1 診   療   科

第一内科

【過去5年間の実績等】
1. 診療科の特色等
 循環器、 高血圧、 腎臓、 消化器の4グループ (分野) が、 外来および入院診療に携わり、 虚血性心疾患を中心とした心血管疾患、 高血圧、 糖尿病性腎症を含む腎疾患、 血液透析、 消化器系の悪性新生物を含む消化器疾患の診療を行なっている。 これらの疾患の多くが生活習慣病に分類され、 生活習慣病が日本人の死因の大半を占めることを考慮すると、 当科が担当する疾患の重要性が理解される。 第一内科では、 これらの疾患患者の診療のみでなく、 関連病院、 関連検診施設、 地元自治体と連携しつつ、 生活習慣病の早期発見、 早期治療、 健康教室開催による生活習慣病予防の啓蒙活動も展開している。 なお、 難治性疾患、 特殊疾患、 高度医療等については後述のとおりである。 すなわち、 平成7〜11年の5年間、 特定機能病院が担うべき疾患から生活習慣病対策まで幅広い医療を展開してきた。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 前述の4グループの教官と医員が中心となり、 循環器疾患、 高血圧、 腎臓疾患および消化器疾患の診療を行なっている。 月曜日と水曜日に初診の患者の診療 (再診も含む) を行ない、 火曜日と金曜日を再診日としている。 当科では一般内科としての外来検査のみでなく、 特定機能病院として他の医療機関からの患者紹介に対応すべく、 月曜日と水曜日に心臓超音波検査、 運動負荷心電図検査、 上部下部消化管透視、 火曜日と金曜日に上部下部消化器内視鏡検査、 月曜日、 火曜日、 金曜日に心臓核医学検査を行なっている。 院内他科に入院中の患者の術前心機能評価を含めた心臓超音波検査の依頼が多く、 心血管疾患を合併した患者の頻度を反映するものと思われ、 週に50例を越える検査数も珍しくない状況である。 一方で、 宮崎県の地理的条件により遠方からの紹介もあり、 通院に伴う患者負担を軽減すべく、 外来特殊検査をより効率的に行ない、 地域のニーズに十分に対応出来るように心掛けてきた。
(2) 入院患者診療
 外来診療と同様に、 対象疾患は循環器疾患、 高血圧、 腎臓疾患および消化器疾患であり、 教官、 医員、 研修医および一部の大学院生が診療に携わってきた。 診療は主治医制であり、 指導医、 各診療グループ、 診療科長による多重のチェックを常に行ない、 適正な医療が行なわれるよう努めてきた。 循環器グループは虚血性心疾患を中心に弁膜症、 心筋症等に対し心臓カテーテル検査による評価を行ない、 適応患者には経皮的冠動脈形成術等のインターベンション治療を積極的に行なっている。 また、 頻脈性不整脈の患者に対するカテーテルアブレーションも行なっている。 高血圧グループは2次性高血圧の診断、 高血圧の原因および合併症の評価、 患者教育、 24時間血圧計を用いた血圧管理等を行なっている。 腎臓グループは、 慢性糸球体腎炎、 ネフローゼ症候群等の腎疾患に対し、 積極的に腎生検を施行し最適な治療方法を決定している。 また、 透析導入、 他疾患を合併する複雑な病態の透析患者管理を行なっている。 消化器グループは、 胃・大腸内視鏡検査を用いた評価と治療を行なっており、 内視鏡下の腫瘍切除術、 炎症性腸疾患の治療、 ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法による消化性潰瘍の治療に注力してきた。
 過去5年間の入院患者数は平成7年より順次447名、 418名、 380名、 404名、 420名となっている。 全入院患者データはコンピュータ管理されており、 学会への症例報告、 臨床研究等に積極的に利用している。
3. 高度医療
 虚血性心疾患に対して、 経皮的冠動脈形成術や冠動脈内ステント挿入術を行なっており、 当科は、 頻脈性不整脈患者に対してカテーテルアブレーションを定期的に行なっている宮崎県内唯一の施設である。 アドレノメデュリン (AM) は、 平成5年に当講座で単離同定された新たな血管拡張性ペプチドであるが、 重症心不全や高血圧緊急症の治療における AM の有効性を検討する臨床試験を計画しており、 臨床試験を開始するために必要な作業を進めている。 また、 難治性ネフローゼ症候群に対し、 血液浄化療法の一つであるアフェレーシス (LDL 吸着) 療法を行なっており、 有効性が確認されつつある。 さらに、 潰瘍性大腸炎は厚生省特定疾患に指定されている原因不明の難治性炎症疾患であり、 炎症の緩解とその維持を目的に5-ASA やステロイド剤などを用いた様々な治療が行なわれる。 緩解導入が困難な症例、 再燃を繰り返す症例、 ステロイド抵抗性がみられる症例に対して、 白血球除去療法の有効性が報告されている。 顆粒球除去療法は平成12年4月より保険適用となり、 当科でも同療法を難治性潰瘍性大腸炎に対して試みることが決定しており、 治療効果および長期予後について検討する。

