7 中 央 診 療 施 設 等

集中治療部

【過去5年間の実績等】
1. 施設の特色等
(1) 教育の特色等
 集中治療部の講義は、 麻酔学の臨床講義の中で実施している。 呼吸管理、 循環管理、 急性代謝異常と血液浄化療法などを扱っている。
 臨床実習は、 第4学年から第5学年の学生に救急・集中治療として実施してきた。 1グループ6人の学生を3人ずつに分けて、 集中治療部と救急部で受け持った。 集中治療部では、 ベッドサイドカンファランスに参加してもらい、 実地に患者を観ながら学ぶこととし、 さらにモデルを用いて心肺蘇生法、 人工呼吸器の扱い方を修得させ、 感染症の早期診断のための塗沫標本の作製から検鏡まで会得させた。 ただし、 このシステムの臨床実習は平成10年度をもって中止した。
(2) 研究の特色等
 日本の集中治療部、 特に国立大学病院の集中治療部は、 看護職員の配置が少ないため、 どの施設も多くて6ベッドである。 そのため、 同一または類似の臨床例の蓄積が難しく、 臨床研究は進まない。 そのような状況にあって、 当部では感染症の早期発見と抗生物質の選択決定のために、 集中治療部で簡便に行う塗沫検査の有効性を検討している。 さらに、 収容直後の血中乳酸濃度で患者の予後が判定できるかどうかなど、 臨床に即応したテーマをもとに研究を続けている。 体外循環後や敗血症時のアドレノメデュリン濃度の研究は、 高い評価を得ている。 最近、 水棲かたつむりの呼吸細胞を用いて、 呼吸に関する研究を始めている。
 集中治療部の教員の1人は、 論文を提出して博士 (医学) の学位を受けた。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
 内科学第一講座とアドレノメデュリンに関する研究を、 耳鼻咽喉学講座と聴性脳幹反応や蝸電図に関する研究を、 検査部とグラム染色や簡易 MRSA 選択分離培地に関する研究を、 そして麻酔学講座とは呼吸細胞の研究で共同研究を実施している。
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
 カナダ、 カルガリーのカルガリー大学解剖生理学教室の NI Syed 助教授と、 水棲かたつむりの呼吸細胞の培養と神経栄養因子に関する研究で共同研究を続けている。
3. 地域との連携
 地域での集中治療医学の発展は弱く、 連携は十分でない。 県内各病院から、 臨床工学技士、 看護職員の研修を引き受け、 指導している。

4. 国際交流
 長期の留学生を受け入れたことはない。 教員を海外留学させたが、 留学中の業務の代行が困難なため、 麻酔学講座の好意にすがり、 配置替えの上、 実施した。

5. 外部資金の導入状況
資金名  平成7年度  平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 2 件 1 件 2 件 1 件
 1,600千円  2,000千円  2,300千円 600千円
奨学寄附金 1 件 2 件 2 件 3 件
500千円 500千円 400千円 700千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 第4学年と第5学年の学生を対象に行ってきた救急・集中治療の臨床実習では、 集中治療部に学生実習のためのスペースがないため、 ベッドサイドラーニング以外はすべて救急部の施設を使って行ってきた。 しかし、 救急医学講座に教官が増え、 臨床実習を独自に行うようになったことから、 物理的に実施が困難になったので、 平成10年度をもって中止した。 なお、 平成11年度から、 集中治療医学の臨床実習は、 時間数は少なくなったが、 麻酔学の臨床実習の中に組み込んで実施している。
 集中治療部には、 副部長の管理室だけしか整備されていない。 そのほかの教員の室はない。 研究室もないので、 麻酔学講座の研究室を利用させてもらって研究を実施している。
 日本の集中治療部では、 収容できる患者数が少なく、 臨床研究は難しいが、 そのような状況にあって臨床研究を実施、 継続していることは評価できる。 また、 科学研究費の補助を受けて研究を前進させていることも評価できる。 呼吸細胞の研究は、 今後の発展が期待できるであろう。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 卒前教育は、 施設が改善されなければ、 本格的な再開は困難であろう。 卒後教育に関しても、 希望者は多いが、 収容患者数が少ないことと、 研究室が整備されていないことから、 受け入れを制限せざるを得ない。 ローテイト研修医を受け入れているが、 居場所がないのが実情で、 多くは受け入れられない。 施設の早期改善を期待したい。
 高度機能病院として集中治療部の重要性は増すであろうが、 稼働ベッドの少ない点が問題である。 将来的には、 病態の少し軽い患者を収容する観察病床 (病棟と集中治療の中間クラス) と一緒にした運営体制を作れれば、 病院全体として機能的運営ができるようになるかもしれない。
 稼働ベッドの増加がなければ、 臨時研究の大きな進展は期待できない。 少数の教員ながら独創的なアイディアで基礎研究が行われているので、 施設面で他講座の協力を得ながら、 発展させる予定である。

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