宮崎医科大学の地域に対する役割について(報告)
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本会議では、 宮崎医科大学長から 「宮崎医科大学の地域に対する役割について」 の諮問を受け、会議において審議するとともに、 委員個々の立場から、 報告書を提出願った。 ここでは、 各委員から提出された意見とこれまでの審議結果を5つの項目 (1. 医師・看護職者の養成、 2.大学病院の診療、 3.地域医療機関との連携、 4. 地域社会への情報提供等、 5. 入試制度) に区分し総論的に取りまとめた。 なお、 委員個々の意見は、 それぞれの報告書をご参考いただきたい。 1. 医師・看護職者の養成 宮崎医科大学は、 県内唯一の医学教育機関として医師あるいは研究者の養成を担っている。 これからも、 医学の進歩に確実に対応できる優れた能力とともに、 高い徳性を備えた医師を養成していくことを期待する。 近年、 医療が高度化し、 各専門分野ごとに細分化してきているが、 地域医療の場で求められているのは、 日常の病気を診ることのできるプライマリーケアの診療能力を持った良医である。 プライマリーケア医の養成については、 卒後臨床研修制度のあり方や大学病院の機能の問題など、 解決しなければならない課題は多いと考えるが、 総合診療部の設置、 地域医療機関と連携したプライマリーケア研修病院・診療所群の設置等を行い、プライマリーケア医を養成する教育制度の確立を期待する。 また、 平成13年4月に看護学科が設置されたので、 今後は地域医療のさらなる充実のため、 高度な医療に対応できる質の高い看護職者の養成にも期待する。 2. 大学病院の診療 昭和52年10月の開院以来、 大学附属病院は宮崎県の医療水準の向上に大きく貢献してきており、 今後もその役割を担ってくれるものと期待している。 近年、 社会構造の変化とともに、 疾病構造も変化してきており、 複合の疾病を持つ患者が多くなる一方で、 医療はますます専門化が進み、 複合疾患に対するケアーが不足しがちであることから、 総合外来あるいは総合診療科・部に対する期待は大きい。 その点において、 大学附属病院では、 「総合診療部」 の設置構想があり、 早急に実現されることを期待する。 また、 大学附属病院は、 特定機能病院として高度先進・先端医療の研究、 診療及び開発を行う役割を担っているので、 地域医療機関で対応できない疾病、 臓器移植などの最新の医療への対応、 さらには原因不明や治療法が未だ確立されていない数々の難病等への対応に力を入れ、 そのノウハウを地域医療機関へ還元していくことを期待する。 このため、 大学附属病院での診療は、 高度医療を必要とする患者への対応をスムーズにするために、 ある程度患者の診療に制限を設けることは止むを得ないことかもしれないが、 地域住民からは、 誰でも受診できる方が良いという要望もある。 重要なことは、 地域の医療機関と一部ではオーバーラップしながらも診療機能を分担し、 両者が共存・共栄する体制作りをすることであろう。 さらに、 大学附属病院は、 県立宮崎病院及び県立延岡病院とともに県内の最終的な救命救急医療を担う三次救急医療施設に位置付けられている。 大学附属病院の救急部の設置は、 宮崎県の初期、 二次、 三次の救急医療体制の整備に大きく貢献している。 特に、 宮崎県の北西部は険しい九州山脈に囲まれた深い山村部が散在しており、 これらの地域の救急医療にはヘリコプターの活用が有用である。 大学附属病院はヘリポートを有する限られた医療機関であり、 ヘリコプターを活用した救急患者搬送システムの確立が待たれるところである。 今後も、 第三次救急医療機関として更なる機能の充実を図り、 宮崎県の救急医療のリーダー的役割を担うことを期待する。 3. 地域医療機関との連携 宮崎医科大学設置後、 県内の医療レベルは飛躍的に向上した。 卒業生も地域医療の第一線で活躍している。 大都市部では医師充足感のある昨今ではあるが、 県内に関する限り未だ医師不足の状況であり、 標欠病院の解消や無医地区の解消には程遠い状況である。 医師法が改正され、 卒後2年間の臨床研修が義務付けられることになる。 それを活用した研修2年目の医師の地域病院へのローテイションや指導医の派遣制度を充実することにより、 県内の医師不足解消の一翼を担ってくれることを期待する。 さらには、インターネットを活用した遠隔地診断、 研修登録医制度の充実・拡大、 新設された地域医療連携推進センターの機能の充実などにより、 一層の病病連携・病診連携を期待する。 4. 地域社会への情報提供等 宮崎医科大学は、 医学・医療の知識、 技術の宝庫であり、 先進的・先駆的な研究・医療を行い、 多大の実績を上げており、 これまでも公開講座をはじめ、 様々な形で大学の保有する知識・技術を広く県民に提供し、 好評を博していることは周知のところである。 しかし、 近年の科学技術、 医療技術の進歩は、 我々の生活を便利にし、 そして快適なものとする一方で、 少子・高齢化社会の到来、 生活環境の変化などに伴い、 様々な疾病が生まれ、 疾病構造は複雑化し、 医学、 医療も 「治療から予防へ」 と変貌している。 このため、 これからの大学にはこれまで以上に地域との共存が求められており、 地域に根ざした大学、 附属病院として、 公開講座・研修会などの充実・拡大、 インターネットを活用した情報の提供など、 様々な形で大学の保有する知識・技術を県民に広く提供し、 県民の生涯学習、 健康、 福祉の増進に寄与することを期待する。 また、 今後の産業振興においては、 産学官連携による新技術開発が一層重要であり、 宮崎医科大学の先進的、 先駆的研究が県内産業の振興に貢献することを期待する。 5. 入試制度 宮崎医科大学の入試制度は、 平成2年度に大胆な見直しを行い、 ユニークな入試制度として全国的に話題を集めたことは周知のところである。 しかし、 経年とともに高校側、 受験生側から合否の判定基準が明確でないなどの意見が寄せられるとともに、 大学での追跡調査の結果、 大学が期待した程の結果が得られず、 平成12年度の入試に当たり、 見直しを行ったことは、 評価に値する。 どのような入試制度であれ、 経年により必ずや問題が提起され、 見直しを迫られることは必須である。 いずれにしても、 リーズナブルで受験生に分かりやすい入試制度とすべきであると考える。 国立大学では、 出身県や性別で差をつけるべきでないことは当然のことであるが、 開学当初に比べ、 県内出身者の合格者が少なく、 優秀な生徒が他県の医学部・医科大学に流出している現状は非常に残念である。 県内高校との連携を密にし、 受験生の確保に努めるとともに、 アドミッション・オフィス入試などによる県内出身者の受け入れを検討していただきたい。 |
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