この度、当院では2021年7月1日より新たに高次脳機能障害外来を開設しました。この高次脳機能障害外来は、患者さんとご家族の生活と社会参加の維持向上を図るために、障害の診断や詳細な評価を行い、その後の適切な医療・障害福祉サービスにつなげることが目的です。対象は高次脳機能障害が疑われる患者さんや高次脳機能障害と診断された患者さんです。診断・評価ついては、現在の生活状況や病気・ケガの情報とともに、脳画像や神経心理学的検査結果をもとに総合的に判断します。完全予約制とし、毎月第1火曜日(祝日の場合は第2火曜日)が初診日です。実際の手続きについては本院ホームページでご確認ください。
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◯高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、ケガや病気で脳に損傷を負ったために記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害などの認知障害が生じ、日常生活および社会生活に困難がある状態です。ただし、ケガや病気の発症以前からある症状や、先天性疾患・周産期における脳損傷・発達障害・進行性疾患が原因の症状、または急性期症状としてみられるものは除きます。ここでいう高次脳機能障害とは行政的用語として定義されたものです。一方、学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、失語・失行・失認なども含まれます。
一般的に、高次脳機能障害は目に見えにくい障害と言われています。脳のケガや病気により入院での安静や手足のまひが生じた後、その回復とともに身近な日常生活はある程度自立し退院したとしても、家事や仕事、学校生活に復帰する段階になってから記憶障害や注意障害などのために困難なことや、それが原因で人間関係のトラブルが生じ、障害が顕在化することが多くあります。見た目では分かりにくいため、入院中は認識されず、退院後に問題が生じても原因が分からず、本人や家族は何年も悩み続けることがあります。まずは診断や評価を受けて本人や家族、周囲の人に理解してもらうことが大切です。また、就労支援や経済的支援など、適切なサービスを受けながら社会復帰を進めることが大切です。行政的定義としての高次脳機能障害は、このような支援の対象になります。
◯高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業
診断基準により高次脳機能障害を有すると診断されたかたへの支援を普及させるため、全国高次脳機能障害支援普及拠点センターである国立障害者リハビリテーションセンターとともに、各都道府県が指定する高次脳機能障害者の支援拠点機関(リハビリテーションセンター、大学病院、県立病院等)が定められています。宮崎県では、宮崎県身体障害者相談センターと宮崎大学医学部附属病院が支援拠点機関として指定されており、高次脳機能障害者に対する専門的な相談支援、関係機関との支援ネットワークの充実、高次脳機能障害の正しい理解を促進するための普及・啓発事業、高次脳機能障害者の支援手法等に関する研修等を行い、高次脳機能障害者に対する支援体制の確立を図っています。当院は、宮崎県身体障害者相談センターと協働で高次脳機能障害支援に当たっていますので、高次脳機能障害やその疑いがある方、ご家族、支援者のかたは、宮崎県身体障害者相談センターの相談支援を合わせてご利用ください。