研究紹介
 
 丸山 治彦 (HARUHIKO MARUYAMA)
 
    
 
     寄生虫になりきって世界を理解する
 
    当面の目標
 
     経皮侵入の際の出来事を寄生虫と宿主の両面から探る
 

 
   研究材料
 
ヴェネズエラ糞線虫 Strongyloides venezuelensis
ねずみ類に寄生する腸管線虫で、野生のラットも自然感染している。外界へ排出された虫卵から感染幼虫が発育してねずみに経皮感染し、幼虫は結合組織から肺を経て腸管に下り、そこで成熟して産卵する。
 
  ■ これまでの成果
1.粘膜肥満細胞によるヴェネズエラ糞線虫の排除機構の解明

ヴェネズエラ糞線虫は、ある一定期間の後、自然に宿主から排除されてしまう。この寄生虫は小腸上皮への侵入と脱出を繰り返しているのであるが、粘膜肥満細胞のグリコサミノグリカンが、接着物質を介した虫体と上皮細胞の結合を阻害し、引き続いて起こる粘膜への侵入を阻止するためである。
2.ヴェネズエラ糞線虫の組織特異性の解明

寄生虫学を学んだ者が最初にぶつかる疑問の一つは、「何故、その場所(組織)に寄生するのか?」ということであろう。ヴェネズエラ糞線虫は小腸ならどこにでも定着できるが大腸に住むことはできない。それは大腸粘膜杯細胞の硫酸化粘液のせいである。
3.古書蒐集

ルネッサンス期のイタリア人科学者フランチェスコ・レディ(Francesco Redi, 1626-1697)の代表作、『昆虫の発生について』(Esperienze intorno alla generazione degl' Insetti, 1668)と『生きている動物の体内に見られる動物について』(Osservazioni intorno agli animali viventi che si trovano negli animali viventi, 1684 )などを所蔵。後者には100種類を超える寄生虫が記載されている。


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