1 医  学  部

(1) 学生の受入れ
【過去5年間の概況】
 本学の入試は、 当初は共通一次を主とした選抜で、 競争率は最低時2倍弱であった。 平成2年に大学入試センター試験制に変わった時点で、 5つのカテゴリー別に定員を区分した選抜方法、 いわゆるユニーク入試と通称される方式、 へと変更された。 この選抜方法は好評で、 全国から15倍前後の高い競争率で受験生が殺到した。 しかし、 5区分別に入学後の成績追跡調査を行った結果、 近年の入学生では特にセンター成績のみを重視した理系・文系及び本学指定調書群に成績不良者が多く、 小論文と面接の組合わせが良いことが判明した。 この結果は恐らく大学への受験効率一点張りの高校教育と、 社会・経済情勢の大きな質的変貌によって、 受験生が社会人、 他学部卒業者、 多浪生の増加など質的に変化したためと推定された。
 一方、 医学部では、 単なる記憶力のみでなく、 問題解決能力、 判断力、 和・英の長文資料を短時間に読みこなしてポイントを集約し、 まとめ上げる能力が強く求められ、 更に臨床実習では患者への対応に円滑な言葉使いと豊かな表情などによる適切なコミュニケーションが求められる。 これらの能力は将来、 医師となっての日常の診療録作成、 データ解読、 更に患者へのインフォームドコンセントのためにも絶対に必要な能力であることは言うまでもない。
 そこで平成12年度入試から、 前期日程・後期日程とも第一段階選抜をセンター試験の満点値の75%以上で募集人員の約6倍とし、 その合格者全員に対して小論文と面接を課して選抜することに変更した。
(ア)一般選抜
 一般選抜は、 受験機会の複数化の観点から、 前期日程・後期日程の分離分割方式とし、 それぞれの募集人員を前期60名、 後期40名としている。
受験者の選抜は、 次の(1)〜(5)の項目について、 総合的に評価して判定する。
(前期日程)
(1)大学入試センタ-試験 (5教科7科目) 900点
(2)小論文  450点
(3)面接   150点
(4)調査書
(5)健康診断書

(後期日程)
(1)大学入試センタ-試験 (5教科7科目) 900点
(2)小論文  300点
(3)面接   300点
(4)調査書
(5)健康診断書
(イ)入学者選抜方法・実施状況
 一般選抜実施方法
入学年度 日程 大学入試センター試験 個別学力検査等
平成8年度 前期 国語 (200点) 地歴及び公民から1教科 (100点)
数学 (200点)小論文後期理科 (200点)
外国語 (200点)      【5教科7科目900点満点】
小論文
後期 小論文
面接
平成9年度 前期
後期
平成10年度 前期
後期
平成11年度 前期 小論文
後期 国後 (100点) 理科 (100点) 地歴及び公民から1教科 (50点)
数学 (100点) 外国語 (200点) 【5教科7科目450点満点】
小論文(150点)
面接(300点)
平成12年度 前期 国語 (200点) 地歴及び公民から1教科 (100点)
数学 (200点)
理科 (200点)
外国語 (200点)      【5教科7科目900点満点】
小論文(450点)
面接(150点)
【600点満点】
後期 小論文(300点)
面接(300点)
【600点満点】
一般選抜実施状況
入学年度 志願者数 受験者数 合格者数 入学者数 志願倍率 受験倍率
平成8年度 前期 713 386 1,099 572 307 879 37 24 61 37 23 60 18.3 14.4
後期 423 200 623 228 95 323 31 10 41 31 9 40 15.6 7.9
1,136 586 1,722 800 402 1,202 68 34 102 68 32 100 17.2 11.8
平成9年度 前期 719 385 1,104 577 305 882 41 19 60 41 19 60 18.4 14.7
後期 495 253 748 217 103 320 20 21 41 19 21 40 18.7 7.8
1,214 638 1,852 794 408 1,202 61 40 101 60 40 100 18.5 11.9
平成10年度 前期 625 317 942 506 257 763 41 19 60 41 19 60 15.7 12.7
後期 425 251 676 142 83 225 21 21 42 20 20 40 16.9 5.4
1,050 568 1,618 648 340 988 62 40 102 61 39 100 16.2 9.7
平成11年度 前期 260 148 408 184 96 280 32 28 60 32 28 60 6.8 4.7
後期 323 200 523 84 43 127 22 21 43 19 21 40 13.1 3.0
583 348 931 268 139 407 54 49 103 51 49 100 9.3 4.0
平成12年度 前期 331 200 531 214 129 343 34 26 60 34 26 60 8.9 5.7
後期 412 251 663 125 65 190 26 14 40 26 14 40 16.6 4.8
743 451 1,194 339 194 533 60 40 100 60 40 100 11.9 5.3
(ウ)学生定員の充足状況
 学生定員の充足状況
入学年度 入学定員 受験者 合格者 入学者 受験倍率
平成8年度 100 1202 102 100 11.8
平成9年度 100 1202 101 100 11.9
平成10年度 100 988 102 100 9.7
平成11年度 100 407 103 100 4.0
平成12年度 100 533 100 100 5.3
(エ)入学後の成績追跡調査の状況
 平成2年度から、 5つの選抜区分〔前期 (理系、 文系、 小論文、 指定調書) 後期〕による入学試験 (いわゆるユニーク入試) が行われた。 この入試に移行してから約9年が経ち、 学内で、 入試改革の議論が高まり、 入試と学内成績との関連を数量的に調べる必要性に迫られ追跡調査を行った。
調査の時点 (平成10年8月) で学内成績が確定していたのは平成9年度の入学生までなので、 平成2〜9年の800人について調べた。 解析に際し最も気を付けた点は、 先入観にとらわれたり恣意的な調査にならないように、 全ての組み合わせを網羅して解析するよう心がけた事である。 まず、 入学年度別に入試成績と学内成績から基本のデータベース (約十万個のデータ) をEXCELで作成し、 統計解析にはSPSS (Base8.0J及び ExactTests) を使用した。
 入試の考察では、 如何に優秀な学生を採るかも大事であるが、 如何に入学後成績の悪い学生を採らないかという点も大事である。 従って様々な観点から多角的に調べる為、 (1)入試成績と学内成績の相関、 (2)選抜区分別の学内成績、 (3)選抜区分別の留年率と退学率、 (4)進級者・留年者間の入試成績の差等について調査した。
その結果、 全体的に最も入学後の成績が良かったのは平成2年を除く小論文であった。 平成2〜9年のうち前半では、 理系と指定調書の成績が良く後期が悪いようであったが、 しかし後半では、 小論文の成績が良く後期と指定調書が悪かった。 又、 最近の理系もあまり信頼できる指標とはならなかった。 文系は医学部に適応して順調に進級する者の学内成績は高いが、 適応できず留年を繰り返したり退学する者の割合が多かった。 なお面接は、 平成9年以 外はおおむね有効との結果であった。
この追跡調査の詳細は、 文献1) で報告した。 また、 この結果に基づき文献2) のように、 平成12年度から本学入試方法が全面的に改革された。
 なお、 以前のユニーク入試で入学した学生が在籍している間は、 様々なデータが毎年蓄積されて行くので、 今後も追跡調査を引き続き行う予定である。

