顎口虫症

ドロレス顎口虫による皮膚爬行症(矢印)
 戦後の食料難の時期にライギョを刺身で食べて、皮膚にミミズ腫れができたり移動性の腫瘤ができたのは有棘顎口虫によるものであった。その後、生活事情の好転と共にこの寄生虫症は忘れかけられていたが、1980年頃から輸入ドジョウを踊り食いして剛棘顎口虫に感染したり、近所の川で捕ったドジョウを踊り食いして日本顎口虫に感染したり、渓流魚を背ごしで食べてドロレス顎口虫に感染する例がでてきている。

 皮膚生検で虫体が見つかれば同定可能であるが、見つからない場合には好酸球性の炎症像と問診での食歴から推測する。本症は基本的に皮膚の移動性病変として理解されているが、幼虫移行症の常として思いがけない部位に出現することがある。教室ではこれまでに、肺に迷入して肺吸虫症が疑われた例、大腸の外壁に肉芽腫を形成してイレウスを起こした症例を経験している。



顎口虫の生活環


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