(2) 動物実験施設 【過去5年間の概況】 昭和52年6月に施設が竣工して以来、再現性のある動物福祉を考慮した適正な動物実験が行われることを目標としてきた。全ての動物実験実施代表者に対しては、平成10年度に再度「動物実験計画書」の提出の徹底を図り、動物実験委員会が審査し承認された動物実験でなければ施設を利用できないようにした。また、全ての施設利用者に対しては、平成元年以降「利用者講習会」を4月、6月、9月に定期開催する他、年間数回臨時に開催し、施設の具体的な利用法、動物実験に関する指針の説明、動物の保護及び管理に関する法律の解説、人獣共通感染症などを含む講義を行い、受講後に利用者登録申請書を提出した者に、施設出入許可証を発行している。動物実験を行っている研究者や実験協力者に対しては、研究が順調に進行するよう施設教官(助教授1名と9年度から助手1名)が研究や使用動物に関する助言等を行い、動物飼育などに関する助言は施設技官が適切に行っている。 また、施設では文部省の系統保存費による「遺伝性高脂血症マウス」の系統維持をはじめ数十種の野生ネズミ類を飼育維持し、施設利用者はもとより、国内外の研究者と共同研究を行うとともに、分与に応じている。 過去5年間の施設の利用状況、機器の購入状況及び分与は次のとおりである。 |
施設利用状況
|
機器の購入状況
|
動物の分与
|
【点検・評価】(課題・反省・問題点) 医学研究は、動物実験に負うところが多い。動物福祉を考慮した再現性のある精度の高い動物実験を行うことを目的として、遺伝的及び微生物的に統御された実験動物と、それらを適正に飼育するための飼育設備、飼育管理する技官並びに環境を厳密に統御できる空調設備、高度の専門知識を有する教官が管理する動物実験施設を必要とする。 しかしながら、施設が竣工してから既に20年以上が経過し、この間2度も震度5の地震に見舞われ、施設外壁や飼育室の床に亀裂が入り、水漏れが日常的に起こっている。空調設備も老朽化が進み、平成10年12月には空調給排気のダンパーが故障し、実験動物が多数死亡する事故が発生した。直ちに事故原因を究明し対処したため、1か月後に全く同じ事故が発生したときは、わずか1時間で復旧させることができた。しかし、今後も同様の事故がいつ発生してもおかしくない状態が続いており、早急に空調設備の更新を行わなければならない。飼育機材についても老朽化がひどく、飼育動物がいつ事故死してもおかしくない状況が続いており、早急に更新する必要がある。また、遺伝子操作動物(ノックアウト、トランスジェニック等)の使用が急増してきており、飼育室の再配分と専用の飼育機材を緊急に配備する必要がある。 また、一般動物、清浄(SPF)動物や感染実験動物などの飼育管理は、それぞれ専任の技官を必要とするが、現状は全く定員措置されていないため、2名の技官が一般動物、SPF動物や感染動物の飼育区域を兼務する異常事態が続いている。日常の飼育管理以外に、全利用講座に対する毎月の飼育経費の請求、年度末の冷暖房費の算出と請求、利用者が毎日使用する白衣の洗濯と配布、飼育ケージの洗浄、動物死体の焼却、動物排泄汚物の処理、実験室などのゴミの分別処理、感染・清浄動物区域への飼育機材のオートクレーブによる滅菌・搬入処理、感染動物区域からの使用済み飼育機材や動物死体の滅菌搬出等、技官の作業量は全国の施設で最も多くなっている。 【今後の改善方策、将来構想、展望等】 動物実験施設を、研究もできる単なる飼育サービス施設に留めるのではなく、より積極的に研究施設及びサービス施設として発展させる必要がある。そのためには、施設を実験動物資源開発研究施設と捉え、充実(教授1名、助手1名、技官3名、事務官1名)させることが急務である。それにより、研究・業務として実験動物学、繁殖学の立場から遺伝子資源としても貴重な野生小型動物から新しい実験動物の開発・維持・供給、希少動物種の人工繁殖、遺伝子改変動物を含む実験動物の生殖細胞の凍結保存等が可能になり、かつ情報を公開するためのデータベースの構築も可能になる。また、飼育管理業務として研究者が使用する一般動物、清浄動物、感染実験動物、遺伝子組換え動物など、様々な実験動物を専門のスタッフが飼育管理・指導できるようになる。 |