生理学第二講座
【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等 (1) 教育の特色等
生理学に要求される広範な知識量は、 当然ながら授業で全てをカバーできるものではないため、 いかに学生に方向付け、 動機付けをするかが重要であると考えている。 そのための手段として当講座では、 以前よりチュートリアル方式を採用している。 2年生では総論的に種々の恒常性維持機構を講義中心に学ばせる。 さらに他機構との関連や生体における位置付けを学ぶには、 異常が起きた場合に起こる生体の反応を学習する事が効果的である。 また疾病を題材に取り入れることで学生が興味を持って自ら勉強をすることが経験的に分かっている。 このような観点から3年生では病態生理学を中心としたグル−プセミナ−と動物を使って実際の生体反応を観察する実習を行っている。 学生をグループに分け、 それぞれにテーマを与え、 担当教官の指導のもとで各グループ員が共同して自主的に、 図書館その他から情報を集めて勉強し、 他の学生の前で自分達の勉強したことを他の学生がわかるように発表させる。 実習は各人が役割分担をして実験を行い、 実験終了後グループ全員で討議をして統一した解釈に達した後、 各担当教官との質疑応答により理解を深めさせている。 これらのセミナーや実習を通してチームワークの必要性を認識するとともに、 情報収集、 整理、 解釈、 討議、 発表の能力を会得してもらうことを目的としている。 |
(2) 研究の特色等
「血液凝固線溶系の病態生理」 を研究テーマの根幹として以下の3つの研究を行っている。
1) 蛇毒からの生理活性物質の探索
多彩な酵素活性を持つ蛇毒から、 ヒトの凝固線溶活性に影響を与える酵素の抽出・精製が精力的になされ、 蛇咬傷における病態の解明がすすんでいる。 蛇咬傷時の組織破壊、 蛇毒の血中移行、 血管内皮細胞障害や播種性血管内凝固症候群 (DIC) の発生機序の解明を行っている。
2) 線溶系因子の各種病態における発現調節
ウロキナ−ゼ型プラスミノ−ゲンアクチベ−タ− (uPA) は線溶よりも血管新生、 組織修復、 炎症反応において重要な役割を持つ事が明かとなっている。 癌細胞においても uPA 産生量は悪性度と相関する。 uPA とその受容体 uPAR の時間的、 場的発現調節の変化を知る事で細胞の動態や病態の全体像を理解する事を目的としている。
3) 血漿中インターアルファインヒビターの機能解明
インターアルファインヒビターは血漿中に高濃度含有されているにもかかわらず、 その生理機能は全く不明である。 ノックアウトマウスを作成し、 生理機能解明を行う。 |
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
(2外科) 肺虚血再灌流障害における線溶系の関与。
(1病理) 微小循環系における組織因子と TFPI の発現、
異常赤血球及びヘモグロビンによる微小循環の異常に関する研究
(2病理) 癌細胞の集団遊走と SF/HGF 血液凝固系ネットワークの解析、
グリオーマ細胞における肝細胞増殖因子によるウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターとそのレセプターの発現増強
(2解剖) インターアルファインヒビターのサブユニットの組織分布
(産婦人科) 線溶系抑制による胎児脳虚血障害の軽減 |
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
(宮崎保健所) 保養の血液凝固線溶系に及ぼす影響 (U.S.A、 ノースウェスタン大学)
トロンビンによる癌細胞からのウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターの発現調節 (タイ、 プリンスオブソンクラ大学)
東南アジアにおける好酸球増多を伴う後天性血小板機能不全症の血液学的解析 |
3. 地域との連携
宮崎県健康づくり協会と連携し、 リゾート滞在における効果を血液凝固線溶系に焦点を当てて報告した。
4. 国際交流
タイ、 インドネシア、 インドとの研究交流の推進も本教室が重視している事の一つであり、 常時各国からの留学生を受け入れ、 東南アジアに見られるサラセミア症、 G6PD 欠損症、 好酸球増多性血小板減少症の研究を行っている。 地域特異的な疾患の血液学的研究を行いながら、 技術知識を習得してもらい、 帰国後も研究を続行し共同研究体勢を維持できるよう努力している。
5. 外部資金の導入状況
資金名 |
平成7年度 |
平成8年度 |
平成9年度 |
平成10年度 |
平成11年度 |
科学研究費 |
2 件 |
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6,100千円 |
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奨学寄附金 |
2 件 |
1 件 |
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1 件 |
2 件 |
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1,300千円 |
1,000千円 |
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600千円 |
300千円 |
受託研究費 |
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1 件 |
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500千円 |
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【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
学生教育に関しては、 2年次には従来の講義形式で基本的な生理学の知識を紹介し、 3年次には、 チュートリアル形式でセミナーを行っている。 しかし、 いまだ試行錯誤の状態で、 どのような講義が最良であり学生の要求に沿っているか結論を出せずにいる。 学生との意思の疎通を欠いている感は否めず、 今後、 改善していくべき課題であると考えている。 研究に関しては、 分子生物学的手法の確立等、 研究態勢の充実に手間取り、 思うように論文数が増えず低迷している感があるが、 大学院生の研究目標も定まり今後の発展の素地はできつつあると期待している。
【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
国の内外を問わず、 共同研究の推進を図りたい。 特に、 学内他講座との共同研究を充実させる必要を痛感している。 今年度より、 研究費の大幅縮小が避けられず、 研究人員の需要を賄うほどの研究費の確保がおぼつかなくなっており、 学外研究費の獲得努力が今後の大きな課題である。 その意味でも、 共同研究の推進と安定した論文発表が不可欠であると考えている。 |