5 附 属 教 育 研 究 施 設

生化学第二部門

【過去5年間の実績等】
1. 部門の特色等
 当部門には、 主に蛋白質化学、 細胞生物学、 組換え DNA 実験などに用いられる機器が設置されている。 蛋白質の構造と機能解析の研究に関しては、 1) Smart System, FPLC, HPLC などによる分離と精製、 2) 2次元電気泳動装置による系統的な分離と分析、 3) プロテインシーケンサによるアミノ酸配列決定などが出来る。 細胞生物学的研究に関しては、 自動細胞解析分離装置による解析と分離が出来る。 組換え DNA 実験に関しては、 1)PCR による DNA 断片の増幅、 DNA シーケンサによる塩基配列決定などが出来る。 また、 イメージアナライザー、 蛍光解析装置によるサザン分析、 ノーザン分析、 ウエスタン分析などが出来る。 さらに、 冷房室では不安定な酵素の精製なども行える。
 利用の取り決めは他部門とほぼ同様で、 登録制で受益者負担を原則とし、 利用者本人が機器を使用することも原則である。 ただし、 プロテインシーケンサに関しては、 その使用には高度に熟練した技術を必要とするため、 当部門の担当者がサンプルの分析を引き受けている。
2. 機器設備の整備状況
蛍光解析装置
自動細胞解析分離装置
電気泳動システム
PCR
GeneAmp PCR System
製氷機
エアコン (3台)
モレキュラー・ダイナミクス、 Fluor Imager 595
ベクトン・ディッキンソン、 FACS Vantage, 10−0462
ファルマシア、 Multiphor 2
パーキンエルマー、 2400
パーキンエルマー、 9700
ホシザキ、 FM-230AE−SA
日立、 PRC−J56H, PRC−J80H1, RPC−J112H
3. 利用実績 (利用講座、 利用者数、 利用時間等)
 登録講座数及び利用者数は、 以下の通りである。
平成7年度
平成8年度
平成9年度
平成10年度
平成11年度
 16講座 72名 
 16講座 78名 
 17講座 93名 
 17講座 87名 
 17講座 83名

主な研究課題
解剖学第一
精子特異蛋白質エクアトリンの構造解析、 精子特異抗原及び精子発生ステージ特異的に発現する分子の一次構造解析

解剖学第二
GSA−2 認識糖タンパク質の cDNA クローニング、 昆虫ゴルジタンパク質の一次構造の解析

生理学第二
蛇毒メタロプロテアーゼによるα-マクログロブリン切断部位の同定

生化学第二
ジーン・ノックアウト法を用いたヒストンバリアントの機能解析、 ジーン・ノックアウト法を用いたヒストンアセチルトランスフェラーゼ、 デアセチラーゼ、 クロマチンアセンブリーファクターの機能解析、 ゲノム解析の研究、 2次元電気泳動法による蛋白質のマッピング

薬理学
脳微小血管に存在する受容体の同定、 副腎髄質細胞のペプチドの合成と遊離、 電位依存性 Na チャネルの発現調節機構の解明、 虚血による脳 GTP 結合蛋白質とその遺伝子発現の変化、 脳微小血管に存在するアドレナリン受容体の同定

病理学第二
Amyloid β protein precursor antisense mRNA による癌細胞増殖抑制、 膜結合型セリンプロテアーゼインヒビター(HAI-1)による細胞増殖因子活性化制御機構

寄生虫学
げっ歯類マスト細胞プロテアーゼの研究、 IL−3R 異常マウスの感染防御能の研究、 杯細胞粘液と TTF の相関の研究

法医学
肺サーファクタントプロテイン D の cDNA クローニングとフュージョン蛋白の作製、 ミトコンドリア DNA 多型を利用した個人識別に関する研究、 Y 染色体上 STR 多型遺伝子のハプロイドタイプ解析

内科学第一
ブタの心房に存在する新たなアドレノメジュリン関連ペプチドの検索、 ブタ副腎からの PAMP 関連ペプチドの単離同定、 循環器疾患におけるアドレノメジュリンと関連ペプチドの役割、 アドレノメジュリン関連ペプチドの研究

内科学第二
ATL 細胞の表面抗原の解析、 重症肝炎患者抹消血リンパ球表面抗原の解析、 肝癌細胞と再生肝細胞を識別する特異的プロモーターの開発と遺伝子治療への応用、 初代培養肝細胞におけるサイクリン D1遺伝子転写調節領域の解析と肝細胞増殖因子にて誘導される転写因子の同定

内科学第三
副腎白質ジストロフィー症と家族性筋萎縮症の遺伝子診断、 副腎白質ジストロフィー症患者の繊維芽細胞への実験的遺伝子導入の研究、 ラット不死化 Schwann 細胞株の神経栄養因子の分泌・産生能に aldose reductase inhibitor の与える作用の研究、 単球・マクロファージにおける CD44の機能解析、 神経内科疾患の遺伝子診断法の研究、 好酸球性肺炎における好酸球の CD44の発現の検討

精神医学
パーキンソン病モデルラットを用いた形態学的研究

外科学第一
肝臓における胆汁酸合成酵素系に関する研究、 ビタミン D 水酸化酵素の精製および酵素学的研究

整形外科学
硝子軟骨におけるアドレノメジュリンの役割

産婦人科学
アンドロゲン異常症に於けるアンドロゲンレセプター遺伝子の解析、 さい帯静脈血管内皮細胞プロスタグランディン産生能に及ぼすアンチトロンビン3の効果に関する研究

臨床検査医学
ラットの P130および胃 Na+/I−symporter cDNA のクローニング、 RBP の characterization、 TPO 異常症の解析

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 当部門は発足以来、 主に蛋白質の構造に関する研究を支援するため、 様々な機器の整備を行ってきた。 ハードおよびソフトの両面において全国的にも高いレベルを維持しており、 学内の多くの研究をサポートすることが出来たと自負している。
 この10年間程は、 組換え DNA 実験に必要な機器の整備に重点を置いてきた。 他部門も全く同様であるが、 ほとんどの機器の購入は主に一般設備費 (現在はなし)、 概算要求 (特別設備費) に基づいている。 しかし、 これらは一般的に大型機器の整備を目的とするため、 日常的に用いる小型機器の整備は容易ではない。 さらに、 近年、 大学全体の特別設備費の件数が減少し、 機器の整備は遅々として進まないのが現状である。
 また、 この数年、 多くの研究機器のみならず製氷機やエアコンなどの環境整備に必要な機器などが老朽化のため故障が著しい。 共同利用施設整備費 (主に特殊装置等維持管理費) の多くも、 これらの修理や更新に費やしており、 この経費による機器の整備も微々たるものである。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 組換え DNA 実験を用いる研究は、 今後、 飛躍的に増加することは容易に予測される。 当部門はこのようなニーズにハードおよびソフトの両面から対応出来るシステムを整える必要がある。 しかし、 大学の特別設備費件数は減少し、 それに伴い共同利用施設整備費も減少し、 逆に、 多くの機器は経年のため老朽化し、 その修理および更新の費用が増大する傾向は増々強まると思われる。 さらに、 校費の減少というダブルパンチで受益者が負担出来なくなる可能性がある。 直面している現実は深刻であり、 好転することは極めて期待薄である。 近い将来、 故障した機器はその時点で運転停止ということになり、 いずれの部門も開店休業ということに成りかねない。
 このような状況を打開するには、 根本的には、 概算要求 (特別設備費) などの件数を増やすように大学全体で努力する必要がある。 また、 個々の研究者が科研費などの外部資金の獲得に努力し、 共用出来る機器を共用するシステムを作る必要などがある。

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