肝蛭症

肝蛭症患者の造影CT;
肝臓内に境界不明瞭な結節性病変を認める(矢印)。回虫の移行症に比べて、病変が大きい。
 肝蛭は牛や羊などの胆管に寄生する大型の吸虫であるが、ヒトにも寄生する重要な人獣共通寄生虫である。日本ではこれまでに各地から散発的に約50例が報告されている。最近中国地方や南九州の小規模畜産農家や、牛糞を肥料として利用している家庭から相次いで患者が発生している。特に中南部九州では数年間で10例にも上っており、注意が必要である。

 感染経路として感染幼虫(メタセルカリア)が付着したセリやクレソンなどの摂取や、汚染された稲藁からメタセルカリアが手指について口に入ることが考えられている。また、感染ウシの肝臓のレバ刺を食して感染する可能性もある。

 主訴は上腹部痛あるいは上腹部不快感で、軽度〜中等度の肝機能障害が見られる。画像上胆管細胞癌を疑われることがある。ほとんどの症例で高度の好酸球増多が見られることで容易に本症を疑うことができる。ヒトの体内で成虫にまで発育することもあるが、成虫1匹あたりの産卵数が少ないために検便や十二指腸液検査で虫卵が検出されることは稀であり、免疫診断が有効である。

肝蛭の生活環


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