臨床研究に関するお知らせ

2017.12.27
宮崎大学医学部内科学講座循環体液制御学分野では、下記の臨床研究を実施しています。皆様には本研究の趣旨をご理解頂き、ご協力を承りますようお願い申し上げます。   研究課題名:症候性小腸狭窄を有するクローン病患者に対する薬物療法と内視鏡的バルーン拡張術の治療成績について:多施設共同研究  

1.研究の概要

クローン病は原因不明であり、主として若年に発症する難治性腸管障害です。また、全消化管に潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変を来しえます。症状としては多くが腹痛や下痢、体重減少を呈しますが、根本治療は存在しないため、寛解維持を目的に栄養療法や薬物療法が行われます。薬物療法のなかでも近年使用可能となった免疫調節剤や抗TNF-α抗体製剤は高い有効性が示されており、重症例を中心に用いられています。 クローン病の腸管障害の蓄積にともない、腸管狭窄や瘻孔といった腸管合併症を来すことにより外科的治療としての腸管切除が必要となります。実際、腸管切除理由の最も頻度が高いものが狭窄ですが、腸管切除が頻回となると短腸症候群をきたすため、なるべく腸管切除を回避する必要があります。「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班)による平成27年度クローン病の治療指針による腸管狭窄に対する治療は「内科的治療で炎症を鎮静化し、潰瘍が消失・縮小した時点で、内視鏡的バルーン拡張術を試みても良い。改善がみられたら定期的に狭窄の程度をチェックして、本法を繰り返す。穿孔や出血などの偶発症には十分注意し、無効な場合は外科手術を考慮する。」と記載されています。 既報ではクローン病小腸狭窄に対する免疫調節剤や抗TNF-α抗体製剤の効果は一定しません。また、海外の報告では小腸病変の評価にMR enterographyを用いたものが多く、バルーン小腸内視鏡による観察がなされたものは少ないです。よって、本研究ではクローン病の小腸狭窄におけるバルーン小腸内視鏡を用いた粘膜面の評価や内視鏡的バルーン拡張術の効果また、小腸狭窄に対する免疫調節剤や抗TNF-α抗体製剤の有効性などが明らかになる可能性があります。 しかしながらクローン病の治療選択には時代的な背景があることから、検討時には統一した背景を有する母集団の検討とすることが望ましいと考えます。今回、検討対象となる免疫調節剤は2006年、抗TNF-α抗体製剤はepisodic投与が2002年、維持治療に使用可能となったのは2008年、ダブルバルーン小腸内視鏡が2003年、シングルバルーン小腸内視鏡が2007年にそれぞれ保険適用となっています。おおよそ2008年には上記の治療選択肢が選択可能となっているため、2008年以降に症候性狭窄が明らかとなったクローン病患者を対象に今回の検討を行うことしました。   本学における研究実施体制 本研究は、本学においては、以下の研究体制で実施します。   【本学実施責任者・主任研究者】 芦塚 伸也   宮崎大学医学部内科学講座循環体液制御学分野・助教   【プロジェクト全体の統括責任者、本学以外の参加施設と施設責任者】   1) 研究代表者・責任者 馬場 重樹  滋賀医科大学 消化器内科       講師                077-548-2217   2) 共同研究機関及び共同期間の研究責任者 共同研究機関 別紙参照   共同研究機関分担者 酒見 亮介    戸畑共立病院    内科                内科医長          093-871-5421 小林 拓       北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター   副センター長    03-3444-6161 新崎信一郎    大阪大学          消化器内科学    学内講師          06-6879-3621 鎌田 紀子    大阪市立大学    総合内科          講師                06-6645-3797 馬場 重樹    滋賀医科大学    消化器内科       講師                077-548-2217 田中 浩紀    札幌厚生病院    IBDセンター     主任医長          011-261-5331 藤井 俊光    東京医科歯科大学消化器内科      助教                03-5803-5877 吉野 琢哉    北野病院          消化器センター 副部長             06-6312-1221 吉田 篤史    大船中央病院    光学診療部       部長                0467-45-2111   3) 試験事務局 馬場 重樹    滋賀医科大学    消化器内科       講師                077-548-2217   4) 個人情報管理者 馬場 重樹    滋賀医科大学    消化器内科       講師                077-548-2217  

2.目的

本研究は2008年1月1日から2017年3月31日までに宮崎大学附属病院消化器内科(旧第一内科)において受診歴のある「クローン病」患者さんを対象とします。その中でも2008年以降に症候性狭窄(イレウス・腸閉塞症状)が明らかとなったクローン病症例全例を抽出して検討を行います。症候性狭窄に対する治療状況を診療情報から後方視的にデータ集積を行います。具体的には免疫調節剤や抗TNF-α抗体製剤といった薬物療法の使用状況や経過中に施行したバルーン小腸内視鏡所見や内視鏡的バルーン拡張術の施行状況について調査します。集積されたデータをもとに症候性狭窄に対する薬物療法や内視鏡的バルーン拡張術が腸管切除に与える影響について後方視的に解析を行います。一施設では限られた症例数となるため、全国より参加施設を募り研究を遂行します。本研究により症候性狭窄を来したクローン病患者の予後予測が可能となり、適切な治療選択が可能になることが期待されます。なお、この研究はクローン病の治療に関連する新しい知識を得ることを目的とする学術研究活動として実施されます。  

