4 臨 床 医 学 講 座

内科学第一講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 循環器、 高血圧、 腎臓、 消化器の4分野を専門とし、 医学部学生および卒後内科研修医の教育を担当してきた。 学部学生に対して、 これら4分野に関する概説講義および臨床講義を行ない、 学生が主治医や指導医の監督下に外来と入院患者を担当することにより外来・病棟実習を行なってきた。 学部学生の臨床実習では、 主治医や指導医の監督のもと患者の検査や治療に可能な限り学生が参加し、 実際の診療を通して勉強出来る環境を構築してきた。
 また、 卒後の内科研修医に対しては、 特に2年間の臨床研修が卒後教育上極めて重要であるとの認識のもと、 1年目には当大学の3つの内科を4か月ずつローテーションし、 それぞれの内科の専門分野を勉強するシステムをとってきた。 さらに、 2年目研修医は、 内科医として幅広い知識と技術を習得するために、 平成12年度から内科以外の診療科をスーパーローテートすることが決定している。 すなわち、 研修医が、 一般内科医に必要な基本的医学知識や技能を習熟し (generalist の育成)、 患者の立場を十分に考慮した思考と行動が出来き (医師としての人格形成)、 さらに専門的な知識と技能も習得できる (専門性へのモチベーション) 教育環境を整えてきた。
(2) 研究の特色等
 前項と同様に、 循環器、 高血圧、 腎臓、 消化器の4研究グループで構成され、 各グループ主任の指導のもとに、 教官、 大学院生、 医員が中心となり、 それぞれの研究テーマに取り組んできた。 一方、 研究テーマが2グループ以上と関連した内容である場合は、 複数のグループの研究者がチームを作りそのテーマに取り組んでいる。
 研究テーマとして、 レニンアンジオテンシン系、 ナトリウム利尿ペプチド等の循環調節因子やペプチドの研究に取り組んできた。 開講以来、 蓄積された研究結果や技術をもとに、 常に新たな研究の展開を目指している。 特に最近では、 平成5年に北村和雄らが中心となり、 新たな降圧系の循環調節ペプチドであるアドレノメデュリン (AM) を発見し、 全ての研究グループが AM の基礎的臨床的研究に精力的に取り組んできた。 さらに、 平成10年度より、 江藤胤尚が研究代表者となり、 AM の研究に関する文部省科学研究費補助金 「特定領域研究」 が進行中であり、 「2. 共同研究」 の項に後述したように、 学内外の研究施設と共同研究を進めている。
 また、 高血圧と腎臓グループが中心となり、 腸管と腎臓をつなぐ新たな利尿ペプチドとして注目されているグアニリンおよびウログアニリンの基礎的臨床的研究に取り組んできた。 心筋梗塞の発症機序や心臓核医学を用いた虚血性心疾患の研究も循環器グループの重要なテーマであり、 腎臓グループは、 腎臓疾患におけるメタロプロテアーゼの病態生理学的役割を解明すべく研究を進めている。 さらに、 消化器グループの炎症性腸疾患に関する基礎的臨床的研究も開講以来のテーマであり、 いずれの研究も、 これまでの業績目録に示されているように、 国内および海外の医学雑誌に受理されており、 国際的にも高い評価を得ている。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
「研究の特色等」 の項に前述したアドレノメデュリン (AM) の研究に関して、 本学の解剖学第二講座、 薬理学講座、 生理学第一講座、 病理学第一講座、 集中治療部と共同研究を進めてきた。 複数の講座に AM の研究に参加して頂くことにより、 それぞれが専門とする分野の知識、 技術、 疾患患者から得られたデータを共有することが可能であり、 極めて能率的に研究が進められている。
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
 江藤胤尚が研究代表者となり、 「アドレノメデュリンおよび関連ペプチドの生体内での役割と病態生理の分子機構の解明」 の研究テーマに対して、 文部省科学研究費補助金 「特定領域研究 (B)」 の研究費の交付を受けており、 独協医科大学、 東京大学、 東京医科歯科大学、 京都大学、 国立循環器病センター、 産業医科大学と共同研究を進めてきた。 本研究プロジェクトは、 平成10年度より5年間の予定で進められており、 予算額は約8億円となっている。 本研究の班会議を毎年開催しており、 昨年の班会議は公開シンポジウムとして行なわれた。 さらに、 平成12年11月には宮崎にて国際アドレノメデュリンシンポジウムを開催する予定であり、 本シンポジウムでは研究成果の発表のみでなく、 今後の研究をより効率的に進めるために、 国内外の施設間での連携 (共同研究) についても討論される予定である。
3. 地域との連携
 平成9年度から、 老人保健法に基づいた清武町の町民検診に協力しつつ、 清武町における循環器系の生活習慣病の危険因子の動向研究と予防を試みている。 本研究は清武町からの受託研究として現在も進められており、 町民の健康維持と疾病予防を目的としている。 一方で、 本研究では、 同意の得られた検診受診者の血中アドレノメデュリンとナトリウム利尿ペプチドの測定も行なっており、 これらの降圧因子と循環器系生活習慣病の発症との関連を疫学的に検討している。
 また、 当講座は、 常勤および非常勤医師を宮崎県内の主要な医療機関に派遣しているが、 臨床研究を進めるうえで、 当講座とこれらの機関の連携は極めて重要である。 最近では、 アドレノメデュリン (AM) の循環器疾患における病態生理学的意義に関する研究において、 これらの医療機関との連携が円滑に行なわれ、 顕著な研究成果が得られてきた。

