宮崎大学 医学部 内科学講座 神経呼吸内分泌代謝学分野(第3内科)

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スマートフォンアプリ「ふるえAI」の開発

スマートフォンアプリ「ふるえAI」の開発

感染症の患者に治療する際に、臨床症状の改善以外に、白血球、CRPなど採血での値が治療経過を追うのに有用です。神経症状の経過を追うために神経診察を行いますが、採血のデータとは異なり、神経診察の所見は定性的です。
本態性振戦の患者が外来受診し、治療薬を開始し、次回外来で患者さんが「良くなりました」と言ったとしても、具体的な指標は数段階の定性的な評価しか存在しません。このような問題点を解決するために宮崎大学神経内科チームは、株式会社DENSAN(本社:宮崎県宮崎市)と共同でスマートフォンアプリ「ふるえAI」を開発しました。このアプリの使用により、簡単に上記の問題が解決できます。AIによる判定機能も装備しました。

● 定量化機能
実際の方法は、お手持ちのスマートフォンに「ふるえAI」をダウンロードしていただき、同時に指示された基準となる「渦巻き」を印刷します。それを患者さんに外側から赤ペンでなぞっていただき、スマートフォンで撮影します。そうすると、基準線と比較して長さの比率(%)と、基準線からのずれの面積(mm2)が計算され、提示されます。前者は本態性振戦の重症度のマーカーに有用で、後者は小脳失調のマーカーとして有用です。

一例を図に示しました。

長さは、それぞれ100.9、115.7、118.5%、ずれの面積は、558、1356、1551mm2です(正常、本態性振戦、小脳失調の順)。それぞれの四隅のマーカーは、画像解析のための基準位置を示しています。

既に当科の診療にて複数の患者に利用していますが、評判は上々です。治療の前後で、患者さんの状態が数字で改善していくことは、患者サイドと医療サイドの両者にとってかなり嬉しいことと実感しています。

● AI(人工知能)機能による判定推測
患者さんが描画したものをデジタル化した時点で、AIへの応用は可能です。正常、本態性振戦、小脳失調の3群のみの分類になりますが、取り込んだ教師画像を元にCNN (convolutional neural network)を利用して、判定確率を推測する機能を装備しました。判定正解率は70-80%と高くはないので、参考程度にとどめる必要があります。ふるえが心配な一般の方が、医療機関を受診すべきかどうかの参考にもなります。

アプリケーションのダウンロード先(無料)

このプログラムの詳細については、下記の論文を参照ください。
Spiral drawing: Quantitative analysis and artificial-intelligence-based diagnosis using a smartphone. Journal of the Neurological Science.
(https://www.jns-journal.com/article/S0022-510X(20)30059-9/fulltext)