健康情報シリーズ

Hygeia 

                                    (Hygeiaとはギリシヤ神話の健康の女神)
 
 

スポーツ時のけがについて
  −対処と予防―

 
 第48号
 宮崎大学 安全衛生保健センター分室  2005.3

宮崎大学医学部 整形外科   帖佐悦男


         

【はじめに】
 近年、健康やスポーツに対する関心が高まり、アスリートやプロスポーツの増加のみでなくスポーツ愛好家も増加しています。それに伴い、低年齢からのスポーツの専門化や多様化により外傷や障害も増加しています。
 外傷とは、一回の大きな力(生理的範囲以上)が加わり、急に生じるけがのことです。外力が加わると打ち身(打撲)、捻挫・靱帯損傷、肉離れ(筋損傷)、腱断裂や脱臼・骨折などが生じます。一方、障害とは、繰り返しの過度の外力(Over use)により生ずる慢性の過労性障害の事です。

【受傷時の対応】
 一般には、動作時痛があればスポーツを中止する事で、悪化(二次的損傷)を防ぐこともでき、さらにけがからの早期回復につながります。特に、明らかな腫脹、圧痛、安静時痛や変形を認める場合、早急に整形外科を受診して下さい。現場での対処法として、英語でRICEという頭文字で表される応急処置が最も有効です。RICEとは、(Rest:安静)、(Icing:冷却)、(Compression:圧迫)、(Elevation:挙上)のことです。
   
<安静> 受傷局所の安静に加え、症状により包帯、布や副子(添え木)などで局所を固定する。
<冷却> 氷で受傷部位を冷やすことです。冷却することで、周囲の血管が収縮し、出血を少なくすることができます。内出血を減少させることが早期回復につながります。方法として、氷水の入ったバケツや氷を入れたビニール袋を用いて局所を冷却します。一回に冷やす時間は、15分から20分が目安で、症状に応じ24-48時間、間欠的に行います。長時間すると凍傷を引き起こす危険性がありますので、冷やしている際、冷たさでなく痛みを感じるようになったら中止しましょう。専用のアイスバック、特に捻挫用にサポータと一緒になっているのもあります。コールドスプレーには、本来のアイシングとしての役目はありません。

 
アイスバック    アイスバックを足関節捻挫に使用し包帯で圧迫固定している
      
<圧迫> 局所が腫脹する事で炎症が増大し、損傷した組織の修復が遅れることになります。
圧迫することで、腫脹を抑制する事が可能です。但し、過剰な圧迫は逆に局所の血流を妨げ循環障害を引き起こす可能性があります。
<挙上> 受傷部位を心臓より高くすることで、出血、腫脹を抑制します。
RICEを行う期間傷の程度により異なりますが、受傷後48時間が目安です。
   
RICEを行うべきでない場合]
・ 重症の開放創(傷)がある場合:土などを水道水で洗い流しガーゼなどで覆い、直ぐに受診しましょう。
・ 心臓病、レイノー症候群などの基礎疾患がある場合。
・ 骨折、脱臼の可能性がある場合:挙上などにより症状が悪化する可能性がある。
・ 頭部、顔面、頸部に損傷のある場合:圧迫により症状が悪化する可能性がある。

【予防】
・ 普段からの運動不足の解消
・ 準備体操(特に柔軟体操・ストレッチ)
・ 自分の年齢、レベル・適切な環境でのスポーツ:本来、外傷はアクシデントなので予防は不可能であるが、環境を整える事で、頻度を減らすことは可能である。
・ テーピング

【おわりに】
 スポーツは健康(身体的・精神的)維持、向上、生活習慣病の予防を含め自己研鑽と心を豊かにしますが、方法を誤るとスポーツができなくなるばかりでなく、日常生活に支障がおこる可能性があることを認識しましょう。
 
 


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