4. 国際交流
 最先端の研究を進めるうえで、 海外の研究施設との連携や共同研究は重要である。 さらに、 アジア地域の医学や医療の発展のために、 日本の果たす役割は極めて大きいとの認識のもと、 当講座でも海外留学生の受け入れを検討しつつ環境を整えてきた。 平成7年4月より平成10年3月まで、 バンクラデシュの Dr Khan が招聘外国人研究者として当講座で研究を行ない、 同博士が循環器基礎医学の研究方法を習得したのみならず、 国際的にも高く評価される研究がなされた。 さらに、 平成12年より中国から Dr Cao を研究生として受け入れることを検討中である。

5. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 3 件 6 件 7 件 8 件 7 件
11,800千円 15,900千円 19,100千円 56,800千円 60,000千円
奨学寄附金 27 件 42 件 218 件 33 件 26 件
 22,300千円  29,750千円  36,850千円  21,700千円  19,900千円
受託研究費 13 件 15 件 17 件 15 件 12 件
1,399千円 740千円 8,369千円 7,633千円 9,202千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 医学の進歩に伴い、 卒業までに学生が習得すべき医学知識は常に増加しているが、 臨床実習では、 教官から学生への一方通行の教育とならないように、 討論形式の症例検討に重点を置いてきた。 また、 当科では卒後臨床研修の重要性を認識しつつ、 昭和57年度より本学の他の内科および宮崎県内の研修指定病院間の研修医ローテーションを積極的に行なってきた。 平成12年度より、 本学の全ての診療科間のスーパーローテーションが開始されるが、 本システムは当科がこれまでに行なってきた卒後臨床研修の延長線上にある。
平成7〜11年の5年間、 4つの研究グループがそれぞれの特色ある研究テーマに取り組み、 一方で、 全てのグループがアドレノメデュリン (AM) やウログアニリン等の循環調節因子の研究を精力的に行なってきた。 AM の研究は、 文部省科学研究費補助金 「特定領域研究 (B)」 としても進行中であり、 学内外の研究施設との共同研究を行なっている。 また、 塩野義製薬株式会社と共同で AM の診断薬および治療薬としての特許を国内外で取得しており、 AM の臨床応用に関する研究を進めてきた。 今後とも、 国際的な視野に立った基礎的臨床的研究を展開する必要がある。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 医学は日進月歩であり、 内科研修中の医師は、 より高度な医学知識と技術の習得を要求されている。 医学部学生が学習すべき内科学の内容についても同様である。 一方、 高度な医学知識と技術を社会に還元する方法論を無くしては医療は成立しない。 高いレベルの医学知識と技術を持ち、 生涯学習することによりそれらを維持発展させ、 習得した医学知識と技術を柔軟に社会に応用することができる内科医の育成を目標としたい。 また、 現在の当講座の教育システムに関して、 内外に広く意見を求め、 常に客観的に評価しつつより良いシステムを構築していきたい。
 これまでに当講座の研究成果は、 研究業績目録に示されているように、 国際的にも高く評価されいる。 そのレベルを維持しつつ、 社会に還元されうる独創性の高い研究を展開したい。 そのためには、 研究の内容について内外に広く評価や意見を求めつつ、 これまで同様に各研究グループがそれぞれのテーマに精力的に取り組み、 必要に応じて各研究グループ間さらに他の研究講座や学外研究施設とも積極的に共同研究を進めたい。

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