5 附 属 教 育 研 究 施 設

附属実験実習機器センター

【過去5年間の実績等】
1. センターの特色等
(1) 教育の特色等
 医学研究科担当教官として、 「研究方法論」 の 「RI研究法特論」 を担当し、 放射線・放射性物質の使用における関係法令と放射線管理学を中心に講義・演習を行ってきた。 その他に12科目を複数の教官と共に担当し、 臨床医及び医学研究者としての基礎的な考え方を習得させ、 生体の仕組み及び医薬品と生理的機能との関わりを理解させるよう努めてきた。
 研究指導では、 これまでに放射線医学講座指導担当の大学院生2名を直接担当し、 博士 (医学) を取得させた。 研究指導においても、 放射性医薬品の臨床応用に欠かせない安全性と有効性を十分に考慮した薬剤設計の重要性を理解させることを心掛けている。
 現在まで医学部放射線安全管理責任者を兼任し、 放射線障害防止法に基づく適切な施設管理・運営に努め、 年4回の教育訓練では、 関係法令・放射線管理学の講義・実習を担当し、 放射線業務従事者への教育訓練の充実を遂行してきた。 さらに、 これらの放射線安全教育に使用している 「実験実習機器センターRI部門利用の手引き」 を平成9年に全面改訂した。
(2) 研究の特色等
 核医学診断は、 生体機能診断を非侵襲的に行い得ることから、 生きた個体の代謝機能情報の解析に適した手法と考えられる。 これまでに、 脳のアミノ酸輸送機能診断薬として、 特に精神疾患時に機能亢進が報告されているアミノ酸能動輸送機構により、 脳に高く集積するチロシン誘導体を開発した。 また、 ドパミン生合成代謝への親和性の向上を期待してドーパ誘導体を標識し、 その評価を行うと共に、 標識・精製操作の簡便化のために標識部位特異的固相化標識法の確立にも成功した。
 最近は、 脳内活性アミン生合成酵素阻害剤を利用した放射性修飾アミノ酸の開発に着手し、 特に脳内移行性が低く、 診断薬への応用が困難であった化合物を利用し、 プロドラッグ化することにより良好な結果が得られた。 この独創性が高く評価され、 平成10年10月に第36回日本核医学会賞を受賞した。 更に、 標識異性体を使い分けることで膜輸送機能と生合成機能の同時評価が可能なアミノ酸誘導体を開発し、 共同研究者が平成11年10月に日本核医学会アジアオセアニア優秀研究者賞を受賞した。
 また、 これらの核医学診断法を経時的薬物動態評価法として応用し、 以下に挙げる病態機能評価や医療薬剤学的分野に関する共同研究を積極的に実施している。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
「脳内神経伝達機能診断を目的とする新規放射性診断薬の開発と診断法の確立」 ・ 「甲状腺癌の内用放射線治療薬剤の動態制御」 を放射線医学講座と、 「腫瘍の診断・治療を目的とする放射性医薬品・抗体標識試薬の開発」 を放射線医学講座・病理学第二講座と、 「パーキンソン病モデルラットを用いる脳神経機能測定」 を精神医学講座と、 「扁側虚血脳モデルラットの脳血流評価」 を産婦人科学講座と、 「血清蛋白結合性薬物を置換剤とする薬物動態制御」 ・ 「核医学診断技術を消化管内移行性の指標として利用した経口製剤の投与設計」 を放射線医学講座・附属病院薬剤部と、 「宮崎県産シラスを材料とする多孔質ガラスにより調製した膜乳化製剤の安定性と体内挙動」 を附属病院薬剤部と共同で研究した。
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
「脳代謝機能測定に用いる放射性ハロゲン標識診断薬の部位選択的固相化標識法の開発」 を米国国立衛生研究所 (National Institutes of Health) と共同体制で取り組んできた。
 また、 「脳・心筋代謝機能の画像診断を可能にする新規放射性診断薬の開発」 を京都大学・福井医科大学・東京理科大学と、 「癌の免疫核医学治療を目的とする腫瘍部位解裂性ヨウ素標識試薬の開発」 ・ 「腫瘍特異的代謝亢進に基づく癌の内部照射治療を可能にするヨウ素標識試薬の開発」 を京都大学・千葉大学との共同で実施した。 民間企業とは、 「標識α-ハロゲノアルキル芳香族アミノ酸およびこれを用いる標識試薬」 は (株) 第一ラジオアイソトープ研究所に、 「血漿蛋白質に結合性を有する薬剤の投与方法」 は日本メジフィジックス (株) に支援を受けて研究を実施し、 各々の成果を特許出願した。
3. 地域との連携
 上記 「宮崎県産シラスを材料とする多孔質ガラスにより調製した膜乳化製剤の安定性と体内挙動」 に関しては、 宮崎県工業技術センターとの情報・技術提携の元で推進した。

4. 国際交流
 平成10年6月より2年間、 フィリピン国籍の留学生を日本学術振興会外国人特別研究員として受け入れて研究指導にあたり、 その間の研究業績により、 平成11年10月の日本核医学会アジアオセアニア優秀研究者賞受賞に導いた。

5. 外部資金の導入状況
資金名  平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 1 件 2 件 3 件 3 件
1,200千円 4,500千円 3,300千円 6,000千円
奨学寄附金 9 件 5 件 1 件 1 件
850千円 1,500千円 300千円 300千円
財団研究費 1 件
1,000千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 教育に関しては、 学部教育への関与が少なかったが、 平成12年度より、 「放射線生物学」 を単独で担当することとなった。
 大学院の講義・演習では、 「研究方法論」 の他に12科目の担当を見直し、 平成12年度より、 担当を5科目に変更した。 大学院の研究指導においては、 指導担当の学生はいないものの、 関連領域の研究を希望する学生には、 直接的に研究指導し、 学位認定に必要な成果を上げさせてきた。
 研究では、 自らが推進してきた研究課題に関する成果によって、 平成10年に第36回日本核医学会賞を受賞するなど高い評価を得た。 また、 平成10年より受け入れて研究指導した日本学術振興会外国人特別研究員が、 新たな脳内ドーパミン作働性神経終末機能診断薬の開発に成功し、 その成果により、 日本核医学会優秀若手研究者賞を受賞した。
 その他、 学内外の研究者と広く共同研究を実施し、 多くの成果が得られている。 民間企業との応用研究では、 医療現場において有用性が期待される新規の放射性診断薬の調製法や医療経済効果が期待される新たな薬剤の投与方法を開発し、 特許を出願した。 研究費の取得状況も良好で、 それぞれの研究課題に対する所期の成果を得てきており、 当初の目標は充分に達成し得たものと考える。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 上述した臨床医及び医学研究者養成に対する教育担当をより明確に果たしていきたい。 カリキュラムとは別に、 学内講習会の開催等も有効な手段であると考えられる。 その観点から、 平成12年度より、 講師の派遣等の宮崎大学との連携を検討している。
 研究に関しては、 今後も現在のアクティビティーを維持するよう努力するとともに、 さらに多くの研究者との意見交流に努め、 専門外であっても医学研究に自らが寄与できることには、 積極的に関与していきたいと考えている。

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