4 臨 床 医 学 講 座

産婦人科学講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 Student physician は医療チームの一員として外来診療、 病棟診療、 手術、 分娩に積極的に参加し、 教育担当の医師の指導のもと実際の医療行為を行なったり手助けしたりする。 通常、 担当医師1人につき学生1〜2名である。 また不妊症の採卵や分娩には時間にかかわらず立会い、 臨床現場の緊張感を体験する。 病棟では研修医と行動を共にし実際の医療現場で起っているさまざまな業務に立会う。 また、 毎朝1〜1.5時間行なわれるカンファレンスに出席し、 重要な医療方針の決定にも参加する。 学生の評価は faculty 全員が学力、 人間性、 適性などの7項目に関して5段階評価を行なう。
 Faculty に対しては、 毎朝1〜1.5時間行なわれるカンファレンスで治療方針に関する standard の確認を行なうことで faculty development を図っている。
 研究に関する会議は1/週、 午前中の約2時間で、 研究生、 医局員、 学生が参加し、 個々の臨床研究、 基礎研究の現状が討論される。 この場で研究の立案、 進め方、 統計処理、 結論の導き方、 論理の展開、 論文の記載法、 などが個別に話し合われ、 その討論自体が具体的な教育となっている。 また臨床の場ではひとつひとつの症例を十分に考察し、 文献検索をもとに検討し、 必要に応じて症例報告を行なうよう教育している。
 癌に関しては主に細胞診指導医が、 不妊症、 周産期、 婦人科内分泌に関してはそれぞれの専門家が中心となり教育を総括している。
(2) 研究の特色等
 基礎研究では、 低酸素症や低酸素-虚血が胎児、 新生児に及ぼす影響に関して、 生理学的、 生化学的、 組織学的に探究している。 方法として、 羊や山羊の胎仔を用いた生理的慢性実験モデルと、 新生仔ラットを用いた低酸素虚血脳障害モデルを用いている。
 新生仔ラットの脳障害モデルでは、 平成7年に脳障害と HSP, MAP2の変化を経時的に観察することから始まり、 平成8年には体温の影響、 日令の影響を調べ、 また新たに超音波画像と組織所見の相関を検討した。 平成9年には低酸素虚血障害と耐性、 マグネシウムの影響、 発育因子の動きなどの研究が加わり、 平成10年には"pre-conditioning"の効果、 microsphere を用いた血流の検討も加わった。 超音波画像での経時的変化も観察された。 平成11年からは組織学的変化と行動の関連へと研究が展開している。
 羊や山羊胎仔モデルでは平成7年に長期低酸素と胎児循環、 マグネシウムと胎児循環の研究がはじまり、 平成8年には臍帯 occulusion による低酸素-循環障害の研究が加わった。 平成9年から10年には24時間低酸素とカテコラミンや血流分配、 臍帯 occulusion と脳障害、 呼吸様運動、 多臓器不全、 心拍数パターンとの関連、 平成11年にはマグネシウムと臓器血流量、 100日低酸素と子宮筋、 FBS と心筋保護などの研究が開始した。
 臨床研究では平成7年に産褥高血圧と hNAP、 妊娠と糖尿病、 妊娠中毒症などの研究が続行された。 糖尿病では血糖管理時期と発育、 奇形の問題などへと展開している。 妊娠中毒症では胎児モニタリング、 発育遅延、 胎児仮死、 さらには平成10年度からは ATIII の病態への関与を胎盤を用いて検討しはじめた。 平成8年には周産期とウイルスの研究が行なわれ、 特に CMV と脳障害との関連を詳細に検討しはじめた。 平成9年から多胎の研究が始まり、 1卵性双胎、 中でも予後の悪い1絨毛膜双胎の予後不良因子を後方視的に検討し、 それを元に平成10年には新しい予後不良因子スコアを作成し、 その後現在まで前方視的検討を行なっている。 平成10年から宮崎県の周産期症例検討会を開始し、 県内の主要施設が集まり、 周産期医療の現状把握と向上に努めている。 また、 生殖生理における内分泌学的研究も平成7年以降継続しており、 平成10年以降、 ATIII の抗凝固以外の作用に関してプロテオグリカンに注目し研究を進めている。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
解剖学第一講座:低酸素虚血性脳障害と免疫組織学的検討
微生物学講座:周産期とウイルス、 特に脳障害との関連
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
アメリカ University of California, Irvine:羊胎仔の臍帯 occulusion モデルを用いた研究
アメリカ University of California, Irvine:臍帯血単核球 Interleukin
アメリカ University of California, San Fransisco:羊胎仔の臍帯occulusionモデルを用いた研究
アメリカ Loma Linda University: 長期間低酸素と子宮筋、 心筋障害
アメリカ Rochester University: マウス心筋の発達生理
カナダ University of Western Ontario:羊胎仔の臍帯 occulusion モデルを用いた研究
東北大学医学部神経内科 低酸素虚血性脳障害の研究
岡山大学医学部神経内科 低酸素虚血性脳障害の研究
福岡大学薬学部 ラット脳障害と行動、 記憶
鹿児島大学農学部獣医学科 山羊胎仔の慢性低酸素血症、 マグネシウムの研究
鹿児島市立病院 妊娠糖尿病、 妊娠中毒症、 その他の周産期の臨床統計
3. 地域との連携
 地域と連携した研究としては、 平成10年から周産期死亡症例検討会を開催し、 主要6施設 (3県立病院、 国立都城病院、 市郡医師会病院) における周産期医療の review、 統計などを行ない、 県 (行政) に報告する一方、 臨床的な研究も行なっている。 また、 平成10年から1絨毛性双胎の前方視的研究を開始した (市郡医師会病院、 古賀総合病院、 鹿児島市立病院など)。 このような地域との密接な連携の結果、 平成11年度の宮崎県の周産期死亡率は全国でベスト2となった。

