1 医  学  部

(4) 教育指導の在り方
(ア)授業計画 (シラバス) の作成, 活用状況
【過去5年間の概況】
 各授業科目の授業計画は、 担当講座等に依頼し作成している。 なお、 「基礎教育科目」 にあっては非常勤講師が担当する科目があるため、 それぞれの講師に依頼し作成している。 授業計画書は毎年 「教育要項」 と題する冊子として作成し、 学生並びに教官等に配布している。
 この 「教育要項」 には、 各授業科目の担当教官名, 授業期間及び時間数, 教育目標, 講義内容, 実験 (実習) 内容, 評価の方法, 学習上の注意事項, 教科書・参考書が記載されている。
 臨床実習については、 毎年 「臨床実習 (T.・2.) 要項」 を作成・配布している。 内容として、 各臨床実習科目の担当教官名, 到達目標, 臨床実習の進め方, 医行為の範囲, 実習上の注意, 評価の方法, 参考書等及び一週間の実習内容を付記した臨床実習計画を記載している。

【点検・評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 「教育要項」 や 「臨床実習要項」 は、 学生が1年間を通して授業科目を把握して何を学習するかを自覚するために有用であり、 「教育要項」 は、 学生の到達目標を明確かつ具体的な内容とすることが必要であるが、 作成者により統一されていないことから、 今後検討し見直していく必要がある。

【今後の改善方策, 将来構想, 展望等】
 「教育要項」 について、 医学視学委員の実地視察において学生の立場から見て役に立つ内容とすべきであるとの指摘があったことから、 今後の作成にあたっては 「医学教育者のためのワークショップ」 時の資料を参考にしていくこととした。
(イ) 履修指導・履修状況 (単位取得状況)
【過去5年間の概況】
 履修状況について、 本学では 「基礎教育科目」 のうち物理学概論T.・細胞生物学T.とドイツ語・フランス語・中国語については選択必修科目となっているが、 その他の科目及び 「基礎医学科目」 「臨床医学科目」 の科目は全て必修科目となっている。
 また、 各学年毎に進級判定があり、 判定基準は授業科目に3科目以上の不合格科目がある者及び30点未満の不合格科目がある者については原級となり、 「基礎教育科目」 にあっては不合格科目の再履修、 「基礎医学科目」 及び 「臨床医学科目」 にあっては全科目の再履修を義務づけている。
 このような厳しい進級判定から、 表1に挙げるように、 毎年多くの学生が留年している。
学年別留年状況
表1
区分 1年 2年 3年 4年 5年 6年 合計
7年度 12 13 8 3 1 1 38
0 0 3 0 0 0 3
12 13 11 3 1 1 41
8年度 10 12 16 4 1 2 45
0 1 5 0 0 0 6
10 13 21 4 1 2 51
9年度 15 10 19 12 0 4 60
2 4 2 2 0 0 10
17 14 21 14 0 4 70
10年度 6 11 31 9 0 4 61
1 3 4 1 0 0 9
7 14 35 10 0 4 70
11年度 14 19 15 4 0 2 54
3 3 2 2 1 1 12
17 22 17 6 1 3 66
※休学、 停学を理由として留年となった者は含まない。

 このような留年となった学生に対しては、 毎年4月から5月にかけ、 学長自ら学生一人一人に対し面談を行い、 修学上の指導を行っている。 なお、 この学長面談には、 副学長、 教務・厚生委員会委員及び保健管理センター講師も加わり、 様々な面から修学及び生活等の指導も行っている。

【点検・評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 近年、 低学年の留年者が増加する傾向にある。 このことは、 厳しい受験勉強から解放されたため一種の無気力感が原因となり、 それが長期に及ぶ場合、 カリキュラムを充分に消化出来ない学生が見受けられる。
 また、 平成10年度入学者から3年生の学年末に実施される進級判定が、 「基礎教育科目」 ・ 「基礎医学科目」 の内、 1科目以上の不合格科目がある者は進級出来なくなることから、 今後、 3年次での留年者がさらに増加するものと思われる。

【今後の改善方策, 将来構想, 展望等】
 現在、 基礎教育系・基礎医学系・臨床医学系のカリキュラム検討部会で、 カリキュラムの見直しを行っているが、 臨床医学系カリキュラム検討部会では4年生終了時に臨床医学概説講義、 診断学講義・実習を終わらせ、 それぞれに試験を行い、 合格者のみ5年次前期からの臨床実習に進む資格を与えることの見直し案を、 教授会に報告している。
 このことから、 4年次での進級判定で留年者が増えることが予想されることから、 現行の進級判定基準の見直しを行う必要があるのではないかと思われる。

(ウ) 教官1人当たりの授業時間 (講義・実習時間)
【過去5年間の概況】
 医学科の教員1人あたりの平均授業時間数 (講義・実習時間) は、 基礎教育系では126.5時間、 基礎医学系では86.1時間、 臨床医学系では7.5時間 (臨床実習の時間は除く) であった。

【点検・評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 基礎教育・基礎医系においては、 学生が医師になるうえで基礎となる科目を身につけるという性質上、 授業時間数が多く、 その反面、 臨床医学系では臨床実習に重点を置くために数少ない授業時間数で、 効率よく講義する方策を見直す必要がある。 レジメを用いた従来の伝授型は限界にきている。 出席率の低迷化の原因ともなっている。

【今後の改善方策, 将来構想, 展望等】
 知識伝授型の授業から、 学生が自ら学ぶ態度を習慣付けられるような授業を行うことが肝要であり、 現有教官が常に恣意的に努める必要がある。
 チュートリアルシステムの導入は自己学習型が期待でき、 また臓器別の総合講義の導入も短時間での有効な方法とされる。

(エ) 演習・実習の実施方法、 実施状況
【過去5年間の概況】
 一診療科で2週から4週間の実習を施行し、 教官全員が指導にあたっている。 医療面接、 基本的技能の修得を目標としている。

【点検・評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 学習目標、 指導技術、 評価法など、 診療科によって幅があり、 調整が必要とされる。 教官自体の指導技能の向上が必要とされる。

【今後の改善方策, 将来構想, 展望等】
 定期的ファカルティ・ディベロップメントを通じて、 医学教育に携わる教官の質的向上を図るとともに、 OSCE,クリニカル・クラークシップの導入による自己学習型教育を主体にする。

(オ) 視聴覚教育の実施状況
【過去5年間の概況】
 以前は、 一部教室にだけに視聴覚機器が設置されていたが、 平成8年度からほとんどの教室に液晶プロジェクターから投影される視聴覚機器を配備し、 教育効果の向上を図っている。
 本学の講義・演習では、 スライドプロジェクターやオーバーヘッドプロジェクターOHP等の視聴覚機器を活用している。 語学ではビデオテープ等を用いてヒアリングや会話能力の向上に努め、 実践力を養っている。

【点検・評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 平成8年度から配備した視聴覚機器ではあるが、 解剖学や病理学の授業では細胞等のスライドがあり、 既設の液晶プロジェクターではその能力から鮮明に映写ができないことから、 持ち運びのスライドプロジェクターを使用して、 画像の説明をしているのが現状である。

【今後の改善方策, 将来構想, 展望等】
 今後、 高精密なテレビモニターを配備し、 教官が顕微鏡下に観察する標本画像や、 予めコンピューターに取り込んだ画像をモニターに映写できるような機器、 或いは複雑な手術手技がモニターを通して見られるような機器等が整備されることが望まれる。


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