4 臨 床 医 学 講 座

整形外科学講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
教 授  田島 直也 (長崎大学出身)  専門分野;脊椎・脊髄外科、 スポーツ整形外科
助教授  帖佐 悦男 (大分医科大学出身)  専門分野;関節外科、 スポーツ整形外科、 腰痛症
 卒前教育では、 脊椎、 四肢の運動器を対象とする整形外科学の病態、 疾患の検査、 診断、 治療に対する理解を得ることを目的としており、 4年次の系統講義で基本的理念の習得を、 5・6年次の臨床・特別講義、 臨床実習で個々の症例の診断、 治療法の考え方について医師としての基本的態度を指導する。
 卒後教育では、 整形外科全般における知識、 技術を修得し、 日本整形外科学会入会後7年目に行われる日本整形外科学会専門医取得を一般研修終了の目安としている。 さらに、 それぞれの専門分野にて研鑽を行い、 発展の一躍となることも重要である。 また、 臨床に応用できる基礎的研究にも重点をおき、 臨床、 基礎、 いずれにも精通した医師をめざしている。
 さらに患者およびスタッフとのよりよい人間関係を得ることのできるような医師としての人間性確立も大事な目標の一つである。
(2) 研究の特色等
基礎的研究
1) 脊椎・関節のバイオメカニクスの研究 (有限要素法、 インプラントなど)
 研究指導者:田島直也 研究者:帖佐悦男、 柏木輝行、 園田典生、 松元征徳、 後藤啓輔ほか
 万能試験機、 有限要素法を用いて、 外力に対する生体の応力反応に関する研究を行っている。 また、 新たな脊椎固定器具、 脊椎スペーサー、 吸収性インプラントなどの研究、 とくに、 セメントレス人工骨頭の初期固定の実験および生体内吸収材料の脊椎固定に関する実験を猿を用いて行い、 インプラントを作製している。
2) スポーツ整形外科の研究 (筋中酵素の検討や膝靭帯のメカノレセプターの研究など)
 研究指導者:田島直也  研究者:樋口潤一ほか
 持久性運動における筋中酵素の研究やスポーツ活動における靭帯、 腱、 筋等の損傷機転と修復機能を解明し安全なスポーツ活動について啓蒙する。 また、 関節固定が及ぼす影響として膝前十字靭帯のメカノレセプターを研究し、 新しい知見の発見に研鑽している。
3) 生体・情報制御システムの研究 (姿勢制御、 動揺など)
 研究指導者:田島直也   研究者:田邊龍樹、 作 良彦ほか
 姿勢を生体のゆらぎ現象としてとらえ、 動的高次活動の解析を、 正常の成人に対して既に行っているが、 年齢因子や性差による違い、 また脊椎疾患において、 病的状態における姿勢制御の解明を行っている。
4) 歩行分析、 3次元動作解析に関する研究
 研究指導者:田島直也   研究者:川越正一、 渡邊信二ほか
 大型反力計、 筋電図、 3次元動作解析装置を用いて、 歩行、 立ち上がりにおける重心動揺、 各関節の連動等に関する研究を行い、 疾患 (脳性麻痺、 下肢人工関節等) の術後評価の一つとして応用している。
 以上の基礎的研究テーマを中心にチームを形成し、 研究活動を行っている。 その他、 筋電図による電気生理学的研究、 骨塩定量による骨粗鬆症の研究なども行われている。
 臨床研究は、 10以上のテーマについて研究を行っている。 頚髄症に対する脊柱管拡大術の手術法の検討、 spinalinstrumentation の開発を含めた脊椎固定術の検討、 特発性側彎症の検診や長期フォローアップのほか、 変形性股関節症、 スポーツ整形外科、 手の外科領域の臨床研究などを行っている。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
 平成10年より第1内科との共同で、 骨・関節軟骨・関節滑膜等におけるアドレノメデュリンの同定およびその役割について研究を行っている。
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
 熊本大学発生遺伝学教室との共同で、 骨・関節軟骨・関節滑膜等における遺伝子学的研究を行っている。
 スイス (ベルン大学) との共同研究で股関節疾患の病態解明および臨床成績の研究を行っている。
 アメリカ (アイオワ大学) との共同研究で生体力学的研究を行っている。
 タキロン株式会社との共同研究で脊椎椎体固定材料としての吸収性インプラントの共同研究瑞穂株式会社との共同研究で固定性と可動性を有する脊椎インスツルメントの開発を行っている。
 日本股関節財団などとの共同研究で人工股関節の開発研究を行っている。
 MX1研究会などとの共同研究で人工股関節の開発研究を行っている。
3. 地域との連携
 県民に対する啓蒙活動としてスポーツ医学、 整形外科的変性疾患、 骨粗鬆症、 リウマチ等に関する各種講演を行っている。 また宮崎県健康スポーツ委員会、 宮崎県体協スポーツ科学委員会等を通じて地域活動を行い、 宮崎県国体選手や高校スポーツ選手のメディカルチェックを行い、 基礎データを基にスポーツ障害の予防・早期発見・治療に役立てている。 更に宮崎県予防医学協会を通じて側彎症検診にも協力している。

4. 国際交流
 バングラデシュからの留学生 (Dr. Rashedul) を受け入れ、 椎間板の生化学的研究における指導および補助を行っている。

5. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 1 件 1 件
1,100千円 500千円
奨学寄附金 20 件 17 件 19 件 25 件 23 件
 11,600千円  12,880千円  15,250千円  23,300千円  17,500千円
受託研究費 3 件 3 件 4 件 3 件 5 件
394千円 63千円 3,010千円 3,623千円 4,205千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
(取組) 卒前教育に関しては、 系統・臨床講義において、 より最新の情報を可能な限り学生に講義できるよう各専門分野の講師を選出し、 学外からも招聘するよう務めている。 研究に関してはそれぞれの研究担当者が診療、 教育の空いた時間や時間外を利用しながら熱心に取り組んでいる。 (達成度) より充実した講師陣により、 内容のある教育ができている。 基礎研究では有限要素法、 歩行分析、 スポーツ整形に関しては既に成果を挙げ学位論文および英文にて発表を行っている。 (課題・反省・問題点) 基礎研究の成果を臨床へ応用することが臨床講座としての最終的な目標である。 有限要素法による頚椎、 腰椎のバイオメカニクスに関しては臨床応用が可能な段階まで到達しつつあるが、 その他の項目に関しては現時点では臨床応用の段階に十分に到達しているとは言えない。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 より効率的に研究成果を挙げるためには、 充分な研究計画の検討および研究内容の役割分担が重要である。 そのため当講座においては定期的にリサーチカンファレンスを開催し、 各研究グループ毎のプロトコールおよび進行状況の検討会を行い、 教授、 助教授を中心に研究指導を実施している。
 現在の当講座における研究の中心はバイオメカニクスである。 今後は脊椎、 骨・関節の応力解析および吸収材料の生体内における変化の解析をさらに進め、 生体が受ける様々な外力に対する反応を解明することで、 臨床での骨折の予防、 より効率的な手術法、 また生体反応の少ない充分な強度を持つ固定材料の開発に努めていきたい。

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