本事業を通じて新たなスチューデント・アシスタント制度の確立と研究マインドの涵養に取り組んでおり、その一端として、学生が取り組む研究テーマとその概要についてご紹介いたします。
● 静水圧が血管内皮細胞の運動性に及ぼす影響の解析
血管形態形成におけるバイオメカニクス的制御に着目し、血管新生プロセスでの静水圧の役割を研究しています。具体的には、ボイデンチャンバーを用いた実験により、静水圧の変化が血管内皮細胞の運動性や膜への浸潤性に与える影響を検証し、物理的環境因子と血管内皮細胞との関係性の解明を目指しています。
● 免疫組織化学標本のAI解析による腫瘍微小環境評価と予後予測
人工知能を用いて免疫組織化学画像を解析し、腫瘍微小環境における各種マーカーの発現を定量的に評価します。得られたデータを統合的に解析することで、腫瘍微小環境の分子動態を明らかにし、患者予後との関係性を検証しています。最終的には、これらの知見に基づき高精度な予後予測モデルの構築を目指します。
● 重症熱性血小板減少症候群に関する病理学的解析
重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)は主としてSFTSウイルスを保有するマダニ刺傷により感染する。致死率が10-30%と重篤な疾患です。本研究では、いまだ解明されていない、SFTSの病態を明らかにすることを目的として、SFTSの解剖症例を用いて病理学的に検討します。
● 青色LEDによる癌細胞死誘導機構の解析
ヒト胃癌、膵癌、卵巣癌の高転移性細胞株を用いて、青色LED照射による細胞死誘導の仕組みについて検討する。また、照射条件による細胞応答の変化を解析し、青色LEDの抗腫瘍効果に関与する分子機構や、効果の差異に関わる抵抗性因子の特徴について基礎的に明らかにすることを目的として取り組んでいます。
● がん促進タンパクLRP11が腫瘍増殖を促進する機序の解明
がん細胞に発現する腫瘍促進タンパクLRP11は、ユビキチン様タンパク修飾に関わる分子UBA7の発現を低下させる可能性が示唆されています。これに着目し、肺がん細胞株を用いた実験系で、ノックダウンや過剰発現実験を行い、増殖能の変化やタンパク修飾の動態を解析し、分子機構を検証していきます。
● マウス心筋におけるアクチン重合因子Fhod3の発現・局在解析
アクチン重合因子Fhod3は、心筋の収縮装置サルコメアを構成するアクチン線維の形成・維持を制御しており、その遺伝子変異は心筋症を引き起こしますが、そのメカニズムは未だよくわかっていません。各種遺伝子改変マウスにおけるFhod3の発現・局在解析を通じて、その機構解明に取り組んでいます。
● フェロトーシスに関与する鉄硫黄クラスターの電位調節機構
鉄依存性細胞死「フェロトーシス」に着目した研究を進めています。心筋ミトコンドリアにも多く存在する鉄硫黄クラスターは、その電位制御の破綻が鉄イオン脱落と脂質過酸化を誘発しフェロトーシスに繋がります。本研究では、Fe-Sクラスターの立体構造解析から酸化還元電位の調節機構を新たに発見しました。
● 高ホモシステイン血症原因蛋白質CBSの阻害剤様式の構造解析
血管保護因子である硫化水素産生の制御を目指し、シスタチオン-β-合成酵素(CBS)の立体構造解析を進めています。活性ドメインの発現精製に成功し、SPring-8にてCBS阻害剤共結晶の回折データを収集しました。現在、阻害剤電子密度の可視化に向け、結晶化条件の最適化と構造決定を進行中です。
● 高感度ルミノール反応によるMPO検出と新規発光機構の解明
心血管イベント予測因子ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の高感度検出系構築に向けた研究を進めています。法科学用試薬と実験室処方の比較検証を実施し、酵素的発光の最適条件を検討しました。さらに、未知酵素による新規発光現象を発見し、現在、この発光機構の解明を進めています。
● オルガネラから血管新生のメカニズムを解明する
血管が伸びる「血管新生」において、細胞が前後を決める細胞極性とオルガネラ動態の関連を研究しています。細胞内のリソソームやミトコンドリアに注目し、デバイス上で再現した血管内でこれらのオルガネラを解析することで、血管が伸びる時の極性変化や細胞内のエネルギー代謝について明らかにしたいと考えています。
● 新生血管形成におけるペリサイト由来のコラーゲン4の役割
新生血管形成にはコラーゲン4を含む基底膜の役割が重要です。毛細血管を取り巻くペリサイトも新生血管の伸長や管腔形成に重要な役割を担うことが考えられますが、その詳細は明らかになっていません。ペリサイト特異的なコラーゲン4のノックアウトマウスの網膜の血管形成を調べることで、その生理的病理的意義を明らかにしたいと考えています。
● 血管新生におけるVEカドヘリン局在動態の同定とその意義の解明
血管新生の内腔形成期における物理的刺激に応答した血管内皮細胞のVEカドヘリン動態と意義の解明を目指しています。具体的には、力学的負荷を受ける細胞間接着部位におけるVEカドヘリンの局在変化をリアルタイムで追跡するGFP融合タンパク質を発現ウイルスベクター作成し、その動態と血管伸長および内腔形成との関連性を明らかにする研究に取り組んでいます。
● 血管新生メカニズムとオルガネラの細胞内局在変化の関係
血管新生では、最初に血管内皮細胞の移動により新生血管が伸長し、次に新生血管内に血流を通す管腔が形成されます。私たちは、この血管伸長と管腔形成とを切り替える細胞極性の変化の裏に、オルガネラの細胞内局在の変化があると考えています。本研究では、まずミトコンドリアに注目し、その融合や分裂の様子を観察したいと考えています。
● コラーゲンⅣ血管基底膜の血管新生における役割
先行研究において、血管周囲のコラーゲンⅣ血管基底膜が減少することで周囲が軟化し、血管内腔が拡張することで血管の伸長が抑制されていることが試験管内での研究で判明しています。生体内での血管新生への役割を、コラーゲンⅣをノックアウトしたマウスの網膜を用いて研究しています。
● マウス肝再生過程におけるDNA四重鎖構造の発現動態解析
DNAは四重鎖構造など多様な高次構造を形成しますが、再生過程での役割は分かっていません。本研究ではマウス70%肝切除モデルを用いて、免疫組織化学によりG4構造の発現動態を解析し、DNA複製期以降の細胞周期で重要な役割を持つ可能性について検討しています。