また高度先進医療の人工内耳埋め込み術への取り組みは1990年の第1号症例以来全国的にも先駆的役割を果たしたと共に本院の特定機能病院の指定要件としても貢献した。 人工内耳手術症例はすでに100例を超え患者は九州一円に広がっている。 また、 現在ではさらなる高度先進医療として人工中耳にも取り組んでいる。 耳科学の中でも突発性難聴に対する取り組みは、 開院以来行われており、 厚生省急性高度難聴研究班の班員として常に研究と臨床の両面から積極的に取り組んでいる。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 5年間の初診患者はそれぞれ1842 ('95)、 2038 ('96)、 1917 ('97)、 1765 ('98)、 1549 ('99) 人であった (新患率約20%)。 再診患者数は一日平均約80人である。 一週間の外来診療体制としては火曜日、 木曜日の午前中に初診一般、 再診を行っている。 また特殊外来として火曜日午後にアレルギーおよびめまい外来、 水曜日は補聴器外来、 金曜日はアレルギー外来を、 さらに、 月曜日および水曜日には電気眼振計、 聴性脳幹反応などの特殊検査や外来小手術を2名の専任外来担当医が行っている。 火曜木曜の外来診療については、 全員で診療にあたっており、 特に入院術後患者の経過観察にそれぞれ主治医、 執刀医が詳細に検討している。 診療に関する問題に関しては木曜日のカンファレンスで全員でディスカッションして方針を決定している。
(2) 入院患者診療
 5年間の入院患者はそれぞれ488 ('95)、 527 ('96)、 524 ('97)、 502 ('98)、 481 ('99) であった。 そのほとんどは手術患者であり耳手術患者が60%を占めており、 頭頚部腫瘍患者は約20%であり他大学に比べ当科の特色である耳科手術患者の割合が高く、 例年その傾向は変わらない。 耳科手術では、 特に中耳真珠腫に関する基礎的臨床的研究を含め積極的に診療を行っている。 また、 耳硬化症に対するあぶみ骨手術は、 国内で最も症例数が多くそれらに基づいた研究を行っている。 最近の画像診断の進歩により早期に内耳道内の聴神経腫瘍が数多く発見されるようになり、 耳鼻咽喉科診療所はもとより脳外科施設、 内科施設よりの紹介が増え、 当科での聴神経腫瘍摘出術が増加してきた。 入院患者にあってはほとんどが手術患者であることから術前検査を全て外来にて行うこととし、 手術の2日前に入院することで術前検査の検討を十分に行ない高齢者の手術に対する万全な体制をとっているため、 手術の延期や中止を防止している。 平均在院日数は21日と非常に短く効率の良い診療体制ができている。 手術日は月曜 (2ベッド) 水曜 (2ベッド) 金曜 (1ベッド) の3日間 (計5ベッド) を朝から夕方までフルに活用している。
3. 高度医療
 聾患者への人工内耳植え込み術は、 これまで成人例100例を超えその臨床経験を活かして昨年より先天聾の小児患者に行っている。 これらが、 高度先進医療の中の要件の1つとして、 本院特定機能病院指定に大きく貢献したことは良く知られたことである。 さらに現在では高度先進医療の一貫として人工中耳埋め込み術を行っている。 中核病院としての役割として行われる高度医療としては、 まず聴神経腫瘍摘出術である。 早期に発見された聴神経腫瘍に対して経迷路法、 経中頭蓋窩法を行っている。 また、 頭頚部悪性腫瘍に対しては本院に形成外科が無いため、 腫瘍摘出後の再建に有茎皮弁はもとより血管吻合を伴う遊離腹直筋皮弁、 遊離空腸等による再建を行っている。 また脳神経外科との協力で進展した頭蓋底腫瘍に対しても積極的に頭蓋底外科手術を行い好成績をおさめている。 また全国的に治療施設の少ない先天奇形の1つである小耳症と外耳道閉鎖症例に対して外耳道増設と耳介形成術を一期的に行なっている唯一の施設で、 これまで多くの症例を治療してきた。

4. 地域医療への貢献
 当科は宮崎県の基幹病院として県内各拠点病院や診療所との密な連携を図っている。 県下拠点病院としては、 県立宮崎病院 (4名)、 県立延岡病院 (2名)、 県立日南病院 (2名)、 国立都城病院 (2名)、 済生会日向病院 (2名) 等に複数の専門医を派遣し地域診療所との連携を図りながら、 さらに大学との密接な連携を図るようにしている。 また人工内耳植え込み術後の患者は九州一円に広がり、 患者サービスの一貫として術後のリハビリテーションに定期的にそれぞれの地域へ出張している。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 これまでの高度医療への取り組みは十分な成果を上げてきた。 ただ、 今後の取り組みとしては小児人工内耳を推進するに当たり、 県内あるいは九州内の聾学校あるいは福祉センターとの連携が不可欠であると考える。 現在県内拠点病院での診療はほぼ独自に行われているが、 診療情報の提供やデータの交換などさらに密に行ない基幹病院として県内のデータを蓄積し分析する必要があると考える。 また入院患者については平均在院日数21日とかなりの成果を上げているが、 日帰り手術の積極的導入や入院検査の外来実施、 拠点病院との連携を含めてさらなる成果が期待できると考えている。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 今後の当科の将来構想としては対外的には、 診療所、 拠点病院との連携、 聾学校や福祉センターとの協力体制を発展させること。 対内的には高度医療の推進に加えて、 脳神経外科などの他科との連携特に手術の協力体制を推進する必要があると考える。

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