生化学第二講座 【過去5年間の実績等】 1. 講座の特色等 (1) 教育の特色等
(1) 学内 (他の講座等)
宮崎焼酎酵母を特徴づける遺伝子配列検索の研究に関して宮崎県食品開発センター研究員の技術相談などを引き受けている。 4. 国際交流 科学研究費のサポートを受けて、 クロマチンの構造変化を介した転写制御の機構に関して、 スイスのバーゼル免疫研究所 (現ドイツのハンブルグ大学) の Jean-Marie Buerstedde 教授および米国のハーバード大学の中谷喜洋教授と共同研究を行い、 現在も継続中である。 当講座の教官のスイスおよびドイツ訪問の他、 両教授の来日で共同研究の進展のみならず国際交流の増進を計ってきた。 5. 外部資金の導入状況
【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点) 生化学、 分子生物学の領域の情報量は飛躍的に増加しており、 限られた講義時間内でその全てをカバーすることは極めて困難である。 また、 多くの学生は本学入学までの生物に関する知識量が極端に少ない。 したがって、 重要だと考えられる幾つかの分野に的を絞って、 知的好奇心を喚起するように、 講義ではプリント配付、 小試験による講義内容の理解度チェックなど幾つかの方法を試みたが、 成果はあまり芳しくなかった。 実習に関しても、 実験手法の急速な進展に即応した内容に変更を計画しながら予算的裏付けなどがなく、 旧態依然の内容を続けざるを得なかった。 クロマチン構造変化に基づく転写制御機構を、 主に1) コアヒストンのアセチル基による化学修飾、 2) クロマチンアセンブリーの2つに焦点を絞って、 分子レベルで明らかにするため、 ジーン・ノックアウト法を用いて、 1) アセチル化および脱アセチル化に関与する HAT および HDAC,2) クロマチンアセンブリーファクター (CAF−1p48) などの欠失 DT40変異株を系統的に作製した。 すでに、 HDAC−2の欠失変異株を解析し、 これが IgM H−chain 量を転写とその pre−mRNA の alternative processing の2つのステップでコントロールしていることを明らかにした。 さらに、 細胞増殖に必須なタンパク質 (HDAC−3、 CAF− 1p48) に関しては、 tet-responsive, conditional, homozygous DT40 mutants を作製済であり、 例えば、 p48の消失は M 期異常や様々なクロマチン異常を伴い、 細胞死に至ることを明らかにした。 しかし、 これらのほとんどは1人のスタッフの成果であり、 さらに成果が得られるような効率よい研究システムに改善する必要がある。 【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】 飛躍的に増加している生化学、 分子生物学の知識の中で、 重要だと考えられる幾つかの分野に焦点を絞って、 生化学第一講座と講義内容を分担して行う予定である。 さらに、 臨床、 基礎のあらゆる分野において、 組換え DNA 実験を含めたバイオテクノロジー手技が繁用されており、 2つの生化学講座が共同して生化学実習の内容を改善してこの問題に対応したい。 欠失変異株を詳細かつ網羅的に解析し、 クロマチン構造変化と細胞増殖との相関関係を明らかにしたい。 さらに、 欠失変異、 点突然変異、 キメラ変異タンパク質などを導入後、 complementation assay によって、 細胞増殖に必須な領域 (アミノ酸残基) の同定を行うと共に、 複数種存在する HDAC それぞれが、 どのコアヒストンの Lys 残基を脱アセチル化するかなどの基質特異性も明らかにしたい。 本アプローチによって、 真核細胞のクロマチン構造の形成、 維持および変化に係わる核タンパク質の構造・機能相関が、 いまだほとんどブラックボックスであるクロマチン構造の状態のままで in vivo で詳細に解析することが可能になると考えられる。 全スタッフの総力をあげて、 転写制御の分子的基盤を明らかにしたい。 |