4 附属教育研究施設

(3) 実験実習機器センター
【過去5年間の概況】
 平成6年5月、国立学校設置法に基づき、本学に医学部附属実験実習機器センターが設置され、それとともに本学研究棟完成時に学内共同利用施設として設置されていた電子顕微鏡、電気生理、生化学第一、生化学第二、組織培養、感染の各センターは、それぞれ実験実習機器センターの一部門として再発足することとなった。その後、平成7年6月にはRIセンターもRI部門として実験実習機器センターに統合され、総面積3000uを超える現センターの体制が整った。これに伴い、実験実習機器センターに関連した規定および運営方法を抜本的に見直し、平成8年4月に専任助教授が赴任した。RI部門部長を務めていた渡邊克司教授が、平成8年4月に副学長(医療担当)・病院長に就任し、川井恵一助教授が当部門部長を兼任することとなった。また、平成9年11月をもって、南嶋洋一初代センター長が副学長(教育研究及び厚生補導担当)に就任したことから、河南 洋教授が2代目のセンター長に就任した。南嶋洋一感染部門部長の後任には、当初川井恵一助教授があたったが、平成10年4月より、名和行文教授が感染部門部長を担当することとなった。さらに、石川榮治教授の定年退官に伴い、平成11年4月より、中山建男教授が生化学第一部門も担当している。本センター設置後の組織は、以下の通りである。
在任期間
センター長 微生物学 教 授 南 嶋 洋 一 H. 6. 6〜H. 9.10
(併任) 生理学第一 教 授 河 南   洋 H. 9.11〜
助 教 授 川 井 恵 一 H. 8. 4〜
電子顕微鏡部門
 部長(兼任)
解剖学第二 教 授 菅 沼 龍 夫 H. 6. 6〜
 事 務 官 後 藤 嘉 輝 H. 6. 6〜
電気生理部門
 部長(兼任)
生理学第一 教 授 河 南   洋 H. 6. 6〜
 事 務 官 小 川 君 子 H. 6. 6〜
生化学第一部門
 部長(兼任)
生化学第一 教 授 石 川 榮 治 H. 6. 6〜H.11. 3
生化学第二 教 授 中 山 建 男 H.11. 4〜
 技   官 石 神 紀 美 H. 6. 6〜
生化学第二部門
 部長(兼任)
生化学第二 教 授 中 山 建 男 H. 6. 6〜
 事 務 官 西   良 子 H. 6. 6〜
組織培養部門
 部長(兼任)
病理学第二 教 授 河 野   正 H. 6. 6〜
 技   官 白 谷 由紀子 H. 6. 6〜
感染部門
 部長(兼任)
微生物学 教 授 南 嶋 洋 一 H. 6. 6〜H. 9.10
本センター 助教授 川 井 恵 一 H. 9.12〜H.10. 3
寄生虫学 教 授 名 和 行 文 H.10. 4〜
 技   官 吉 田 朱 美 H. 6. 6〜
RI部門
 部長(兼任)
放射線医学 教 授 渡 邊 克 司 H. 6. 6〜H. 8. 3
本センター 助教授 川 井 恵 一 H. 8. 9〜
 技   官 後 藤 稔 男 H. 6. 6〜
 平成9年度に第16回国立大学附属実験実習機器センター長会議を本学が担当することが決定し、センター内の各部門実務担当者によるセンター長会議準備連絡会も開催されるようになった。その中で利用者の便宜を図る目的で「センター利用案内」を発行することなどが話し合われ、センター長会議の開催準備と共に、「センター利用案内」を作製し、学内各部局に配布した。平成10年10月には上記国立大学附属実験実習機器センター長会議を本学が主管校となり開催し、その討議の結果を要望書にまとめ、全国医学部長会議に提出した。平成11年度から、概算要求事項の提出は、実験実習機器センター運営委員会において審議し、センターとして要求することとし、特別設備・組織関係の要求案を作成し、ともに教授会において了承を得た。また、医学研究に普遍的に必要な基盤設備に関しては、センター経費で積極的に更新していくこととし、その一端として、学長裁量経費でジェネティックアナライザーを、共用施設整備費からはガンマカウンター等を購入した。

