4 臨 床 医 学 講 座

泌尿器科学講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 泌尿器科学は、 尿路 (腎、 尿管、 膀胱、 尿道) の疾患、 男性性器 (精巣、 精巣上体、 精管、 精嚢、 前立腺、 陰茎、 陰嚢) の疾患および副腎を主とする内分泌腺の疾患を対象とする臨床外科医学であり、 近年の ME 機器等の発達によりその診断・治療学の大きな変革が行われている。 第4学年における系統講義および第5、 6学年における臨床講義の履修を通じて泌尿器科疾患の何たるかを認識し、 来るべき臨床実習にそなえて診断法と泌尿器科診療の特徴を理解する。 臨床実習では病歴のとり方、 独特の検査および治療について学び、 また対象とする疾患の性質上、 とくに患者のプライバシー保護や惻隠の心を持つことを学ぶ。
(2) 研究の特色等
 泌尿器科は臨床系講座であり、 その研究テーマは基礎的研究と臨床的研究に分かれる。
 基礎研究としては、 大きく尿路性器腫瘍、 尿路性器感染症、 尿流動態研究の3つに分かれている。 尿路性器腫瘍に関しては、 蓮井は病理学的に膀胱腫瘍の進展と転移の基礎的研究を行い、 文部省在外研究員として英国に留学した。 井手は国立がんセンターに国内留学し、 前立腺癌の遺伝子治療と前立腺癌の増殖における骨形成蛋白 (BMP) 信号伝達系に関する研究を行い、 結果を Oncogene, Human Gene Therapy, Cancer Research, Molecular Carcinogenesis の各外国雑誌に発表した。 井手は本研究に関連して現在米国 UCLA に平成11年度より留学中である。 尿路性感染症に関しては、 濱砂は膀胱炎の発症メカニズムを host 側のファクターを主眼に研究し、 マウスサイトメガロウイルス感染マウスにおける尿路への細菌感染実験を行い、 ウイルス感染が細菌性尿路感染症発症の誘因の1つであることを報告している。 また、 MRSA に対する抗菌剤の使用法として、 in vitro における fosfomysin と各種抗菌剤との併用効果を示している。 下部尿路の尿流動態の研究としては、 山口は家兎の尿道平滑筋の薬理学的実験を行い、 各種α1 blocker の尿道選択性に関する検討を行った。 本実験は現在の前立腺肥大症の治療の基礎となっている。
 臨床研究では、 尿路性器腫瘍に関し、 蓮井は urokinase-type plasiminogen activator と表在性膀胱癌の予後との関連を検討した。 また、 前立腺癌に関して、 前立腺癌の再燃と PSA、 MIB−1、 P53と関連を検討している。 加えて、 九州における腎盂尿管腫瘍の臨床検討を九州泌尿器科共同研究として行い、 腎盂尿管腫瘍症例を475例集め、 わが国で最も大きな集団の臨床検討として評価されている。 尿路感染症に関しては、 濱砂らは開講時より尿路感染症起炎菌の薬剤感受性調査を行っており、 一連の結果は一医療機関における細菌の薬剤耐性化の動向を示している。 また、 院内感染症の感染源として尿の重要性を検討し、 院内感染症予防と術後感染予防の指針を示した。 性感染症に関しては、 宮崎県泌尿器科医会との共同して、 宮崎県における性感染症動向調査を継続している。 小児泌尿器科に関しては、 山口、 長野が継続して停留精巣、 尿道下裂、 先天性水腎症の調査を行っており、 その症例数と詳細な検討は多くの文献で引用されている。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
:病理学第二講座、 微生物学講座との共同研究が進行中
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
 九州泌尿器科 (九州内11大学との臨床共同研究が進行中)、 国立がんセンター
3. 地域との連携
  宮崎県泌尿器科医会と共同で、 宮崎県における性感染症の動向調査を行っている。
  前立腺癌が増加しているため、 この啓蒙活動として、 一般向けの講演会を随時開催している
  その他、 県内の看護学校、 消防学校における講義等を担当している。

4. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 2 件 2 件 1 件 2 件 1 件
 1,400千円  1,500千円 600千円  3,400千円  1,000千円
奨学寄附金 12 件 9 件 13 件 8 件 12 件
4,950千円 4,200千円 6,750千円 4,450千円 8,500千円
受託研究費 18 件 12 件 13 件 10 件 5 件
1,747千円 695千円  9, 596千円 8,906千円 1,956千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 泌尿器科学講座は医局員数が少なく、 例年大学病院内に在籍する医局員数は10数名程度である。 そのなかで、 それぞれが個々の専門分野を持ち、 基礎研究、 臨床研究と臨床を行っている。 また、 複数専門分野の研究をおこなっており、 1人当たりの研究成果は高いと考えられる。 しかし、 マンパワー不足による研究進行の遅れや研究テーマの少なさは否めない。 すべての医局員が臨床と研究との両者をになっており、 臨床に時間を費やすがために、 研究への時間が少ないことによる研究の遅れを見受けられた。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 当講座における最も重要な課題は、 マンパワー不足である。 当大学入学者に本県出身者が少ないのも大きな理由であろうが、 当教室での研究テーマの少なさなどが、 人員を減少させている理由でもある。 将来的には医局員の増加により、 より多くの研究が行える環境を整備することが重要である。 大学院制度をより活用して、 基礎研究に十分の時間を割けるような講座作りをこころがけていきたい。

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