肺のCT; ウエステルマン肺吸虫による炎症像が見られる(矢頭)。 |
肺吸虫の感染源はサワガニ、モクズガニなどの淡水産のカニ、そしてイノシシの肉である。サワガニ、猪肉からは宮崎肺吸虫が、モクズガニ、猪肉からはウエステルマン肺吸虫が感染する。サワガニは都会の料亭などで供されることが多いため、宮崎肺吸虫症患者は都市部で散発的に見つかるが、モクズガニや猪肉はローカルで食されるため、ウエステルマン肺吸虫症は風土病的色彩が強く、南九州で多発している。
肺吸虫はその名の通り肺に寄生し、様々な呼吸器症状を呈する。X線上も浸潤影、結節影、胸水貯留など多彩な病変を示し、患者の多くは中高年の男性であるため、しばしば肺癌、あるいは肺結核が疑われ、検査入院となる。胸部異常陰影が認められた場合、悪性腫瘍を第一に考える事は間違いではないが、胸水中、気管支洗浄液中に好酸球を認める時や呼吸器症状に好酸球増多やIgE上昇を伴う時には積極的に本症を疑う必要がある。かつては濃厚感染が多かったため肺吸虫の虫卵は容易に喀痰および糞便から検出されたが、最近は少数感染例が多く、虫卵検出率は50%以下であり、免疫診断が非常に有効である。