4 臨 床 医 学 講 座

外科学第一講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 臨床医学は基礎医学的手法のうえにうち立てられている。 臨床の学習が基礎医学やまたその基礎にある物理学、 化学、 生物学、 数学をおろそかにしてなされれば底の浅いものになり、 そのような学習だけをした人は将来臨床医学を組み立てていくことができにくいし、 応用のきかない知識の習得だけに終わると言えよう。 当講座では、 基礎医学、 諸科学の深い知識に根ざし、 論理的、 科学的に臨床医学を組み立て、 常に international を意識して学問的に考える医師の育成を主眼とした教育を行っている。 これは、 臨床における問題を整理し、 深く考え学んでいこうとする姿勢、 そして、 研究生活で修得される学問的基盤と創造性、 論理性によって裏打ちされていくものと思われる。
 次に、 診療の対象は、 病気に悩む人間であることを理解しなければならない。 患者から科学的態度で学ぶことと、 患者に博愛の情で肉親に対するように接することが最も重要な二大教育目標である。
 このような理念のもと、 学生講義には当講座の常勤スタッフに加え各分野における leader を非常勤講師として招聘し、 正確な medical term、 anatomy といった外科学の基礎から教育するようにしている。 また、 臨床実習においては、 学生に受け持ち症例を英語で presentation させ、 これを教授、 講師陣が直接聞いて評価するという方式をとっている。
(2) 研究の特色等
 外科学第一講座は一般外科、 腹部外科領域の問題を中心に研究を行って来た。 研究の内容は基礎的分野、 臨床的分野とを問わず、 臨床医学にとって意義のある問題をとらえて創造的な研究をするように心がけており、 このことが外科病態代謝の解明、 疾患の治療に資する道であると考えている。 当教室は開講当時、 肝胆膵の分野における基礎的研究から始めた。 テーマとしては、 膵液中蛋白質、 酵素の生化学的研究、 アルコール性慢性膵炎および慢性膵障害の本態と病因の研究、 肝細胞におけるステロール代謝の研究、 消化管内細菌による胆汁酸変換の研究、 膵癌研究、 肝細胞膵細胞分化の研究、 Vitamin D3代謝の研究が行われてきた。
 この5年間、 教室では cholesterol から胆汁酸および Vitamin D3への代謝機構の解明に多くの力を注いできた。 これらの代謝における律速酵素の活性測定法の確立、 精製およびそれから発展する分子生物学的アプローチを通して、 脂質の消化吸収、 カルシウムの体内調節などを明らかにし、 ひいては胆石症、 高脂血症、 動脈硬化、 高血圧、 病態栄養、 骨粗鬆症、 悪液質、 創傷治癒など各種病態の本質に迫ることを目標としている。 胆汁酸代謝に関しては、 7α-水酸化酵素、 3β-還元酵素、 12α-水酸化酵素、 5β-還元酵素、 27-水酸化酵素について、 Vitamin D 代謝に関しては、 1α-水酸化酵素、 24-水酸化酵素についての研究が行われている。 また、 培養膵癌細胞株を使った癌転移に関する研究もしている。
 これらの研究が、 広く外科学へ有用な知見となって実を結んでいくことを企図している。
 極めて臨床的な研究は、 臨床の項に記した。
2. 共同研究
(1) 学外 (外国、 他の大学等)
 宮崎県工業試験場との共同研究で開発してきた抗癌剤封入 W/O/W emulsion の肝細胞癌への臨床応用をすすめており、 その有効性が証明されてきつつある。 また、 この治療法についての基礎的研究も動物実験を通じて行われている。
3. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 3 件 4 件 2 件 1 件 2 件
4,500千円 7,900千円 1,800千円 1,700千円 3,900千円
奨学寄附金 22 件 21 件 23 件 22 件 25 件
 29,950千円  24,950千円  24,300千円  22,750千円  23,400千円
受託研究費 6 件 8 件 4 件 4 件 3 件
7,010千円 8,893千円 9,261千円 8,732千円 6,732千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 学生教育に関しては、 系統講義、 臨床講義とも充実した内容のものが行え、 学生の理解度もおおむね良好と思われる。 臨床実習においては、 適当な症例数を学生に経験させることができ、 学生の熱意も感じられた。 英語での presentation は、 学生にとってかなりの負担になっていたようであるが、 正しく手術方法などを欧語で表現する訓練になると学生も理解し評価してくれていると思う。 毎週かなりの時間を裂いて学生の評価を行っている。 より深く患者の病態について学生と discussion すべきであるが、 それはあまりにも多くの時間を要するため不可能であった。 学生の中には基礎的学力の欠けている者もあると考える。
 研究に関しては徐々に成果が学会発表や論文となって表れつつある。 しかし、 地域医療への貢献を行うためにかなりの時間を裂かれ、 研究に没頭する時間が少なくなるという問題があった。 いかに研究に集中し、 効率よく実験を行うかが課題である。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 教育に関しては、 当講座での教育方針の重要性を学生に理解させ共感を得ることにより、 より学習に積極性をもたせることができると思われる。 低学年で英語力を身につける方策も考えるべきではないか。
 研究に関しては、 現在の流れをさらに押し進め、 基礎に根ざした普遍的な研究成果を出して行きたい。

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