【点検・評価】(課題・反省・問題点)
 実験実習機器センター(以下「機器センター」)の役割は、各種機器の管理・保守にとどまらず、大学院生や若手研究者に対し最先端の研究手段についての情報とその技術や手技を教育することにあり、さらに、将来的には機器センター教職員の専門領域及びその技法に関する教育・研究指導に積極的に関与することにあると考える。本学の機器センターは、7部門から成り、それぞれの部門共に専門性・独立性が高く、各種の先端研究設備が設置されており、他大学の機器センターと比較して規模が大きく、法的に適切な管理運営が必要となるRI施設も含まれており、その業務内容は多岐にわたる。センター運営に携わる専任の教官としては助教授1名のみである。特に、7部門の専門性を考慮すると、本来ならばそれぞれの領域に対応する専任の教官が必要とされるが、本学においては、開学以来の共同利用施設運営の経験から、センター長(併任)のもとに各部門にそれぞれの研究領域を専門とする兼任の部門部長と事務官あるいは技官を配することにより、管理運営・研究支援に寄与している。この点に関しては、第16回国立大学附属実験実習機器センター長会議における施設見学会の折に、他大学の機器センター教職員より賞賛を受けたところである。しかしながら、機器センターがこれらの役割を充分発揮し、教育研究活動の中心として機能し、多様な先端研究機器を生かすための指導を行い、さらには大学院生の指導や独自の研究活動を行うためには、バイオメディカル領域を専門とし、高度な専門知識・研究手技を有する教官の配置が緊要である。特に、近年の組換えDNA実験の急増に対処し、生物災害の防止を含めた遺伝子実験に関する適切な管理・教育を充実させるために、新たに組換えDNA実験を専門とする教官が必要であると考える。
 専任助教授の川井は、脳内神経伝達機能診断薬をはじめとする各種代謝機能診断用放射性医薬品の開発研究に加えて、癌の診断・治療を目的とした放射性医薬品の開発および薬剤の動態制御や血中濃度予測法の確立に関して共同で推進している。特に、脳内神経伝達機能診断薬として、脳内ドーパミン神経終末におけるドーパミン生合成酵素機能を測定し得る新しい放射性医薬品の開発に成功し、それらの独創性が高く評価されて、第36回日本核医学会賞を受賞した。また、平成10年より川井が研究指導した日本学術振興会外国人特別研究員が、新たな脳内ドーパミン作働性神経終末機能診断薬の開発に成功し、その成果により、日本核医学会優秀若手研究者賞を受賞した。これらの内容については、「4 教育研究活動」にまとめて記載した。
 各部門の管理・運営の状況及び研究者の利用状況に関しては、実績・点検評価・今後の展望等について部門ごとに取りまとめた。これらの詳細は、141頁以降を参照されたい。

【今後の改善方策、将来構想、展望等】
 本学においては、これまでにも基礎医学教育、学内共同利用施設の教育訓練等においてバイオメディカル領域に関する教育・研究指導に重点をおいてきた。しかしながら、近年の分子生物学的手技の飛躍的な発展と研究手技の多様化に対して各講座、施設毎の対応では限界があった。そこで、生物学領域に関する教育・指導体制の一層の充実を図るとともに、既存組織の有効利用と新しい機能の獲得のために、医学部共同利用施設の統合により、新たに「バイオメディカル研究教育統合センター(仮称)」の設置を概算要求事項として提出した。これにより、従来の教育担当・研究指導・研究支援業務に加え、以下に述べる新たな機能分担を行うことを目的とする。
(1) 学内共同利用施設の統合により、既存組織の有効利用、予算管理の一元化などの効率的運用とより適正な管理・運営を図る。

(2) 動物実験施設・実験実習機器センターの2省令施設を統合し、大学院専攻系に対応した細胞・器官、生体制御、生体防衛機構、環境生態の4部門を設置する。更に学内人員の振り替えを含め、新たに講座並みの教官を配置することにより、学部教育においては従来の教育担当に加え、これまで担当講座のなかった科目を分担するとともに、大学院での教育研究指導を積極的に担当する。
 また、従来からの研究支援業務の強化のために、高度な知識を有する事務官・技官をセンターに重点的に配置し、機器の管理・保守、実験動物の維持・管理等にとどまらず、先端的研究手技に関する教育、情報提供をその役割とする。

(3) 近年の組換えDNA実験の急増に対処し、生物災害の防止を含めた遺伝子実験に関する適切な管理・教育を充実させるために、上記部門に生化学を専門とする教官を併任すると共に、新たに組換えDNA実験を専門とする教官を採用する。
さらに、上記統合センター設置に基づく将来構想として、以下の事項が検討されている。

(4) 医科大学として本学がこれまでにも推進してきた地域医療への支援業務を強化するために、地域医療支援部門を新たに設置する。僻地医療支援を含めたネットワークの活用が重要であることから、学内処置により設置された情報処理センターを統合し、本部門が地域医療の拠点としてその役割を充分に発揮するために、担当講座として医療社会学講座を設置する。教官は附属病院より振り替え、これまで担当講座のなかった医学情報学を担当する。

(5) さらに、本学の将来構想の内、大学院専攻系や科目の見直しの推進に本センターが中心的役割を果たすと同時に、上記の新設部門の活用により、より柔軟な対応が可能となる。また、基礎教育科目の見直しに関連して、それらのスタッフによる医学教育支援や国際交流支援等に関する部門の新設等、本センターを新規事業の中核をなすものと位置づけ、活用していく。
 今後、全学的な大学改革の流れの中で、宮崎大学との連携等も視野に入れながら、より具体的な構想の検討を継続していく予定である。

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