4. 地域医療への貢献
 地域医療は本学が担うべき極めて重要な役割の一つであり、 第一内科も地域医療の充実発展のため少なからず努力してきた。 その中には、 常勤医師、 非常勤医師の派遣、 関連施設や地元自治体の検診事業への参加が含まれる。 宮崎県立宮崎病院、 宮崎県立日南病院、 宮崎県立延岡病院、 国立療養所宮崎病院、 国立療養所宮崎東病院、 三股町立病院、 宮崎医師会病院、 都城医師会病院、 西都医師会病院、 延岡医師会病院、 社会保険宮崎病院 (旧江南病院)、 古賀総合病院、 宮崎循環器病院、 野崎東病院、 平和台内科病院、 千代田病院の16病院に、 62名の常勤医師を派遣している。 また、 非常勤医師をこれらの病院も含めて50の医療機関に派遣しており、 非常勤医師を派遣している機関には、 宮崎、 都城、 西都の急病センターが含まれ、 地域の救急医療に少なからず貢献してきた。 常勤および非常勤医師を派遣している医療機関のみならず、 宮崎県内の主要な医療機関とは常に緊密な連携を取っており、 患者の紹介や医療に関する情報の交換が円滑に行える状況にある。 さらに、 地域医療における役割の分担等の重要な課題について、 これらの医療機関と協議することにより、 より質の高い効率的な医療を提供できるよう心掛けてきた。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 循環器疾患患者には、 当科の外来から直ちに入院になる症例や他病院から紹介で緊急入院になる症例が多い。 心臓カテーテル検査を含めて高度な検査や治療が可能な病院が宮崎市内およびその周辺部に増加してきたことより、 緊急患者がこれらの市中の循環器専門病院に入院する頻度が増加してきた。 大学病院といえども機敏に患者の要望に応えるべく、 入院期間を短縮させて検査を提供することが重要である。 本課題への対策として、 平成12年度より放射線科と中央放射線部の協力により、 当科の心臓カテーテル検査枠をこれまでの2倍に増加させることで入院期間が短縮可能になる。 患者の入退院の回転が非常に速くなることは特筆に値すると思われる。 また、 宮崎県内で末期慢性腎不全により維持透析を受けている患者数は約2,300名である。 これらの患者のうち約半数が第一内科関連の施設で透析を受けており、 長期予後に関して良好な結果が得られてきた。 今日、 糖尿病性腎症による血液透析の症例が増加しており、 同症患者は他の循環器疾患を合併することが多い。 糖尿病性腎症の管理が大きな課題になると推測され、 当科の役割が益々重要になると予想される。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 地域医療レベルの向上や情報ネットワークの発達等を社会的背景として、 大学病院の担うべき役割が変化しつつある。 当科としても地域の特性を理解し、 時代のニーズに応じた医療を提供する必要がある。 患者の立場から表現すれば、 いつでも診てもらえ、 いつでも入院が可能で、 入院期間が短くてすむ病院が望まれるであろう。 すなわち、 個々の患者のニーズに合った医療を提供する必要があろう。 一方、 当病院が今後とも本県の医学をリードしなけらばならない立場にあることに変化はない。 県内の医療機関へ最新の医学情報を随時提供できるようなシステムの構築が必要と思われる。 1例として、 県内医療機関の先生方からの心電図の所見等に関するご相談を情報ネットワークでお受けするようなサービスも考えてみたい。 また、 当科では開講以来、 消化器系の悪性新生物の早期発見・早期治療に取り組んできた。 厚生省は 「健康日本21」 という長期計画を発表し、 高齢化社会に備えて疾患治療のみでなく、 疾患予防にも具体的目標を挙げて取り組もうとしている。 当科としても、 消化器系の悪性新生物、 高血圧、 高脂血症等の生活習慣病の予防や早期発見・早期治療に積極的に取り組んでいきたい。

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