3 基 礎 医 学 講 座

法医学講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 法医学独自の領域である法律を弁えた医学医療の在り方を教育目標として掲げ、 具体的には法律上問題となる医学的事項について適確な判断をなす前提としての知識の習得と理解及び医学・医療についての法的側面に関する知識の習得に向けた講議を行っている。 更に、 死体における検案・解剖、 傷害を中心とする生体の診断・検査、 或いは法的物件 (白骨、 毛髪、 血痕、 精液斑など) の分析検査等について基本的技術を習得することを目標としている。 これらの講議内容については、 系統講議に片寄らず、 最新の知見を織り混ぜてスライド等を多用した講議を心懸けている。 非常勤講師には何れも各方面を代表する講師に来学願い、 夫々の専門とする領域にいての講議が実施されている。
(2) 研究の特色等
 研究活動は、 法医蛋白質化学を一貫した研究テーマとし、 その中で臓器特異抗原に関する研究をこの10年来遂行している。 即ち、 特定のヒト臓器に偏って存在する抗原を犯罪関連現場から検出証明できるとすれば、 例え被害者つまり死体が発見できなくてもその被害者が被った傷害の様相が推察できることとなり、 法医学の実務上極めて有用な手段となる。 この様な観点から過去、 肝臓 (LSA) 小腸 (Sucrase−Isomaltase)、 心臓 (Troponin I) の高感度酵素免疫測定法の開発に成功し、 微量血痕からの抗原の検出証明が、 傷害臓器の特定に有効であることを示した。 近年は、 脳 (S−100 protein)、 肺 (Surfactant protein D)、 筋 (β−enolase)、 膵 (Elastase3)、 腎 (Tamm−Horsfall protein)、 甲状腺 (Thyroglobulin) に対する特異抗原の研究を推し進め、 何れも良好な成績を納め計15編の論文として公表した。 これら一連の研究成果は、 犯罪現場に残された微量な血痕からその傷害臓器を特定する技術として極めて優れていることが立証され、 法医学領域における新たな一分野を開拓したものとして内外から高い評価が与えられている。
 また、 近年著しい進歩を遂げた DNA 鑑定技術においては、 ミトコンドリア DNA 多型を利用した個人識別法についての研究を進め、 現在では、 その精度の高さから各方面から鑑定依頼が寄せられるようになっている。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
 ミトコンドリア DNA 及び STR 多型のシークエンス解析について、 第2生化学講座と共同で研究を行っている。
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
1) ドイツ、 マインツ大学法医学研究所とミトコンドリア DNA 及び Y 染色体 STR 多型分析に関する研究を共同で行った。

2) 宮崎県警科学捜査研究所と白骨及び毛髪のミトコンドリア DNA 多型解析に関する共同研究を行った。
3. 地域との連携
(1) 解剖鑑定
(2) その他の鑑定業務全般
(3) 各機関に対する講演、 講議など

4. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 4(※1)件 2 件 1 件 1 件 2 件
 3,460(※250)千円  2,710千円 300千円  1,400千円  1,040千円
受託研究費 1 件 1 件 1 件 1 件 1 件
412千円 412千円 487千円 487千円 420千円
※内分担者

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 一連の研究テーマは全研究者が臓器別に分担して行い、 全体を教授が統括している。 研究の進捗状況は各研究者によって異なっているが、 臓器特異抗原に関する研究の完成目標としていた平成12年度を待たず11年度中に一応の研究の完成を見た。 更に、 これらの研究の成果は、 夫々全てが論文として公表されることが決定している。
 ミトコンドリア DNA のシークエンス解析技術は、 本邦でも限られた実施機関として各方面から鑑定依頼が寄せられるようになり、 これまでに関連する論文6編の公表に至っている。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 当講座のメインテーマである研究の完成を見たので、 今後はこれらの研究成果をモノグラフとしてまとめ、 先に刊行した 「Organ Antigen PartT」 に続く 「Part2」 として公表する予定である。
 更に、 今後の研究テーマの探究と新たな研究テーマの具体化に向けて、 各人がもう一度法医学という学問を深く掘り下げ、 科学としての本質を究める研究を心懸ける必要があるものと感じられる。

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