1 診   療   科

泌尿器科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 泌尿器科は腎、 尿管、 膀胱、 尿道といった尿路の疾患、 精巣などの性器疾患、 副腎などの内分泌疾患を扱う外科系の臨床科である。 尿路疾患としては前立腺疾患、 尿路結石、 尿路腫瘍の他、 尿路の感染症、 尿路の奇形を主に診療している。 性器疾患としては性器奇形、 性器腫瘍、 性器感染症、 男性不妊症などを主に診療する。 内分泌疾患としては副腎疾患が主であり、 原発性アルドステロン症、 クッシング症候群、 褐色細胞腫などを外科的に治療している。
 近年の高齢者の増加により、 泌尿器科疾患は増加傾向にある。 特に排尿困難や尿失禁は高齢者で合併する頻度が高く、 直接生命に関わらなくとも、 患者の QOL にとっては非常に重要な問題である。 当科ではこれらの問題に対して、 長い間取り組んできた。 外来では尿失禁・神経因性膀胱外来、 前立腺外来を1989年5月より設けており、 男性の排尿困難に対してはより有効な薬剤療法や経尿道的手術を用いた minimum invasive surgery を心掛けている。 また、 尿失禁に対しては、 コラーゲン注入療法や尿道つり上げ術などを早くから行っている。 尿路性器腫瘍や尿路結石に対しても同様に、 QOL を重視した minimum invasive surgery を心掛けている。 膀胱腫瘍に対する経尿道的手術の他、 尿路結石症に対しては、 体外衝撃波結石破砕術を中心として、 経尿道的尿管結石除去術、 経皮的腎尿管結石除去術などを併用した非侵襲的治療を行っている。 また、 膀胱腫瘍に対して、 腸管を利用した新膀胱造設術を試みている。 腹腔鏡下手術が泌尿器科にも持ち込まれ、 副腎摘除術のほか腎摘除術にまでその適応を広げている。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
新来患者総数 平成7年度 743名  平成8年度 788名  平成9年度 752名 平成10年度 761名
平成11年度 740名 (1日平均:初診日 約15名、 再診日 約70名)
一般外来: 初診日 火曜日・木曜日
再診日 月曜日・金曜日
特殊外来 (予約制) :尿失禁・神経因性膀胱再来…月曜日
膀胱尿道内圧測定・尿流測定・括約筋筋電図等の尿流動態検査を行い、 尿失禁・神経因性膀胱の診断と治療にあたる。
前立腺再来…月曜日午後
 経直腸的超音波断層撮影により前立腺癌、 前立腺肥大症の前立腺・精嚢疾患診断を行う。 悪性を疑う場合には超音波下針生検を行う。
特殊外来…隔週水曜日午前
 尿路変向患者のカテーテル交換およびストーマケアを指導する。
 月、 火、 金の午後には体外衝撃波結石破砕術の日帰り手術を行っている。
(2) 入院患者診療
入院患者数 平成7年度 275名  平成8年度 298名  平成9年度 312名  平成10年度 362名
      平成11年度 360名
 泌尿器科入院患者は、 高齢者が多いのが特徴であるが、 夏休みなどには小児泌尿器科の手術を集中的に行うため、 小児に占める割合が増加する。
 疾患別では、 尿路性器腫瘍、 尿路性器奇形、 尿路結石の順に多い。 尿路性器腫瘍では膀胱癌がその大半を占め、 ついで前立腺腫瘍、 腎腫瘍の順である。 尿路性器奇形では停留精巣が多く、 先天性水腎症、 尿道下裂の順である。
 手術は水曜、 金曜に行われ、 年間約400例が行われている。 手術としては、 膀胱腫瘍に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術が最も多く行われている。 さらには、 尿路結石症に対する体外衝撃波結石破砕術、 停留精巣に対する精巣固定術、 腎摘出術、 経尿道的前立腺摘除術、 膀胱全摘術が多く行われている。 近年、 腹腔鏡下手術が泌尿器科にも持ち込まれ、 副腎摘除術のほか腎摘除術にまでその適応を広げている。
3. 高度医療
(1) 尿路結石症に対する、 体外衝撃波結石破砕術と経尿道的尿管結石除去術、 経皮的腎尿管結石除去術などを併用した非侵襲的治療
(2) 腹腔鏡下または後腹膜鏡下副腎摘出術および腎摘術
(3) 膀胱全摘患者に対する腸管を利用した新膀胱造設術
(4) 膀胱尿管逆流症および腹圧性尿失禁に対するコラーゲン注入療法
(5) 前立腺肥大症に対するレーザー療法
(6) 便失禁を有する2分脊椎患者に対する盲腸を利用した順行性禁制浣腸法
など

4. 地域医療への貢献
 宮崎県泌尿器科医会の主要メンバーとして、 会の運営、 管理を行い、 医会員向けに講演を行っている。
 国民健康保険審査員、 宮崎県結核感染症動向調査解析委員などを併任している
 宮崎県泌尿器科医会と共同で、 宮崎県における性感染症の動向調査を行っている。
 前立腺癌増加に対する啓蒙活動として、 一般向けの講演会を随時開催している。
 各県立病院 (宮崎、 延岡、 日南) への医師派遣の他、 藤元早鈴病院、 市民の森病院、 池井病院など多数の病院への医師派遣を行っている。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 泌尿器科では患者の QOL を重視した非侵襲的治療を常に心掛けている。 例えば、 経尿道的治療、 体外衝撃波結石破砕装置を用いた治療、 腹腔鏡下または後腹膜鏡下手術などを積極的に行っており、 我々の期待した治療が行えている。 また、 泌尿器科が取り扱う疾患は、 主に下腹部に集中するため患者の羞恥心、 プライバシーに特に考慮しながら診療を行っている。
 しかしながら、 当科における高度治療はまだ地域にひろまっておらず、 侵襲的治療が他院で行われているのを見るにつけ、 我々のアピール不足を痛感する。 加えて、 これらの治療に用いられる機材の老朽化が目立っており、 新機材の導入が待たれる。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 泌尿器科は現在、 診断治療に関して大きな転換期にある。 つまり、 QOL を重視した非侵襲的治療がようやく全国的に容認され、 広がりつつある時期である。 当科はこれまで、 地域においてその治療の先端を担ってきた。 今後はこれらの診断、 治療を地域の医療施設に広める役割を担うこととなる。 新しい治療法の教育とともに、 医療ネットワークを広げて、 新しい治療ができない施設の患者は、 我々が積極的に治療するような体制を整えていきたい。 加えて、 更なる先進医療を行うためには新機材の導入が望まれる。

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