4. 国際交流
 アメリカ、 カナダ、 ドイツ、 オーストラリア、 ペルー、 中国と国際交流を行ない、 平成7年には1人、 平成8年には2人、 平成9年には2人、 平成10年には4人、 平成11年には2人が当講座で講演した。 平成10年には日独産婦人科学会サテライトシンポジウムを当講座で開催した。 逆に、 当講座からもそれぞれの国での講演会や講義などに教室員を派遣しており、 相互に国際交流を図っている。

5. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 1 件 (分担者)
700千円 100千円
奨学寄附金 19 件 23 件 20 件 17 件 22 件
 12,080千円  13,750千円  12,090千円  8,650千円  13,380千円
受託研究費 7 件 7 件 6 件 7 件 6 件
2,101千円 4,687千円 5,405千円 3,225千円 1,934千円
厚生省研究費 3 件 3 件 3 件 2 件 2 件
3,600千円 3,520千円 2,650千円 1,800千円 1,500千円
おぎゃー献金 1 件 1 件 1 件 1 件
研究費 1,250千円 1,250千円 1,700千円 1,200千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 基礎研究、 臨床研究ともに国内外での評価は高く、 国内外の施設と共同研究も行なっており、 世界トップクラスの研究を発表しつづけてる。 また学会活動も国内、 国際を問わず幅広く、 講演、 シンポジウム、 一般講演など積極的に参加している。
 胎児新生児の臓器障害、 特に脳障害を中心に検討しているが、 病態には低酸素、 低酸素虚血、 ウイルス感染、 サイトカイン、 その他が複雑に関与しており、 その解明にはまだまだ多くの研究を要する。 それぞれの分野で継続して研究する必要がある。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 現在行なっている基礎的、 臨床的研究活動は今後も今の活動性を維持しつつ、 展開していく。 今後の展望として重要と考えているのは若手研究者の育成であり、 基礎研究も臨床研究ともにでき、 しかも国際的に活躍できる次世代の育成と教育に引き続き取り組む予定である。

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