宮崎大学小児科
患者さん・一般の皆様へ

日常生活の手引き

まず、慢性肉芽腫症(以降Chronic Granulomatous Disease(CGD)と省略します)という病気を理解するために、からだがどのようにして病原体(細菌・真菌)の侵入を防いでいるかについて簡単にお話しします。

私たちの血管の中を道路とすると、事件がないか見回っているパトカーの役目をしているのが白血球です。どこかに事件があるとパトカーが何十台も集まるように、体のどこかに病原体が入ると白血球が真っ先にその場所に駆けつけます。白血球の中の好中球という細胞がその病原体を食べて殺菌して、私たちの体を守っています。この時、好中球は活性酸素という物質を使って病原体を殺菌します。

先天性免疫不全症(生まれた時から、からだの抵抗力が低下する病気)の中で最も多い病気です。体に侵入してきた 病原体を殺すには活性酸素が必要ですが、CGDの好中球(白血球の一部の細胞)は活性酸素をつくることができません。そのため病原体が体のいろんな場所で増え続けて感染(発熱)を起こします。一方、病原体の周りにマクロフ ァージやリンパ球などが駆けつけ、局所に菌体を留めようと生体が反応し、肉芽腫を形成しやすい特徴を持っています。免疫不全症といってもAIDSとは全く異なる病気です。

血液検査で好中球が活性酸素をつくれないことから診断します。この検査には様々な種類があります。さらに遺伝子検査を行うこともあります。

CGDは遺伝する病気です。伴性劣性遺伝(男性のみ)と常染色体劣性遺伝(両性に現れる)の2つのタイプがあります。日本では伴性劣性遺伝が多いため患者さんの男女比もおよそ7対1で男児に多く見られます。

発熱や咳(肺炎)、リンパ節の腫れ(リンパ節炎)、皮膚の化膿(皮膚膿瘍)、肛門周囲の化膿(肛門周囲膿瘍)、 下痢や腹痛(腸炎)を繰り返したり治りにくくなったりします。その他、肝臓や骨にうみ膿が貯まることもあります 。感染を繰り返すため成長が妨げられ、低身長になる場合もあります。  

発熱や症状のない時はもちろん通園・通学できます。体育の授業や遠足、修学旅行も参加できます。給食も制限ありません。  

以前は、CGDの病名には「致死的」という言葉が付いたほど恐ろしい病気でしたが、今では早期発見と治療方法の進歩によって患者さんの平均年齢が15歳を超えました。社会人として活躍している方や結婚して幸せな家庭生活を築かれている患者さんもいます。しかし、依然として不幸な転帰をとる場合もあるので決して油断できません。

CGDの患者さんの状態によって治療法は異なります。主治医の先生から処方された薬をしっかり飲むことが大切です。

  1. ST合剤(バクタ)CGDの感染予防に最も効果のある抗生物質です。毎日飲み続けることが大切です。 調子がよくても必ず忘れずに内服しましょう。
  2. 抗真菌剤(イトリゾールやファンギゾン)真菌(アスペルギルスやカンジダ)の感染を予防する薬です。
  3. インターフェロン・ガンマ(イムノマックス)週に1〜3回、皮膚に注射する感染予防の薬です。  

本文参照(p24)  

本文参照(p24)  

BCGの予防接種は禁忌ですが、それ以外の予防注射はすべて受けてかまいません。はしか(麻疹)、水ぼうそう(水痘)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)などのウイルス感染は重症化しませんが予防しておく方がよいでしょう。  

  1. 外出から帰宅した時の手洗い、うがいが最も重要です。手洗いは普通の石けんでかまいませんが、石けんの受け皿が湿っていると細菌が繁殖するのでよく洗った後に乾燥させて下さい。液状石けんをボトルに継ぎ足す時も、ボトルの中を洗わないと細菌が繁殖していることがあります。湿ったタオルは病原体が繁殖しやすいので清潔な乾いたタオルを使用してください。
  2. 体調がよければ毎日入浴し、肛門周囲や陰部の清潔を保ちましょう。  

CGDにおいて真菌(カビ)対策は非常に重要です。真菌のひとつであるアスペルギルス肺炎に感染すると 進行が早く、有効な薬が少ないため死亡する場合もあります。カビは日常生活のいたるところに存在するため予防が何より大切です。以下に注意点を挙げました。   

