2 基 礎 教 育 等

物 理 学

【過去5年間の実績等】
1. 講座等の特色等
(1) 教育の特色等
1、 2年生の物理学では、 次のことを目標に教育を行っている。 第1は科学の基礎としての物理の方法や考え方、 基本的概念と法則を理解することを通して問題や課題のたてかた及び解決の方法を学ぶ。 このことにより現代の科学技術社会を生きる上での幅広い教養としての力を身につける。 第2は、 医学や医療技術の進展の中で物理の方法や法則がどのような形で応用されているのかを実際の例で示し、 医学医療の基礎としての物理学の役割を理解することである。
 講義の具体的展開は次のように行っている。 平成8年度より第1学年前期は、 高校で物理を未履修の学生を対象にした 「物理学概論T」 を開講した。 内容は物理学的自然観の発展、 物理の方法を述べ、 力学の諸法則とエネルギーの概念を理解できるようにする。 第1学年後期の 「物理学概論2」 は全学生を対象とし、 エネルギー保存則、 電磁気学とその医学への応用を中心に述べる。 物理学実験は、 力、 熱現象、 電磁気、 光、 エレクトロニクス等のテーマで3週にわたって実施している。 第2学年の 「生物物理学」 においては流体物理学と放射線物理学及びその応用を講義し、 刺激と感覚の一般論、 視覚の情報処理及び脳の高次機能についての集中講義を行っている。
(2) 研究の特色等
 ハイパー核物理とダイバリオンの物理について研究を行っている。 平成8年度より3年間にわたって科研費重点領域研究 「ストレンジネスを含む原子核」 が採択され、 計画研究の中で、 ハイパー核の弱崩壊過程と弱相互作用の課題を主に分担した。 弱崩壊にはΛ→pπ、 nπ0過程を通じておこるπ中間子崩壊過程と、 Λp→np、 Λn→nnを通しておこる非中間子過程がある。 前者については、 現象論的によく確立されてきているが、 後者の非中間子型弱崩壊には、 未解決の課題が多い。 上田、 元場教授と共に 相関した2πがρメソン及びσメソンとなって交換される弱相互作用が、 崩壊幅と共に部分崩壊幅の比Γ/Γを理解する上で重要であること重い核での寿命の漸近的一定性を1πおよび相関2π交換相互作用と崩壊機構 (ΛΝボンド数、 相互作用の質量数依存性と相互作用レンジ等) から理解しうることを示した。 又△I=3/2を含む相互作用を中間子交換模型で検討した。
 ハイパー核物理では他にフォトK+中間子過程や電磁相互作用によるハイパー核生成の機構とその偏極を研究してきた。 ダブルラムダハイパー核の生成・崩壊についても研究を始めている。
 これらの研究では、 国内外の研究者との共同研究、 実験家との討論を積極的に行っており、 ハイパー核物理の重要な分野を担っている。
 ダイバリオン物理に関しては、 原子核を標的とした (π、 π) で見られるTπ〜50MeVでの特徴的なピークが通常の核子−核子系の状態としては理解困難であることからこれを6個のクォークの相関した状態、 エキゾチックd’ダイバリオンと考え解析を進めてきた。 これはドイツ及びロシアの研究者との共同研究である。
2. 共同研究
(1) 学外 (外国、 他の大学等)
 ハイパー核物理の研究では、 大阪電気通信大学の元場俊雄教授及び愛媛大学の上田保教授と共に 「非中間子型弱崩壊の相互作用と崩壊機構」 の課題で、 又元場教授とは 「π中間子型弱崩壊の研究」 「フォトK中間子反応によるハイパー核の生成と構造」 について共同研究を行っている。 大阪大学の江尻・岸本教授らの実験グループと 「(π、 K) 反応と用いたΛハイパー核の生成と偏極」 について共同論文を発表した。 東北大学の橋本教授らの実験グループとはハイパー核の生成率及び寿命について互いに研究交流を行っている。
 国外ではチェコ科学アカデミー原子核研究所のM. ソトナ教授のグループと 「光及び電磁相互作用を用いたハイパー核生成と偏極」 について、 またダイバリオンの研究に関しては、 ドイツのチュービンゲン大学のA. フェスラー教授のグループと共同論文を発表した。
3. 国際交流
 チェコ科学アカデミー原子核研究所の理論グループ及びドイツのチュービンゲン大学の原子核物理グループとの交流を継続して行っている。 ハイパー核物理に関する国際会議、 シンポジウム及びワークショップには多く参加している。 (1995年チェコ、 1997年アメリカ、 1998年仙台、 1998年イタリア、 1999年韓国)

4. 外部資金の導入状況
資金名 平成8年度 平成9年度 平成10年度
科学研究費 1 件 1 件 1 件
(分担者) 670千円 700千円 600千円

【点検評価】 (取組・成果 (達成度) ・課題・反省・問題点)
 教育面:科学・技術に支えられた社会に生きる中で、 自然や科学に関心をもち、 興味を見い出せるよう講義や実習、 その他で学生に接するよう努力してきた。 最新の科学の話題・発見についても解説を行っている。 通年の講義の中で物理実験・実習のための時間が少ないこと、 実習を担当するスタッフが少ないこと、 実習機器が20年を経過し、 故障が多いことなど問題を抱えている。
 研究面:ハイパー核物理では国内の研究者との共同研究は着実に進展し、 国際会議での発表を通じて成果を出して来た。 実験グループとの交流も実を結んできたと思う。 研究課題は広くまだ未解決の難題もある。 研究交流、 共同研究のための財源、 特に旅費と計算費が少ないことが問題である。
 国際的な共同研究は互いの特色ある物理を発展させ、 信頼関係もあり永く続いている。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 教育面では学生実験をどう位置づけるか、 指導・助言の体制をどうするか、 実験機器の更新・予算措置の要求などを考えたい。 学生の要望も取り入れた講義のあり方も検討したい。 教育、 研究を含め計算機科学の教育・研究者を基礎教育の重要な授業科目担当として確保したいと希望している。 研究面では、 共同研究が軌道にのりうまくいっているが、 今後は若い研究者との共同研究を図り、 関連分野への研究の拡がりを目指したい。 国際共同研究は引き続き推進する。

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