3. 研究実施予定期間

この研究は、倫理委員会承認後から2019年3月まで行われます。 この研究は、匿名化加工によって対象者の個人情報保護は十分配慮されています。  

4.対象者

2008年1月から2017年3月に本院消化器内科(旧第一内科)にて診療を受け、クローン病と診断された患者さんのなかで、2008年1月1日から2017年3月31日までに初めて狭窄症状を発症した方。消化管狭窄の確認がバルーン小腸内視鏡検査、X線透視、CT、カプセル内視鏡検査などで確認されている方。   ※下記の方は除外されます。 ①   症候性狭窄を発症する以前に腸管切除が実施されている症例 ②   術後の癒着性イレウスと診断された症例 ③   瘻孔を有する症例 ④   研究協力拒否の申し出があった患者 ⑤   その他、医師が不適と判断した場合  

5.方法

5.1   研究の種類・デザイン
多施設、非介入研究、後方視的研究  
5.2   研究のアウトライン
① 各施設において内視鏡データベースやカルテ記載、または病名による病歴情報検索から該当症例の臨床データを抽出する。 ② 臨床情報は個人情報が特定できない形で厳重に管理する。 ③ 所定様式の症例登録票(Excel形式)に氏名、IDなどの個人情報を含めない形で症例データを入力する。 ④ 研究責任者へメール添付の形で症例ファイルを提出し、データを集積する。なお、メール添付の際にはファイルは暗号化し、パスワードはファイル添付とは別送する。 ⑤ 集積したデータベースをもとに統計責任者が解析を実施する。  
5.3  研究対象者の研究参加予定期間
2008年1月1日~2017年3月31日  
5.4  研究の実施方法
① 各施設において、病歴データベースよりイレウスに関するICD-10コード(K565, K566, K567)とクローン病に関するICD-10コード(K500, K501, K508, K509)を検索し、重複する症例を抽出する。なお、イレウスに関するICD10コード(K565, K566, K567)の発生時期は2008年1月1日以降とする。もしくはクローン病症例のなかで内視鏡あるいはCTなどの画像検査によって消化管狭窄が明らかであり、かつ狭窄症状を訴えている患者。 ② 抽出した症例のカルテ情報より観察・検査項目に関するデータを収集、症例登録票(Excel形式)へ記載する。 ③ 研究責任者へメール添付の形で症例ファイルを提出し、データを集積する。なお、メール添付の際にはファイルは暗号化し、パスワードはファイル添付とは別送する。 ④ 集積したデータベースをもとに統計責任者が解析を実施する。  
5.5  観察・検査項目
① 臨床背景因子・臨床検査所見 検査日時、性別、クローン病発症時年齢、イレウス発症時年齢、罹病範囲(小腸型: L1, 大腸型: L2, 小腸大腸型: L3)、病型(炎症型: B1、狭窄型: B2)、肛門病変の有無、喫煙の有無、狭窄発症時のL3領域の筋肉面積・腸腰筋面積(参加可能な施設、症例のみ)   ② 投与薬剤情報 クローン病発症から免疫調節剤と抗TNF-α抗体製剤投与開始までの期間、免疫調節剤と抗TNF-α抗体製剤投与開始時の罹病期間・重症度スコア、免疫調節剤と抗TNF-α抗体製剤の種類・投与量・投与方法・投与期間、その他の併用薬剤   ③ 狭窄病変の評価 狭窄の部位・長さ・個数・粘膜所見・拡張術の有無と所見(拡張径、拡張回数、責任病変を拡張できたかどうか、バルーン小腸内視鏡施行時もしくはバルーン拡張術時の合併症の有無)   ④ 臨床経過 手術症例では狭窄部位の腸管切除の有無と免疫調節剤と抗TNF-α抗体製剤投与開始時からの期間、手術理由、内視鏡拡張術の施行日・施行回数、狭窄症状による入院回数  
5.6 本学における試料・情報の管理責任者
宮崎大学医学部内科学講座 循環体液制御学分野 助教 芦塚伸也  
5.7 提供先の責任者の氏名と職位
5.5の情報を、滋賀医科大学消化器内科 講師 馬場重樹医師(共同研究機関責任者)まで提供いたします。  

6.費用負担

この研究を行うにあたり、対象となる方が新たに費用を負担することは一切ありません。  

7.利益および不利益

この研究にご参加いただいた場合の利益・不利益はありません。参加を拒否された場合でも同様です。  

8.個人情報の保護

研究にあたっては、対象となる方の個人情報を容易に同定できないように、数字や記号などに置き換え、「匿名化された試料・情報(どの研究対象者の試料・情報であるかが直ちに判別できないよう、加工又は管理されたものに限る)」として使用いたします。  

9.研究に関する情報開示について

ご希望があれば、研究計画および研究方法についての資料を閲覧することができます。ご希望がある場合は、下記連絡先へ遠慮無く申し出てください。ただし、研究の独創性確保に支障のない範囲内で情報開示を行います。  

10.研究資金および利益相反について

この研究に関する経費は、実施責任者が所属する診療科の研究費で賄われます。なお、本研究の実施責任者と分担研究者は本研究に関わる企業および団体等からの経済的な利益の提供は受けていないため、利益相反注1)はありません。  

11.研究成果の公表

この研究で得られた研究成果を学会や医学雑誌等において発表します。この場合でも個人を特定できる情報は一切利用しません。  

12.参加拒否したい場合の連絡先

この研究に参加したくない(自分のデータを使ってほしくない)方は下記連絡先へ遠慮無く申し出てください。しかしながら、データ解析後、もしくは学会等で発表後は途中辞退することができない場合もあります。  

13.疑問、質問あるいは苦情があった場合の連絡先

この研究に関して疑問、質問あるいは苦情があった場合は下記連絡先へ連絡をお願い致します。     宮崎大学医学部内科学講座循環体液制御分野 職名 助教、氏名 芦塚 伸也 電話:0985-85-9227 FAX:0985-84-3580