  1. 道路工事や建設現場はアスペルギルスなどのカビの危険性が高いので近づかないで下さい。土の中にもアスペルギルスが多数存在するので園芸などの穴掘りも避けて下さい。   
  2. 室内をきれいにすることは大事ですが、ほうきによる掃除はほこりをまき散らすので避けて下さい。掃除機を使用する場合も排気口からアスペルギルスが拡散されることがあるので、患者さんの部屋の扉を閉めるか、30分程度時間がたってから部屋に入るようにしましょう。
  3. 汚染したカーペットによってアスペルギルスの感染がおこることもあるので、カーペットの部屋はできるだけ避けましょう。
  4. 室内に観葉植物を持ちこまないようにしましょう。  
  1. 生卵や生肉(ユッケ)は厳禁です。火の通った食物と生の食物を調理する時は、別々のまな板を使用して下さい。ハンバーガーなどでは内部の温度が低いと菌が残っていることがあります。75℃以上で最低1分間加熱を心がけて下さい。
  2. カビの生えたチーズ(ゴルゴンゾーラ、ブルーチーズ)は避けて下さい。
  3. 生野菜はなるべく少量ずつ(部分売り)購入して、野菜室に長く保管しないで下さい。保管する場合は十分洗って土の混入がないように気を付けて下さい。
  4. 納豆、ヨーグルト、アイスクリームは特に問題ありません。
  5. 賞味期限を必ずチェックして下さい。

主治医の先生の診察を定期的に受けることが重要です。受診間隔は人によって異なります。毎週から数か月に1回の受診の人まで様々です。しかし、下記の症状が出た場合は早く病院を受診してください。

  1. 発熱。
  2. 咳が続く。
  3. 皮膚が化膿する。
  4. 首のリンパ節が腫れる。
  5. 腹痛や下痢・嘔吐が続く。
  6. 肛門周囲の腫れ(特に乳幼児の場合)。  

2.CGD患者さんへの諸注意(米国NIH)

CGD患者さん達は特に、普段は気づかないような真菌や細菌に感染する危険性があります。以下に書かれてあることに注意して、なるべく真菌や細菌感染にかからないようにしましょう。

  1. 敷きわら、枯葉、木片、稲などを束ねたものや、庭仕事で出た廃物などの周りで遊んだり、仕事をしたりしていけません。
  2. 裸足で外に出てはいけません。
  3. 木片を下に敷いてある遊び場で遊んではいけません。普通の未舗装の道路や砂利の敷いてあるところを選んで遊んで下さい。
  4. 牛や馬の納屋、洞窟や鍾乳洞や湿っぽい所は避けること。
  5. 庭いじりをするときには、外科用のマスクをして,舞い上がるカビを含む汚染物を除去して下さい
  6. 家庭菜園の植え替えなどはしない。しばしばカビが土壌にいます。
  7. 生け花をするときには、ブリーチ(次亜塩素酸)を花瓶に加えて、カビや藻類の生えるのを防いで下さい。CGD患者でない人に毎日水を換えてもらって下さい。
  8. 補修建造物や新しく改造された家・建物には、完全に掃除が終わるまでは入らないで下さい。
  9. 新築の建物も避けて下さい。木材や汚い素材からほこりが発生しています。
  10. カーペットやタイルを自分で剥ぎとったり、換えたりしないで下さい。換えてもらった後は、部屋をブリーチなどできれいにしてから入って下さい。この操作が終わるまで、その建物で寝ないように。
  11. ペットを飼うのはかまいません。しかし、かんなくずを寝床として使用しないで下さい(大動物、小動物 に関わらず)。ペットの水受けや寝床はいつも清潔にして下さい。
  12. 加湿器をお使いの場合は、毎日水をからにして、カビを防ぐためにブリーチで洗って下さい。
  13. 切り傷やすり傷は石けんと水で洗い、殺菌剤で洗った後に、オキシドールで消毒して下さい。周囲が赤くなったり、痛みをおぼえたり、化膿したり、熱が出たら、出来るだけ早く医者に診せて下さい。
  14. 発熱、特に咳を伴った場合はいつもすぐに、かかりつけの医者に連絡してください。
  15. 生木のクリスマスツリーを使わないようにしましょう。 乾燥させた杉と木下に置いてある水たまりにカビが生える可能性があります。
  16. サルモネラ菌を持っているペットもいます。ペットショップでは子ガメを売っているますが、これが最もサルモネラ菌を持っているとして知られています。イグアナについては知りませんが、食事の時には離れたところに飼っておくべきでしょう。

