当科の柳重久助教と中里雅光教授、久留米大学の佐藤貴弘先生と国立循環器病研究センター研究所の寒川賢治先生による論文「The Homeostatic Force of Ghrelin」(Review) が、Cell Metabolism誌にアクセプトされました。
グレリン(ghrelin)は1999年に研究者らのグループにより胃から発見された摂食亢進ホルモンです(Nature 1999, 2001)。著者らは本論文において、グレリンが以下の四つの機能から生体のエネルギー恒常性を制御することを示しています。
1. 効率的なエネルギー代謝とエネルギー貯蔵を確実にするために、末梢組織の栄養状態を感知し、その情報を視床下部へ伝達する。
2. 視床下部の弓状核–視床下部腹内側核–室傍核(ARC–VMH–PVN)回路を作動し、恒常性摂食を亢進させるとともに、腹側被蓋野–側坐核(VTA–NAc)回路と海馬–視床下部外側野–腹側被蓋野(vHP–LHA–VTA)回路を操作することで快楽的摂食を増強させる。
3. 肝臓でのオートファジーと後脳/AgRPニューロンを制御することで、飢餓状態における低血糖から生体を防御する。
4. オートファジーを促進し、炎症と線維化を軽減し、組織幹細胞機能を増強し、オルガネラ機能を改善させることで、メタボリックストレスとメタフラメーションから代謝臓器を保護する。
将来的に、グレリンが持つ生体恒常性維持力についてのさらなる研究は、肥満や糖尿病をはじめとする多くの代謝性疾患の新規治療法の創出に大きく貢献すると考えられます。
本研究成果は、2018年3月22日(米国時間)にCell Metabolismのオンライン版http://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(18)30119-0で公開されました。