【文献】
1) 大桑良彰:
「宮崎医科大学における入学者選抜の追跡調査 (平成2年度〜平成10年度)」
〔宮崎医科大学, 1999〕P.19ー63

2) 南嶋洋一:
「(第3回九州地区) 医学教育シンポジウム報告書」
〔宮崎医科大学, 1999〕P. 25−33

【点検・評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
(1)平成12年度が新制度の初年度であったが、 第一段階選抜は大学入試センター総得点の80%になった。 例年後期に見られた3〜4名の入学辞退者が皆無であったことは面接の意義を示すものであり、 又県内からの入学者が増えたこともこの制度改革が良かったという証左であり、 次年度以降も同選抜方法で実施することが望ましい。

(2)大学入試センター試験において、 物理学と生物学の試験時間帯が重なっているので、 いずれか一方の科目しか受験できない。 そのため、 入学後の両科目の基礎学力に大きな格差が在る。 それで理科3科目 (化学、 物理学、 生物学) を入試の必須科目とすることが望ましいので、 かかる選抜が可能なセンター試験の実施を実現してほしい。

(3)出題・採点委員の決定・委嘱、 問題の作成・提出、 原稿の校正・印刷などの日程を繰り上げ、 ゆとりある日程とすることが望ましい。

(4)小論文問題の内容については、 入学試験審議会等で十分検討して作成しているが、 その適否について外部評価を受けることが望ましい。

(5)大学入試センタ-試験・小論文・面接の配点、 又面接の評価方法等については、 継続的に十分審議されるべき重要な研究課題である。
【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 入試の改善なしにわが国の高等教育改革は成功しない。 もとより入試は、 朝令暮改を避けるべきである。 しかし一方、 入試は社会情勢の変化にも対応し得るものでなければならない。 少子化が進行する中で、 大学が独立行政法人化を始め激変の時期を迎えようとする時、 入試は大学生き残りの戦略と成りつつある。
 特に医学部には、 国民の健康に直結する医療人の養成という使命がある。 今、 最も求められているものは、 全ての大学教員が入試を自らの最も重要な職務の一つであると認識することであろう。

[ 戻 る ]