確認事項:イグアナもサルモネラ菌を持っているのだそうです
注意事項:あまり心配しすぎもよくありませんよ。  
Tracy Atteberry Tracy@MagicByDesign.com   日本語訳 布井博幸(宮崎大学小児科)


3. 患者さんの日常生活アンケート結果

*自宅のトイレの形式は?
 水洗洋式     3 ( 4.5%)
 水洗和式    54 (80.6%)
 浄化槽      6 ( 9.0%)
 くみ取り     4 ( 6.0%)

*手洗いはどうされていますか?
 水洗い     12 (17.6%)
 石けん使用   21 (30.9%)
 薬用石けん   35 (51.5%)

*家を掃除するときの注意点は?
 こまめに掃除する(毎日)
 換気をする
 カーペットからフローリングに変えた
 モップがけの時オスバン希釈して使用
 結露をまめに拭き取る

*加湿器は使用していますか?
 使用する   12 (16.9%)
 使用しない  59 (83.1%)

*空気清浄機は使用していますか?
 使用する    24 (33.8%)
 使用しない   47 (66.2%)

*海水浴はしますか?
 普通に水に入る    17
 病状をみて判断する   1
 入らない       28

*学校生活は制限がありますか?
 特に制限されていない    約8割
 体育一部制限(持久走など)
 体育は見学         約2割
 裸足は制限されている場合が多い

*職業に就かれていますか?
 教員 看護師 調理師 美容師
 医薬品営業職 クリーニング店員
 自動車整備工 不動産営業職
 土木建築業  冠婚葬祭花店員 など

下の2つは悪化された方がおられます 。
  ゴミ収集員 木材工場

*ペットは飼っていますか?
 犬      9
 ハムスター  2
 カメ     2
 インコ    1
 熱帯魚    1
 リス     1

*クラブ活動はしていますか?
 野球        6
 バスケットボール  2
 テニス       2
 サッカー      1
 バレーボール    1
 剣道        1
 卓球        1
 将棋など文化系   4
 残りは無回答でした

*プールでの水泳はしますか?
 普通に入っている    18
 病状をみて判断する    1
 傷のあるときは入らない  4
 授業で入るのみ      1
 入らない        25

*悪化原因と予想されたもの
 家の新築         4
 家の火災         1
 木材工場就職       1
 畳の掃除(畳裏カビ多量) 1
 ゴミ収集車アルバイト   1

*ST合剤の内服
 投与中     62(93.9%)
 投与中止     3 ( 4.5%)
 未投与        1 ( 1.5%)

*IFN-γの使用
 投与中     26(40.0%)
 投与中止    19(29.2%)
 未投与     20(30.7%)

 


4.患者さんの日常生活チェック項目(日本版)

真菌感染症の原因になりやすい、身のまわりのものや場所を一度チェックしましょう。(日常 生活でポイン トをもって、してよいことと、してはいけないことをはっきり区別 する習慣をつけ ましょう)

  1. 敷きわら
  2. 枯れ葉の多い道
  3. 木片
  4. 庭仕事で出た廃物
  1. 木片を下に敷いてある遊び場
  2. 牛や馬の納屋、豚小屋や鶏小屋
  3. 洞窟や鍾乳洞や湿っぽいところ
  1. カーペットの裏面
  2. 張り替え中のタイルの裏面
  3. 風呂場
  4. 冷蔵庫の野菜庫
  5. 新築の家や改築・増築後の家では、充分掃除してから入りましょう。
  1. 切り傷やすり傷は石けんと水で洗い、オキシドールで消毒する。
  2. 加湿器を使用する時には、予めブリーチ(次亜塩素酸)で消毒しましょう。
  3. エアコンはこまめに掃除していますか?(車のエアコンも)
  4. 食事は出来るだけ新鮮なものをよく洗って食べましょう。
  5. 裸足で外に出てはいけません。
  6. 庭いじりをするときには、外科用のマスクをしましょう。
  7. 生け花にもブリーチを添加して、菌が繁殖しないように
  8. なるべく人ごみの中は避けましょう。(運動会など)
  9. 温泉でも薬浴風呂は菌が繁殖しやすいので避けましょう。
  10. 公共のプールなどは、場所によって消毒状態などが違うので、注意して入りましょう。
  11. トイレは洗浄器つき便座の方がよいでしょう。