7 中 央 診 療 施 設 等

輸 血 部

【過去5年間の実績等】
1. 施設の特色等
(1) 教育の特色等
 輸血部では、 臨床に役立つ輸血医学の知識と技術を習得させるために、 臨床検査医学の一部として輸血医学教育を行っている。 第4学年に、 輸血検査から輸血副作用、 輸血療法の実際、 血液製剤の適正使用などについて輸血医学全般の臨床講義を行っている。 第4学年から第5学年にかけての臨床実習(I)の臨床検査医学実習の中で血液型や不規則抗体検査などの輸血検査実習を行っているが、 不適合妊娠・自己免疫疾患・異型輸血など輸血に関連した具体的な症例を提示し、 その症例検体を用いて判定を行う過程で学生の輸血検査への理解が深まることを目指している。 また臨床検査医学実習の中に、 赤十字血液センターにおける献血の実際、 検査、 血液製剤製造工程見学などの学外実習も導入し、 献血で得られた貴重な血液製剤を有効利用する考えが芽生えるように指導している。
(2) 研究の特色等
 血小板凝集を中心とした血栓形成の分子機構の解明がテーマである。 特にインテグリンとよばれる細胞表面受容体の役割に焦点をあてて研究を行っている。 心筋梗塞や脳梗塞などの動脈血栓症の原因となる血小板凝集塊の形成は、 血漿中のフィブリノーゲン(Fg)と血小板表面のインテグリンα2bβ3 (血小板膜糖蛋白G P2b/3a) が結合し血小板同士が架橋されることにより生じる。 蛇毒由来の合成ペプチドなどを用いて、 Fg のα2bβ3への特異的認識機構の解明を進めている。 また血管内皮細胞上のインテグリンにも注目し、 Fg への接着には血管内皮細胞上の新たなインテグリンα5β1が関与することを明らかにし、 Fg の認識部位をリコンビナント Fg を用いて同定するなど、 Fg とα5β1の詳細な結合機構の解析を通じて血栓形成におけるインテグリンの機能解明を進めている。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
 臨床検査医学講座や検査部と定期的にリサーチカンファレンスを行い共同で研究を進めている。
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
 フィブリノーゲンとインテグリンの結合機構について、 (財)化学及血清療法研究所の水口純博士、 岩永貞昭九大名誉教授と共同研究を行っている。
3. 地域との連携
 宮崎県献血推進協議会の委員として宮崎県の献血推進と献血制度運営に貢献している。 また宮崎県臨床衛生検査技師会研究班での講演など検査技師教育を行っている。

4. 国際交流
 米国 Cleveland Clinic Foundation の Edward F. Plow 博士とインテグリンのリガンド認識特異性の解明についての共同研究を、 また米国 Oregon Health Sciences University の David H. Farrell 博士とはリコンビナント蛋白を用いたフィブリノーゲンの認識部位同定に関する共同研究を行っている。

5. 外部資金の導入状況
資金名  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 1 件 1 件
 1,000千円 800千円
奨学寄附金 1 件
 1,106千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 教育面では、 輸血医学の臨床講義は臨床検査医学の1コマ(2時間)のみであり、 臨床医に必要な輸血医学の知識を習得させるには不十分と考えられる。 輸血検査実習では、 単に検査技術を学ぶだけでなく、 実際の症例検体を用いた検査により得られた結果から臨床診断を考えさせるように配慮して実習を進めてきたため学生には概ね好評である。 今後は講義時間の増加、 教育スタッフの充実などが課題となろう。
 研究面では、 血栓症に関する研究に積極的に取り組み、 その成果を国際学会等で発表してきたが、 教官1名のみでは限界がある。 安定した研究の継続には研究設備の整備や研究費の充実が必要である。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 教育面では、 輸血療法の実際など臨床医に要求される輸血医学の知識は広範であり、 学生の興味を引くような臨床に即したテーマで講義時間数の増加を計る必要があろう。
 研究面では、 今後は輸血部と診療科が協力して共通のテーマで継続的に研究を進めていく必要があろう。 例えば、 移植免疫治療や細胞療法などの高度先進医療を推進する目的で、 輸血部を移植免疫・細胞療法センターとして整備し、 共同で利用できる施設として診療科と研究を進めていくなどの選択が考えられる。

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