4 臨 床 医 学 講 座

眼科学講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 卒前教育は、 講義と臨床実習に別れている。 講義では医師国家試験内容に準拠した系統講義と 「遺伝」 「網膜の生理」 「手術」 「ロービジョンケア」 等一つのテーマを深くほりさげた特別講義を行っている。 目標としては、 (1)視覚器の形態と機能を疾患との関連において理解する。 (2)基本的眼科診察法の意義と方法を理解する。 (3)代表的眼疾患について、 原因、 病態、 症状、 診断、 治療、 予後を学ぶ。 6年生前半では再び国家試験に対応した 「まとめ」 の講義を行っている。
 臨床実習では、 「検眼鏡で眼底中心部」 が観察できることを第一の目標として2週間の実習を行っている。
 また一つのテーマにしぼって、 レポートを作成することにより眼科学に興味をもてるように配慮している。
 卒後教育は、 大学病院と関連病院の協力により、 5年間で眼科専門医制度にのっとった教育が行われるようにプログラムを組んでいる。
(2) 研究の特色等
(1) 網膜の電気生理学的研究
 直井信久、 丸岩 太、 中崎秀二、 竹下千佳子が従事している。 温血動物であるニワトリ網膜-色素上皮-脈絡膜 in vitro 標本を用いて、 色素上皮細胞内記録や網膜内記録を微小電極法で行っている。 今までにアデノシン、 重炭酸イオン、 低酸素負荷などの網膜電図への影響を検討した。 網膜電図の微小電極を用いた研究は全国の眼科学教室の中でもトップレベルの研究である。

(2) 虹彩括約筋における一酸化窒素の研究
 直井信久を指導者として中馬智巳、 中馬秀樹が従事している。 今までに一酸化窒素が瞳孔括約筋における neuromodulator であるか、 ウサギをもちいて in vitro, in vivo の両方で実験を行い、 またその細胞内メカニズムを検討して NO-cGMP 系が働いていることを解明した。 また実験的ぶどう膜炎で iNOS によって NO が産生される過程を研究した。

(3) 緑内障の分子生物的研究
 緑内障の優性遺伝家系を研究し、 TIGR/myoc 遺伝子に新しい変異があることを発見した、 これは西日本で遺伝子異常が発見された初めての緑内障家系である。 (研究指導者・直井信久、 研究者・横山顕子)

(4) 網膜色素変性の分子生物学的研究
 優性遺伝性の網膜色素変性の大家系を連鎖解析し、 X-染色体上に link していることを見出した。 その候補遺伝子の中から、 RPGR 遺伝子の新しい exon に変異があることがわかった。 今まで RP3といわれる X-染色体性色素変性症の多くは、 遺伝子異常がわからなかったが、 今回の新しい exon を解析することにより、 今後多くの変異が発見される可能性がある。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
 研究の特色で述べた(2)の一酸化窒素の研究は薬理学教室との共同研究である。
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
 研究の特色で述べた(1)の網膜の電気生理学的研究はカリフォルニア大学サンフランシスコ校 (UCSF) 生理学教室、 ロイ スタインバーグ教授、 UCLA 眼科のロンゲルモア博士との共同研究である。
3. 地域との連携
 直井信久は宮崎県内に網膜色素変性の患者の会を組織し、 約150名の多数者が参加している。 年数回集まって研究会、 親睦会、 相談会を行っている。
 宮崎医大眼科研究会を年2〜3回開催し、 地域眼科医の研修にも貢献している。

4. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 1 件 2 件 4 件 5 件 2 件
1,000千円 3,000千円 7,600千円 5,800千円 1,600千円
奨学寄附金 22 件 27 件 22 件 31 件 25 件
 10,530千円  16,692千円  6,046千円  12,776千円  9,596千円
受託研究費 1 件 1 件
143千円 429千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 教官全員が研究に取り組んだが各々外来、 病棟、 手術など日常診療に多くの時間をとられるため、 学会で発表を行っても原著となっていないものもみられた。 また原著も英文でなく和文のものが多くみられたのは今後の課題としたい。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 今後研究並びに教育の質の向上が必要である。 これには経費、 設備の改善と人的資源の確保が重要であると考える。 研究経費としては、 この5カ年間で19件の文部省科学研究費が採用されたが、 今後は当講座の文部教官全員が研究費を獲得できるようになお一層の努力が望まれる。 また文部省科研費以外のケース (厚生省、 科技庁、 民間資金) からの資金の導入にも努力したい。
人間資源については、 教官の全員が、 外来、 手術に多くの時間がとられるため、 研究にさく時間の捻出に苦労しているのが現状である。 学生に眼科学に興味をもたせる教育をおこなうことにより、 マンパワーを充実させ、 より研究にさく時間がとれるように努力したい。

[ 戻 る ]