3 基 礎 医 学 講 座

微生物学講座

【過去5年間の実績等】
1. 講座の特色等
(1) 教育の特色等
 微生物学の知識や技術の欠如は、 患者のみならず医療従事者、 さらに第三者に生命の危険を与える。
 それに対応するためには、 バイオハザードに対する配慮とその防止対策を常にかかさないことが必要であり、 このことを十分に学生に認識させうるよう教育方針をたてた。 まず、 学生が到達すべき知識として、 微生物とはどのような生物か (What they are)、 微生物はどのような病気を起こすか (What they do)、 感染症の診断・予防・治療への理解 (What we do against them) といった3つの基本柱を設定した。
 また、 国際化時代における感染症の重要性を認識し、 "Think globally, act locally"の態度を学生が身につけるような指導を心がけた。
(2) 研究の特色等
 研究テーマとしてウイルス学、 特にサイトメガロウイルス (CMV) の研究を続けてきた。 本講座での研究の特徴として、 CMVの基礎的な研究に留まらず、 実際の疾患・患者を念頭においた研究を行った。 すなわち、 CMV の感染と感染症とを区別しうる診断法の開発、 周産期における先天性 CMV 感染症の診断の検討、 薬剤耐性 CMV についての検討などであり、 本講座の研究は本邦における CMV 感染症の診断・治療に大きく貢献した。
2. 共同研究
(1) 学内 (他の講座等)
学内の講座・診療科と以下のような共同研究を行った。
産婦人科・周産母子センター:先天性 CMV 感染症の周産期経過と神経学的予後
第二内科:AIDS 患者における CMV 感染症の抗原血症、 DNA 血症
泌尿器科:CMV 感染と細菌性尿路感染症の関連
眼  科:角膜移植患者における CMV と角膜内皮炎の関連について
第三内科:ディフェンシンの抗細菌作用の検討
(2) 学外 (外国、 他の大学等)
学外の大学・研究機関・会社とも、 学内と同様に主に CMV 感染・感染症を主体に研究を行った。 文部省科学研究費では総合研究 (A) 「βヘルペスウイルスの潜伏感染、 再活性化機構解析に関する研究」 (代表:山西弘一 (大阪大学)) の分担研究を担った。 また、 厚生省科学研究費では 「脳形成障害の成因と予防に関する研究」 (代表:竹下研三 (鳥取大学)) 、 「エイズと日和見感染症に関する臨床研究」 (代表:木村哲 (東京大学)) 、 「脳形成異常の発生機序に関する臨床的・基礎的研究」 (代表:島田司巳 (滋賀医科大学)) 、 「免疫・アレルギー等研究事業 (臓器移植部門)」 (代表:野本亀久男 (九州大学)) の分担研究を行った。 また、 ヒューマンサイエンス振興財団の健康管理・免疫低下防止研究事業 「HIV 感染症の合併症および HIV 感染に伴う諸障害に関する疫学および臨床研究」 (代表:木村哲 (東京大学)) の分担研究を行った。
 CMV 感染症診断では国内外の多くの病院と CMV 感染症の診断についての共同研究を行った。 以下に代表的な共同研究施設をあげる。
 ブラジル共和国ペルナムブコ州立大学、 グアテマラ共和国厚生省マラリア局、 グアテマラ共和国サンカルロス大学、 タイ国チェンマイ大学、 九州大学第一内科および生体防御医学研究所、 長崎大学熱研内科、 大阪大学小児科および細菌学、 鹿児島大学ウイルス学・難治性ウイルス疾患研究センター、 東京医大眼科、 県立宮崎病院、 県立延岡病院、 県立日南病院、 宮崎県衛生環境研究所、 富士レビオ、 帝人、 バクスター
 また、 宮崎で行われた第37回日本臨床ウイルス学会、 第33回日本ウイルス学会九州支部総会、 第21回日本熱帯医学会九州支部大会を主催した。
3. 地域との連携
 専門としている CMV 感染症に限らず、 微生物学に関わる内容について講演等を行ってきた。 宮崎県医師会、 歯科医師会、 宮崎県衛生環境研究所、 保健所、 看護協会等において、 医療従事者を対象として CMV 感染症、 プリオン病、 腸管出血性大腸菌、 口腔内感染症、 食中毒、 消毒法、 新興・再興感染症、 感染症新法の講演を行った。 また、 特別養護老人ホームでインフルエンザについて、 高校や中学校では生徒を対象として性感染症についての講演を行った。 また、 平成9年度宮崎医科大学公開講座において、 O157感染症および輸入感染症について市民へ情報を提供した。

4. 国際交流
 当講座の (兼) 講師峰松俊夫が平成8年9月〜10月にブラジル共和国ペルナムブコ州立大学免疫病理学研究所 (LIAK) における第三国研修の指導員として従事し、 基礎ウイルス学の実験・方法論と酵素学的核酸増幅法を指導した。 留学生として、 バングラデシュより Khan Rounak Faizi を大学院生・海外研修員として受け入れ、 学位を取得させた。 また、 日本学術振興会の基金によりタイ国の Nisarat Apichartpiyakul を受け入れた。

5. 外部資金の導入状況
資金名 平成7年度 平成8年度  平成9年度  平成10年度  平成11年度
科学研究費 2 件 2 件 1 件 1 件 1 件
(分担者)  3,700千円  3,300千円  3,400千円  3,400千円  3,400千円
奨学寄附金 4 件 6 件 5 件 1 件 2 件
2,300千円 3,500千円 2,400千円 1,000千円 700千円
受託研究費 1 件 1 件 1 件 1 件
800千円 800千円 900千円 800千円
ヒューマンサイエンス 1 件 1 件 1 件
振興財団 4,000千円 3,000千円 1,500千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 本講座教授であった南嶋洋一が、 平成9年11月1日より本大学副学長に昇任した。 それ以後の微生物学教育については、 南嶋副学長が学内非常勤講師として峰松俊夫 (兼) 講師とともに担当しており、 教育の質に関する問題はなかった。 研究面では、 CMV 感染症を重点的に行ってきた。 本講座で開発した HRP−C7抗原血症診断法は、 現在、 保険診療の適用となり、 SRL により CMV 検査法として日常的に行うことが可能となった。
 また、 これら CMV 感染症の研究をもとに、 造血幹細胞移植ガイドライン (骨髄造血細胞移植学会編) の作成に参画し、 臓器移植等の新しい医療の発展に貢献できた。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 今後の当講座については、 次期講座教授の方針に委ねられるが、 現在までの研究の蓄積が生かせられるよう期待したい。

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