4 臨 床 医 学 講 座

臨床検査医学講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 臨床検査医学の教育の到達目標は臨床検査の臨床診断における位置付け、 重要性の把握を主体においている。 その方法として臨床講義と臨床実習を実施している。 臨床講義は、 講座構成員だけでなく、 外部からの非常勤講師を依頼し、 臨床検査にまつわるできるだけ新しい話題を提供していくように心がけた。 臨床検査は固定的なものではなく、 実施される検査、 検査から得られる情報は刻々と更新されているという事を再認識させる。 臨床検査を考える際に、 診断を行なう上で何が最善の選択か判断できる情報を与え、 学生の意識に定着させることを目的とした教育内容を盛り込んでいくように考えてきた。 同様の考えから、 4年、 5年次の臨床実習においても診断における臨床検査の意義を的確に把握できるような教育内容を計画してきた。 患者に接して問診により得られる情報に基づいてどのような検査を選択するのか。 実際にいかなる手法で検査を行うのか、 得られた検査値をいかに解釈し、 診断に生かしていくのか。 最終的には各々の段階で臨床検査を十分に活用できるように、 具体的な臨床例を提示しながら検討していく過程で学生の臨床検査への理解が定着することを目指した。 検査実習においては病院検査で行なわれているいくつかの基本的検査手技を学生自らが実際に行い、 得られてくる検査データを解釈し診断を考えていく。 その一連の流れを各人が把握できるように配慮した実習を進め、 教育の質向上を心がけてきた。
(2) 研究の特色等
 病院検査部との関係から講座における研究は、 その到達目標として直接的、 間接的に臨床検査及び臨床診断学の発展に貢献するということを挙げ、 それに見合った研究課題を主体に考えてきた。
過去5ヵ年の間に甲状腺疾患、 感染症、 代謝疾患、 腫瘍などに関わると考えられる研究を生化学的、 免疫学的、 分子細胞学的な手法を用いて独自性のある研究を目指してきた。 特に甲状腺疾患研究の成果の一部は実際に新しい検査法の開発につながり、 検査キットとして確立された。 他の疾患に関しても、 臨床診断を行なう上で通常用いられる検査以外に利用できる新たな指標を得られないか考慮しつつ研究を行っている。
 臨床検査自体が多岐にわたるため、 その研究対象は様々なものになる。 遂行することで早期に成果が得られ、 臨床診断に役立つレベルから臨床へのフィードバックがすぐには見込めないレベルの研究まで、 常に複数の解析を同時進行させ、 研究成果が臨床面で効率よく利用できるように考慮してきた。 そのため、 病院検査部の技師の協力も得ながら日常的な検査業務の中で見落としがちな検査値の些細な異常について、 診断につながる有効な情報がもたらされないかという問題意識をもち、 研究の素材の収集にも取り組んでいる。 研究組織としては最低限の人員で効率の良い研究を行なうことに努めてきた。 その結果の研究実績は別紙に譲るが、 病院検査部の協力もあり、 かけた労力に見合っただけの成果があげられていると思われる。
 研究費に関しては、 現状の研究を維持できるほどには確保できているが、 今後独創性のある研究を計画し、 より多くの研究費が獲得できるようにすることが必要であると考えている。 研究棟及び病院検査部の一部に研究スペースを確保できている現状は満足いくものであるが、 そこに配備される設備は、 生化学的、 免疫学的、 分子生物学的研究を賄えるほどには整っていない。
 今後はそれらをこれまで以上に有効に利用しながらセンターの設備を併用する研究計画が必要になると思われる。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
 第二解剖学講座とラットのヨードポンプあるいは昆虫細胞のゴルジ体局在タンパク質解析に関して共同研究を行った。 また、 DNA 鎖切断活性を持つ糖由来生成物の細胞障害作用の分子生物学的解析、 および疾患の発症との関連についての検討を衛生学講座との共同研究で行なった。
3. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 1 件 1 件 1 件
1,900千円 1,500千円 500千円
奨学寄附金 4 件 8 件 6 件 3 件
 2,600千円  5,500千円  3,400千円  1,800千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 これまでの活動としては教育、 研究ともに臨床診断に貢献できる検査医学を確立するという基本方針に基づいた取り組みを行なってきた。 教育面では臨床診断における検査の位置付け、 およびその重要性、 発展性について臨床講義全体を通して強調してきた。 そして、 それを学生が理解し実践していけるような臨床実習を目指してきたが、 学生の多くにその意図は汲み取ってもらえたものと思う。
 研究面に関しては臨床検査の発展にとって重要なものを厳選して実施してきた。 それでも研究の最終的な目標を臨床診断へのフィードバックと考えるとその達成度は過去5年間に関しては十分でないように思われる。 現在行なっている研究自体はしかる後に成果として報告できるが、 その性質上、 即時に診断に多大な貢献はできないと思われるものもあり、 今後更に研究の領域を再点検し、 即効的な研究も意欲的に発展させていく必要があると思われる。
 これまで臨床診断における検査の重要性について主張してきたが、 一方で診療サイドへの関わりがまだまだ不十分だったように思われる。 臨床検査の独断とならないように考える必要があると思われる。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 将来的には大学独立法人化等により、 教育研究環境が大きく変動する可能性が出てきている。 そうした状況下であっても医学部が存在する限り、 臨床診断と検査との関連についての考え方は大きく変わるものではないはずである。 今後も教育・研究ともに将来的に臨床面にメリットがあると考えられるものを厳選してより意欲的に取り組んでいく必要がある。
 焦点となるのはいかに効率的に、 省力化して実践していくかということで、 そのために研究課題の再検討、 研究体制の見直し、 研究費の効率的運用等を積極的に実施する。 構成人員等の変動が望めないと思われるので、 無駄のない運営は教育と研究のバランスを取る上でも重要だと考える。
 病院検査部との関係も不確定要素を含むため、 研究素材の確保についても流動的に対応できるようにしておくことが肝要と思われる。 また、 診療に携わる医師からの臨床検査への要望に即した研究についても今後考慮することが必要と考えられるので、 その方面との意思疎通をできるだけ密になるように心がけ、 情報交換が可能な体制作りが必要かと思われる。 臨床診断に貢献できる効率的で多くの情報を提供できる検査を教育面・研究面でアピールしていきたい。

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