2021年(令和3年)4月6日、宮崎大学医学部附属病院では、早産児や合併症を持つ新生児への高度医療体制を拡充することを目的に、総合周産期母子医療センターを改修し、内覧会を開催しました。
そして4月8日に全ての入院患者さんの移動が完了し、リニューアルスタートしました。
〇周産期センターの歴史
1994年(平成6年)、本県の周産期死亡率、乳児死亡率、新生児死亡率の全てが全国でも最も高い状況でした。1998年(平成10 年)4月に、前身である周産期センターが、NICU(新生児集中治療管理室) 3床、GCU (新生児回復室)6床で稼働開始しました。以後、1999年(平成11年)にNICU 6床、GCU 10床となり、2008年(平成20年)4月にNICU 9床、GCU 12床に加えて、MFICU 3床が加わり、総合周産期母子医療センターとなりました。これまで当センターを中心とした地域分散型の周産期医療体制を構築して改善に努めてきた結果、近年の周産期死亡率は全国でも低い状況を維持するようになりました。
〇改修工事について
改修工事は、工事費約2億円と設備費約2億3500万円をかけ、2020年(令和2年)9月から約半年間にわたって行われ、2021年(令和3年)3月に新たな医療機器等が設置されました。
1998年(平成10年)に周産母子センター稼働開始後20年以上経過し、医療用コンセント・医療用配管(圧縮 空気、酸素、吸引)用のシーリングペンダント(天井吊り下げ)は老朽化していました。また当センター内のNICU・GCU室は施設基準に則った床面積ですが、増床されて狭隘となり、保育器の間隔が狭いため高度な医療ケア-一酸化窒素吸入療法や低体温療法など-の医療機器設置スペースに支障をきたすようになりました。さらに2006年(平成18年)から電子カルテシステム、2010年(平成22年)に部門システムが導入されたことから、医療情報機器の設置場所の不便さ、狭さが一層出てきました。また一方で、南海トラフ地震などの災害発生時には周辺医療施設からの搬送患者の受け入れも必要です。以上の点から、当センターのNICU・GCU室の床面積の拡張と、災害時に対応可能な施設環境の整備は急務となっていました。
〇今後の展望
今回、開設以来の大掛かりな改修で、新生児1床あたりのスペースはNICUが9.3㎡から12.7㎡へ、GCUが6.7㎡から9.2㎡と広くなり、複数台の医療機器を使用する重症な新生児へのスムーズな対応が可能となりました。また、室内の全ての医療機器、医療情報機器をシーリングペンダント式にして、電気コードなどが一切床に設定されていない状況にすることで、細菌の温床となる埃がたまりにくくなり、感染症対策がさらに強化されているほか、電子カルテなどを見るモニター類も各種機器の前方に設置することで、児の状態を観察しながらカルテ情報の記録ができるようになりました。
さらに、分娩室、MFICUの胎児心拍数モニタリングシステムは、必用に応じて本学附属病院以外の施設の胎児モニターも共有することができ、宮崎県内の安全な分娩体制を強化しています。
総合周産期母子医療センターは、宮崎県の母児の命を守る『最後の砦』として、世界トップレベルの周産期医療を展開し、地域社会から信頼される大学病院としての医療をさらに実践していきます。県で唯一の特定機能病院としての機能を強化し、加えて、医学生、看護学生、研修医、専攻医、看護師、助産師など幅広い医療人養成を推進してまいります。